エコーキャンセラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 09:32 UTC 版)
ベル研究所での発明以来、エコー除去アルゴリズムは改良が加えられてきた。エコーキャンセラは次のように機能する。 受信音声信号をデジタル的に標本化し、参照信号とする。 その受信音声信号をスピーカーで再生する。 マイクロフォンが直接経路音や反射音を拾う。 マイクロフォンが拾った音声もエコー信号としてデジタル標本化する。 参照信号とエコー信号を比較する。理想的な系では、これらは全く同じである。 参照信号と180°位相をずらしたエコー信号を合成する。理想的な系では、これによってエコー信号が完全に除去される。 この過程を常に繰り返す。 エコーキャンセラには、2つの大きな問題がある。第一に、スピーカー、マイクロフォン、周囲の空間などの特性によってエコー信号が変質することである。第二は、エコー信号の変質の特性はその時どきで変わるという点である。 第一の問題に対しては、音響空間を時系列領域と周波数領域でモデル化することで対処する。音響エコー除去アルゴリズムは、現在と過去のサンプルの差分を比較することで、次のサンプルを予測する。単純化すると、サンプルはスピーカーが再生する直前とマイクロフォンで拾った直後に採られる。これらを周波数領域で比較する。これはフーリエ変換によって視覚化できる。結果として得られる情報は、次の音が音響経路によってどのように変化させられるかを予測するのに使われる。この音響空間のモデルは継続的に更新される。更新は即時ではなく、約 0.5 秒程度の遅延がある。 古いエコーキャンセラでは、インパルスやピンクノイズを使ったトレーニングが必要だった。最近のシステムは無音状態から55dBのキャンセルまで、約 200ms で追随する。 エコーの特性の変化は、主に部屋の音響環境の変化によるものである。例えば、何か動くものがあったり、マイクロフォンを部屋の中で動かした場合などに特性が変化する。ドアを開閉したり、イスとテーブルの位置が変わったり、引き出しを出し入れしても音響空間の反射特性が変わる。このため、エコーキャンセラのアルゴリズムでは非線形処理(Non-Linear Processing、NLP)と呼ばれる積極的な適応も行われる。ただし、NLPを多用すると、キャンセルし過ぎの状態となる。その場合、エコー信号が弱いながらも逆位相で残ってしまう。
※この「エコーキャンセラ」の解説は、「エコー除去」の解説の一部です。
「エコーキャンセラ」を含む「エコー除去」の記事については、「エコー除去」の概要を参照ください。
- エコーキャンセラのページへのリンク