エコ・フェミニズムとは? わかりやすく解説

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エコフェミニズム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/15 16:42 UTC 版)

政治イデオロギー > フェミニズム > エコフェミニズム

エコフェミニズム (ecofeminism) は、エコロジー運動とフェミニズム運動の概念を併せ持った社会的・経済的な思想や活動の総称。「エコロジカル・フェミニズム」とも呼ばれる。

エコフェミニズム」は1974年、フランス人作家・フェミニストのフランソワーズ・ドボンヌにより提唱された。エコフェミニズムは、「女性の抑圧と自然破壊には関連がある」と考える思想・運動である。

ドボンヌは1974年出版の『フェミニズムか、死か (Le Féminisme ou la mort)』において人類が直面している危機の原因は人口過多と資源破壊であるとし、男性による女性の支配と自然の支配は同じイデオロギーに基づいており、女性の受胎能力と大地の肥沃さの発見が家父長制の誕生につながったと論じた[1]

最近は、女性の抑圧自然破壊のみならず、階級支配・人種差別動物虐待など多種多様な不平等も視野に入れてきている。

また特にポスト構造主義の影響を受け、「女性」というカテゴリーの本質性も問われるようになった。現在は「第三世界の女性」「レズビアン女性」などの視点からのエコフェミニズム再考も行われている。

代表的なエコフェミニストには、キャロリン・マーチャント、ヴァンダナ・シヴァマリア・ミース、メアリー・メラー、スーザン・グリフィン、カレン・ウォレン、ヴァル・プラムウッドらがいる。日本では青木やよひ綿貫礼子萩原なつ子らがいる。

マーチャント(1994)はエコフェミニズムを4分類している。4分類とは、

  1. リベラル・エコフェミニズム
  2. カルチュラル・エコフェミニズム
  3. ソーシャル・エコフェミニズム
  4. ソーシャリスト・エコフェミニズム

である。

1.は既存の社会経済体制での男女平等と女性の環境運動への参加、2.は前近代的な自然・女性(性)の賞賛、3.はマレイ・ブクチンの唱えたソーシャル・エコロジーのフェミニスト版で社会経済体制の改革を、4.はソーシャリスト・エコロジーのフェミニスト版で3.と同様に社会経済体制の改革を、それぞれ志向する。日本では、エコフェミニズムをめぐって、80年代半ば上野千鶴子と「イリイチ流エコフェミニズム」「カルチュラル・エコフェミニズム」を標榜する青木やよひとの間に「青木・上野論争」が生じたが、その後、日本におけるエコフェミニズムは失速した。90年代半ばにはメラーやミースが来日し、エコフェミニズムの再考/再興が生じたが、これも一時的なものにとどまった。

具体的な運動

エコフェミニズムの具体的な運動としては、ノーベル平和賞を受賞したケニアワンガリ・マータイによる「グリーン・ベルト・ムーブメント」、女性たちが木に抱きついて森林破壊に抵抗したインドの「チプコ運動」などが挙げられる。日本では北九州市の「青空がほしい運動」[2]、滋賀県の「せっけん運動」などがあった。

批評

文芸評論の分野では、エコクリティシズムの1分野にエコフェミニズム批評がある。これはエコクリティシズムにエコフェミニズムの視点を取り入れたエコフェミニズム批評で、基本的にはテクストの批評である。その方法論としては、テクスト内での西洋的二元論の脱構築エクリチュール・フェミニンの機能、女性/自然の表象の効果などが挙げられる。テリー・テンペスト・ウィリアムスの作品はエコフェミニズム批評の対象となる重要なネイチャーライティングである。代表的なエコフェミニズム批評家にはGreta GaardやPatrick Murphyらがいる。

人物

脚注

  1. ^ Badoux Camille (1974). “Françoise d'Eaubonne, « Le Féminisme ou la Mort », éd. P. Horay”. Les cahiers du GRIF 4 (1): 66–67. https://www.persee.fr/doc/grif_0770-6081_1974_num_4_1_945_t1_0066_0000_3. 
  2. ^ シュラーデ アンナ, 鈴木玲「北九州の「青空がほしい」公害反対運動における主婦の活動」『大原社会問題研究所雑誌』第713巻、法政大学大原社会問題研究所、2018年3月、23-38頁、doi:10.15002/00014912ISSN 09129421 

参考文献

  • 青木やよひ(1994)『フェミニズムとエコロジー(増補新版)』新評論
  • ダイアモンド,I.・オレンスタイン,G.F.(編著)(1994)『世界を織りなおす:エコフェミニズムの開花』(奥田暁子・近藤和子・訳),學藝書林
  • Gaard, G., & Murphy, P. D. (Eds.) (1998) Ecofeminist Literary Criticism: Theory, Interpretation, Pedagogy. Urbana: University of Illinois Press
  • 萩原なつ子(2005)「『環境とジェンダー』の交錯―自然と人間の共生をめざして」原ひろ子(監修)『ジェンダー研究が拓く地平』(317-334頁),文化書房博文社
  • メラー,M.(1993)『境界線を破る! エコ・フェミ社会主義に向かって』(壽福眞美・後藤浩子・訳),新評論
  • マーチャント,C.(1980)『自然の死』(団まりなほか訳、工作舎 1985)ISBN 4-87502-109-7
  • マーチャント,C.(1994)『ラディカルエコロジー 住みよい世界を求めて』(川本隆史・須藤自由児・水谷広・訳),産業図書
  • ミース,M.・トムゼン,V.B.・ヴェールホフ,C.V.(1995)『世界システムと女性』(古田睦美・善本裕子・訳),藤原書店
  • シヴァ,V.(1994)『生きる歓び イデオロギーとしての近代科学批判』(熊崎実・訳),築地書館
  • 上野千鶴子・綿貫礼子(編著)(1996)『リプロダクティブ・ヘルスと環境 共に生きる世界へ』工作舎 ISBN 978-4-87502-273-2
  • スターホーク (1979, 1989)『聖魔女術』(秋端勉・鏡リュウジ訳, 1994)、国書刊行会 , ISBN 4-336-03661-6

外部リンク


エコフェミニズム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/24 04:47 UTC 版)

女性解放運動 (フランス)」の記事における「エコフェミニズム」の解説

フランソワーズ・ドボンヌ 「エコフェミニズム」という言葉生みの親とされるフランソワーズ・ドボンヌMLF担い手一人であり、1971年同性愛革命行動戦線 (FHAR) の結成参加1978年にエコロジー・フェミニズム協会設立した。ドボンヌはまた、ファロクラット(男性優越主義者)という言葉生みの親でもあり、地球破壊危機追い込んだのはファロクラットであり、ファロクラティスムが生まれたのは、農業男性の手渡ったときであると考えられる主張した

※この「エコフェミニズム」の解説は、「女性解放運動 (フランス)」の解説の一部です。
「エコフェミニズム」を含む「女性解放運動 (フランス)」の記事については、「女性解放運動 (フランス)」の概要を参照ください。

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