インボードマウント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 15:53 UTC 版)
「ダブルウィッシュボーン式サスペンション」の記事における「インボードマウント」の解説
レーシングカーはツーリングカーなどの市販車ベース車両を除き、前後ともダブルウィッシュボーン式サスペンションの採用が定着している。その中でフォーミュラカーはタイヤが露出しているため、1960年代からスプリング / ダンパーユニットを車体内部に搭載し、空力性能を向上させるようになった。これをスプリング / ダンパーのインボードマウントと呼び、インボード化されていないものをアウトボードマウントと呼ぶ。 インボードマウントの場合はアップライトの動きをスプリング / ダンパーに伝達する機構が必要となり、下記のような方式が用いられる。スプリング / ダンパーユニットは、フロントノーズ内部やリヤのミッションケースの周囲に配置される。アームやロッドの材質はかつては金属製であったが、金属より軽量なカーボン製が普及している。空気抵抗の少ない翼断面形状に成形される場合もある。ロッド(接続棒)式の場合は曲げ応力は掛からず、ロッドの押し引きをベルクランクによりスプリング動作方向に変換する。ロッド式にはプッシュロッドとプルロッドの2方式がある。 ロッキングアーム(rocking arm) アッパーアームまたはロアーアームの中間をシャーシ側で支持しててことし、一端のアップライトの動きを他端のスプリング / ダンパーへ伝える。アームに曲げ荷重がかかるので、剛性を確保するために形状や重量の制約がある。 プッシュロッド(push rod) ロッドがシャーシ上部からアップライト下部にむけて下反角をもって取付いており、正面からは「ハの字」型に見える。タイヤがバンプ(路面突起)に乗り上げるとロッドが押され、スプリング/ ダンパーユニットを収縮させる。 プルロッド(pull rod) ロッドがシャーシ下部からアップライト上部にむけて上反角をもって取付いており、正面からは「逆ハの字」型に見える。タイヤがバンプに乗り上げるとロッドが引っ張られ、スプリング/ ダンパーユニットを収縮させる。 プッシュロッド式は圧縮方向の力で挫屈しないよう、ロッドが太めになる。プルロッド式の方がロッドを細く設計でき、重量や空気抵抗の面ではメリットがある。ただし、搭載スペースの自由度やメンテナンス面ではプッシュロッド式のほうが合理的である。 F1では、1970年代まではロッキングアームが主流であったが、ダウンフォースが大きくなるにつれ上記の制約のために廃れた。1980年代はプッシュ/プル両方のタイプが混在していたが、1990年代以降は前後ともプッシュロッド式が定番になった。2010年代に入り、車体後部の空力性能を高めるため、リアサスペンションのプルロッド化が流行している。 フォーミュラカー以外でも競技用や市販用のスポーツカーなどで、非線形特性を得るなどの目的でインボードマウントが用いられることがある。
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