オオガハスとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 自然 > 生物 > 植物 > > オオガハスの意味・解説 

おおが‐はす〔おほガ‐〕【大賀×蓮】

読み方:おおがはす

昭和26年1951)に千葉市花見川区検見川(けみがわ)遺跡から発見され古代ハスの実。約2000年前のものと鑑定されたが、発見者大賀一郎発芽開花させることに成功した千葉県天然記念物


大賀ハス

(オオガハス から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 02:21 UTC 版)

大賀ハス

大賀ハスオオガハス、おおがはす)は、1951年昭和26年)、千葉県千葉市検見川(現・千葉市花見川区朝日ケ丘町)にある東京大学検見川厚生農場(現・東京大学検見川総合運動場)の落合遺跡で発掘された、今から2000年以上前の古代ハスの実から発芽・開花したハス(古代ハス)である[1]

概要

大賀ハス発祥の地(千葉市花見川区
千葉公園の大賀ハスと古代蓮資料館(千葉市中央区

戦時中に東京都は燃料不足を補うため、花見川下流の湿地帯に豊富な草炭が埋蔵されていることに着目し、東京大学検見川厚生農場の一部を借り受け草炭を採掘していた。採掘は戦後も継続して行われていたが、1947年(昭和22年)7月28日に作業員が採掘現場でたまたま1隻の丸木舟と6本のを掘り出した。このことから慶應義塾大学による調査が始められ、その後東洋大学と日本考古学研究所が加わり1949年(昭和24年)にかけて共同で発掘調査が行われた。その調査により、もう2隻の丸木舟とハスの果托などが発掘され、「縄文時代船だまり」であったと推測され落合遺跡と呼ばれた。そして、植物学者でハスの権威者でもある大賀一郎(当時・関東学院大学非常勤講師)が発掘品の中にハスの果托があることを知り、1951年(昭和26年)3月3日から地元の小・中学生や一般市民などのボランティアの協力を得てこの遺跡の発掘調査を行った。調査は困難をきわめめぼしい成果はなかなか挙げられなかったが、翌日で打ち切りという30日の夕刻になって花園中学校[注 1]の女子生徒西野真理子により地下約6mの泥炭層からハスの実1粒が発掘され、予定を延長し4月6日に2粒、計3粒のハスの実が発掘された[注 2]。大賀は5月上旬から発掘された3粒のハスの実の発芽育成を、東京都府中市の自宅で試みた。2粒は失敗に終わったが3月30日に出土した1粒は育ち、3つに株分けし、そのうちの1つが畑町の醤油屋の伊原家で育てられ、翌年の1952年(昭和27年)7月18日にピンク色の大輪の花を咲かせた。

「昭和 (1951)年に、大賀一郎博士が現在の東京大学検見川総合運動場の地層から古代ハスの実を発掘されました。発芽した蓮根は3つに分けられ、そのうちの一つが御祖父様の伊原茂さんに預けられ、見事に花を咲かされたと伺いました。 」(千葉市オーラルヒストリー・大賀ハス~伊原茂久氏インタビュー~編:千葉市中央図書館発行)

このニュースは国内外に報道され、米国ライフ週刊版1952年11月3日号に「世界最古の花・生命の復活」として掲載され「大賀ハス」と命名された[2]。また大賀は、このことに誹謗中傷する人もいたことから年代を明確にするため、ハスの実の上方層で発掘された丸木舟のカヤの木の破片をシカゴ大学原子核研究所へ送り年代測定を依頼した。シカゴ大学のウィラード・リビーらによって放射性炭素年代測定が行われ[注 3]、ハスの実は今から2000年前の弥生時代以前のものであると推定された[3]

この古代ハスは、1954年(昭和29年)6月8日に「検見川の大賀蓮」として千葉県の天然記念物に指定された[注 4]。また1993年平成5年)4月29日には千葉市の花として制定され、現在千葉公園(千葉市中央区)ハス池で6月下旬から7月に開花が見られる。日本各地は元より世界各国へ根分けされ、友好親善と平和のシンボルとしてその一端を担っている。大賀の自宅近くには、大賀の銅像が建てられ府中市郷土の森公園修景池[4]ではこの二千年ハスが育てられており、鑑賞会が催されている。

