ウガリト文字とは? わかりやすく解説

ウガリット文字

(ウガリト文字 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/29 08:22 UTC 版)

ウガリット文字
類型: アブジャド (ただし音節文字3文字を含む)
言語: ウガリット語, フルリ語
時期: 紀元前1500年
親の文字体系:
原シナイ文字 + 楔形文字
  • ウガリット文字
Unicode範囲: U+10380-U+1039F
ISO 15924 コード: Ugar
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

ウガリット文字(うがりっともじ、: Ugaritic alphabet)は、ウガリット語の表記に用いられた表音文字。 また、フルリ語の表記にも用いられた。原シナイ文字に続く世界最古の音素文字の一つであると言われる。

地中海沿岸の古代都市ラス・シャムラ(シリア)のウガリットの遺跡で発見された粘土板文書が代表的史料とされる。1930年にドイツ人ハンス・バウアーによって解読された。 楔形文字の一種だが、メソポタミアで用いられたものが表意文字の性格を色濃く残しているのに対しこちらはほぼ完全に表音文字となっている。音素文字化もある程度進んでおり、字母数はメソポタミアのものよりはるかに少ない。また画数が大幅に減らされているなど、簡略化が進んでいる。発見された粘土板の中に、文字を学ぶ者のために書かれたと思われる文書が存在している。アルファベット文字をギリシア語のアルファ、ベータ…と同じ順に並べて記している。

音節文字3字と音素文字(子音のみを表す)27字、句読点1字の計31文字から構成される。左から右に横書きされる。

以下に画像で字形とラテン文字転写を示す。

以下は、各文字に対してのラテン文字転写とおおよその発音である。いずれも再建音であり、史実とは異なる可能性もある。参考程度にとどめられたい。

ウガリット文字 ラテン文字転写 発音
𐎀 ʾa /ʔa/ 原則として音節文字で声門破裂音と母音/a/の組み合わせ。外来語の音写では音素文字として母音/a/を表す。 また、長母音/a:/の長音符号として使われる場合もある。
𐎁 b /b/
𐎂 g /g/
𐎃 /x/ 無声軟口蓋摩擦音。kの位置で発音される「ハ」音。
𐎄 d /d/
𐎅 h /h/
𐎆 w /w/
𐎇 z /z/
𐎈 /ħ/ 舌を奥に引いて発音する強勢音の「ハ」行子音。
𐎉 /tˤ/ 舌を奥に引いて発音する強勢音の「タ」行子音。
𐎊 y /j/ 「ヤ」行子音
𐎋 k /k/
𐎌 š /ʃ/ 「 シャ」行子音。
𐎍 l /l/
𐎎 m /m/
𐎏 /δ/ 英語での"the"のth音。
𐎐 n /n/
𐎑 /θˤ/ 舌を奥に引いて発音する強勢音の「ザ」行子音。
𐎒 s /s/
𐎓 /ʕ/ アラビア語のアインに近い有声喉頭蓋摩擦音
𐎔 p /p/
𐎕 /ts/ ツァ行子音。または舌を奥に引いて発音する強勢音の「サ」行子音。
𐎖 q /q/ 舌を奥に引いて発音する強勢音の「カ」行子音。
𐎗 r /r/
𐎘 /θ/ 英語での"think"のthに近い無声歯摩擦音
𐎙 ġ /γ/ アラビア語ガインに近い有声軟口蓋摩擦音
𐎚 t /t/
𐎛 ʾi /ʔi/ 原則として音節文字で声門破裂音と母音/i/の組み合わせ。外来語の音写では音素文字として母音/i/を表す。 また、長母音/i://e:/の長音符号として使われる場合もある。
𐎜 u /ʔu/ 原則として音節文字で声門破裂音と母音/u/の組み合わせ。外来語の音写では音素文字として母音/u/を表す。 また、長母音/u://o:/の長音符号として使われる場合もある。
𐎝 ś /s/? 正確な音価は不明。外来語の音写に用いられる。
𐎟 . 単語と単語の区切りを示す。ラテン文字転写では省略される事が多い。

Unicode

Unicode では、以下の領域に次の文字が収録されている。

ウガリット文字英語版[1][2]
Unicodeコンソーシアムによる公式の表 (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+1038x 𐎀 𐎁 𐎂 𐎃 𐎄 𐎅 𐎆 𐎇 𐎈 𐎉 𐎊 𐎋 𐎌 𐎍 𐎎 𐎏
U+1039x 𐎐 𐎑 𐎒 𐎓 𐎔 𐎕 𐎖 𐎗 𐎘 𐎙 𐎚 𐎛 𐎜 𐎝 𐎟
備考
1.^Unicodeバージョン13.0現在
2. ^灰色のエリアはコードポイントが割り当てられていないことを示す。

関連項目

  • KTU 5.6ロシア語版 - 紀元前14世紀ごろのウガリットでウガリット文字学習のために使われた粘土板。アルファベット順がフェニキア文字と同じことから関連性が示唆されれている。

外部リンク


ウガリト文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 15:04 UTC 版)

音素文字の歴史」の記事における「ウガリト文字」の解説

シリア北海岸のウガリト現在のラス・シャムラ)の地で、原シナイ文字時代の後の紀元前14世紀頃には音素文字存在していたというたしかな証拠見付かっている。ここで発見されバビロニア粘土板には、一千を超す楔形文字記号刻まれている。この記号バビロニア語のものではなく文字異なりはわずか30である。およそ12粘土板には、記号の一覧がある順序刻まれており、この記号順序アラム文字フェニキア文字アラビア文字ヘブライ文字伝統的に行われていたものとほぼ一致する

※この「ウガリト文字」の解説は、「音素文字の歴史」の解説の一部です。
「ウガリト文字」を含む「音素文字の歴史」の記事については、「音素文字の歴史」の概要を参照ください。

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