アドヘシンを標的としたワクチン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 09:35 UTC 版)
「アドヘシン」の記事における「アドヘシンを標的としたワクチン」の解説
ワクチン開発のためのアドヘシンの研究は、アドヘシンの結合を防ぐ成分が免疫機構の重要な位置にあることが明らかとなって始まった。アドヘシンはしばしば感染に不可欠な要素であり、細菌細胞の表面に存在し、抗体が容易に接近することができるためワクチンの候補として魅力的である。 抗アドヘシン抗体研究の有効性は、尿路疾患性Escherichia coli (UPEC)のアドヘシンであるFimHの研究で示されている。第三世界の児童は生後3年以内に、下痢症に関わるE. coliの感染に苦しめられており、この3年間を生き残れば感染率は大きく減る。この後天的な免疫は主に細菌アドヘシンに直接対するものであることが分かっている。 クランベリージュースカクテルの摂取はUPECアドヘシンの活性を阻害する可能性がある。 アドヘシンを標的とした感染症対策においてはいまだ課題が多い。第一に、同じヒト組織でも、その感染症に関わるアドヘシンは膨大に存在することである。次に、個々の細菌においても異なる時期、異なる場所で、異なる環境因子をトリガーとして異なるタイプの複数のアドヘシンを産生する。最後に多くのアドヘシン(例えばNeisseria gonorrhoeaeのアドヘシン)は、同じクローン細胞でさえ免疫学的に異なる抗原性を示す。 動物モデルにおいては、FimH抗体による受動免疫とワクチン接種はUPECのコロニー形成を有意に減少させた。現在米国で使用が認可されている無細胞百日咳ワクチン4種のうちの3つは、Bordetella pertussisアドヘシンFHAおよびパータクチンである。また、抗アドヘシン抗体は尿路感染症に対して利用されている。さらに、マウスにおいて、合成FimHアドヘシンペプチドの使用はE. coli による泌尿器粘膜への感染を妨げる。
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