2012年(平成24年)になって、東京大学が、法人化に伴う財政難から、大賀ハスの生育されている施設などの売却を検討していることが判明した。これに対し、千葉市では大賀ハスが千葉市の市花やシンボルキャラクターともなっていることなどを考慮し、存続を求めた。現在は騒動は収束し、ボランティア団体「大賀ハスのふるさとの会」が東京大学からハス見本園の管理を引き継ぎ、観蓮会の開催や蓮文化の継承と普及を行っている[5]

大賀ハスが移植された施設

平池公園には、昭和58年に鳥取県農業試験場 から譲り受けた15粒の種子を発芽・繁殖させたもので、時期にはアマチュアカメラマンが多く訪れる。
大賀ハス(古代ハス)平池公園

脚注

注釈

  1. ^ 3月31日迄は千葉市立第七中学校
  2. ^ 大賀博士はこのハスの実を発掘する前にも、1932年(昭和7年)、千葉県香取郡滑川町(現・成田市)の長沼川の工事中に出土した須恵器の中に入っていた推定1200年前のハスの実一粒を考古学者大野一郎から譲り受け、1950年(昭和25年)6月1日、ハスの実を発芽させることに成功したが、栽培管理の失敗により50日目にして枯らしてしまったという経緯がある。
  3. ^ 放射性炭素年代測定の結果、カヤの木は、3075年 ±180年前のものとされた。丸木舟のカヤの木がハスの実より1000年古いとしても、少なくとも今から2000年前の弥生時代以前のものであることが確認できた。もちろん発掘したハスの実そのものの年代測定をすれば正確に判定することも可能だが、3粒全てが発芽させるために用いられたので推測の域を超えることはできない。なお、ハスの実の年代測定には、当時の技術水準では、35粒のサンプルが要請されたので再挑戦されることはなかった。
  4. ^ 千葉県の天然記念物に指定された「検見川の大賀蓮」は、大賀が、発芽・育成・開花に成功した東京大学大学院農学生命科学研究科附属緑地植物実験所に在るハスである。

出典

  1. ^ ちば県民だより 平成28年 (5月)” (PDF). 千葉県総合企画部報道広報課. p. 8 (2016年5月5日). 2025年1月28日閲覧。
  2. ^ “先輩たちの足跡を訪ねて”. 岡山朝日高校同窓会. https://asahikou.com/Dataroom/Person/ooga/ooga.html 2023年7月5日閲覧。 
  3. ^ 髙橋統一「縄文丸木舟覚え書-房総の諸事例から」『アジア文化研究所研究年報』第39巻、アジア文化研究所、2004年、1(132)-31(102)、ISSN 0288-3325NAID 120006399740 
    高橋統一「「縄文丸木舟覚え書-房総の諸事例から」補遺」『アジア文化研究所研究年報』第40巻、アジア文化研究所、2005年、25(52)-27(50)、 ISSN 1880-1714NAID 120006395663 
  4. ^ a b “大賀ハス(郷土の森公園・修景池)”. NPO法人 府中観光協会. https://www.kankou-fuchu.com/?p=we-page-entry&spot=41384&cat=15360&pageno=3&type=list 2022年7月18日閲覧。 
  5. ^ “千葉市がもっと「好き」になる本 オオガハス 対談”. 公益社団法人 千葉市観光協会. https://www.chibacity-ta.or.jp/chibasuki-book/taidan_oogahasu 2020年3月31日閲覧。 
  6. ^ “プレスリリース:第1旅客ターミナル前に「蓮の和風庭園」が6月22日オープン” (PDF). 成田国際空港株式会社. (2015年5月28日). http://www.naa.jp/jp/press/pdf/20150528-hasuike.pdf 2020年3月31日閲覧。 
  7. ^ “大賀ハス日誌”. 府中市図書館. (2019年7月30日). https://library.city.fuchu.tokyo.jp/fuchu/oogahasu.html 2025年4月5日閲覧。 
  8. ^ “東大ハス見本園”. 東京大学. https://www.isas.a.u-tokyo.ac.jp/lotus/index.html 2022年7月18日閲覧。 
  9. ^ 長野県博物館協議会. “善光寺大勧進宝物館”. 信州 Museum Guide. 2020年3月31日閲覧。

関連項目

外部リンク




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「オオガハス」の関連用語

オオガハスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



オオガハスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの大賀ハス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS