イガヌの雨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 07:29 UTC 版)
「傘をもたない蟻たちは」の記事における「イガヌの雨」の解説
法規制で来月には食べられなくなるというイガヌを人々はこぞって食べたがるが、美鈴は祖父の言いつけにより、いまだ口にしたことがなかった。しかし恋人の蓮、そして友達の乃亜とその恋人である海斗とのダブルデートでイガヌの店に足を踏み入れてしまった美鈴はそこで初めてイガヌを食べ、恍惚とする。その独特な臭気から、イガヌを食べたことは帰宅後すぐに祖父に知れ、祖父と喧嘩になった美鈴は家を出て乃亜の家に身を寄せる。理由も述べずにただ禁止するだけだった祖父に反発していた美鈴だったが、その後祖父は亡くなり、美鈴に残された手紙で祖父がイガヌを毛嫌いしていた理由…イガヌのせいで、かつて自分たちが愛していた食事の多くが食べにくくなってしまうこと、勝間南瓜など伝統野菜を育てていた農家が続々つぶれてしまったことなどを知る。祖父の想いを知り、イガヌを食べてしまたことを後悔した美鈴は、祖父の葬式の席で両親を含めて皆がイガヌを食べる姿を見て「不謹慎だ」として家を飛び出すが、その日この数年全く降らなくなっていたイガヌが突然降り出す。人々が我先にとイガヌを捕り始める姿を見て、自分はこうはならないと自制する美鈴だったが、1匹のイガヌと目が合うと思わずごくりと喉を鳴らしてしまうのだった。 イガヌ ちょうど美鈴が産まれた18年前の2017年12月21日に突然空から大量に降ってきた生物。その後12年間、毎年12月に降っていたが、2029年に突然降らなくなった。猿のような頭に眼が3つあり、歯のない小さな口と、2つの下肢が頭から生えている。「いがぬ、いがぬ」と奇声を発する。タンパク質やカルシウム、ビタミン類などの栄養素が豊富に含まれていることがわかったため、今では「完全栄養食品」とまで称されている。また、イガヌから抽出された成分はエネルギー源になることもわかり、2020年には千葉県にイガヌ発電所も建設された。 地球上に現れてからまだ数年しかたっていない生物を子供が食べて人体に影響がないとはいいきれないという理由から14年前に法規制がなされ、18歳からしか食べてはいけない。イガヌを食べた人間は頬が赤らみ、顔の筋肉がだらりと垂れ、焦点が定らなくなる。甘ったるい匂い、心地よい痺れが全身を貫き、恍惚に溺れる。 美鈴(みすず) 17歳。大学の付属高に通っている。何かあると、祖母の形見としてもらったスタインウェイのアップライトピアノを弾く。 蓮(れん) 美鈴の恋人。18歳。同じ高校に通っており、美鈴の隣のクラス。美鈴には18歳の誕生日に初めてイガヌを食べたと言っていたが、実際は中学の頃から口にしていた。 祖父 美鈴の祖父。食にうるさい。実は数年前から肺がんを患っていたが、抗がん剤などの治療は一切受けず、家族にも伝えなかった。 乃亜(のあ) 美鈴の友達。髪をベージュに染め、丁寧に巻くなど派手だが、それからは想像できないくらいに成績優秀。美鈴とは中学が同じ。 海斗(かいと) 乃亜の恋人で蓮の友達。タバコを吸うなど素行が悪く、いい加減でがさつ。美鈴は苦手なタイプ。
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