ガウス素数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 08:07 UTC 版)
ガウス整数環を含む一般の環において、単数以外の元の積で表せない元のことを既約元といい、素元とは別であるが、後述するようにガウス整数環においては既約元と素元は同じ概念になるので問題はない。 約数が、同伴による違いを除いて 1 と自分自身のみである単数ではないガウス整数をガウス素数と呼ぶ。同伴による違いを区別しても、ガウス素数 z とは、約数が(8個の)自明な約数 (±1, ±i, ±z, ±iz) のみであるガウス整数のことである。通常の有理整数環 Z での素数と区別するために、通常の素数は有理素数と呼ばれることもある。 ガウス素数には以下の3つのタイプがある。 ノルムが 2 であるもの。すなわち、±(1 + i), ±(1 − i) の4つ。 ノルムが 4n + 1 の形の有理素数であるもの これは 4n + 1 型の有理素数の分解を与える。 100 以下の 4n + 1 型の有理素数の分解(同伴な表示は略): 5 = (1 + 2i)(1 − 2i) 13 = (2 + 3i)(2 − 3i) 17 = (1 + 4i)(1 − 4i) 29 = (2 + 5i)(2 − 5i) 37 = (1 + 6i)(1 − 6i) 41 = (4 + 5i)(4 − 5i) 53 = (2 + 7i)(2 − 7i) 61 = (5 + 6i)(5 − 6i) 73 = (3 + 8i)(3 − 8i) 89 = (5 + 8i)(5 − 8i) 97 = (4 + 9i)(4 − 9i) 4n + 3 の形の有理素数と同伴のもの。3, 7, 11, 19, 23, 31, 43, 47, 59, 67, 71, 79, …(オンライン整数列大辞典の数列 A002145) これは「2つの平方数の和で表せる素数は 2 と 4n + 1 の形のものに限る」という定理(フェルマーの二平方和定理)と、ガウス素数が素元であることによる。有理素数の単数以外による分解は 2 または 4n + 1 型に限られ、その分解は p = (m + ni)(m − ni) の形に限られる。 有理素数がガウス素数であるかどうかについて、2 と 4n + 1 型の有理素数は2つの共役なガウス素数に因数分解できるので、実質1つのガウス素数の平方であると解釈できる。この状況を「2 は分岐する」と表現する。また、4n + 3 型の有理素数はガウス素数でもある。この状況を「3 は惰性する」と表現する。 このように、ある環では素元であったものが、拡張した環でも素元であるか、またはどのような素元の積に分解されるのか、という問題は代数的整数論の主題の一つである(より正確には素元の代わりに素イデアルを考える)。
※この「ガウス素数」の解説は、「ガウス整数」の解説の一部です。
「ガウス素数」を含む「ガウス整数」の記事については、「ガウス整数」の概要を参照ください。
ガウス素数と同じ種類の言葉
- ガウス素数のページへのリンク