『運命の力』
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リバス公のこの戯曲は1835年、マドリードで上演され、スペインで大評判、あるいは大スキャンダルとなった話題作であった。カラトラーバ侯爵の美しい娘レオノーラはインカ人の血を引く主人公ドン・アルバロとの恋が認められず、侯爵はアルバロの短銃の暴発で死亡、侯爵の2人の息子ドン・カルロス、ドン・アルフォンソ兄弟が、父の復讐のためアルバロを付け狙う。カルロスはイタリア戦線の陣中で、アルフォンソは修道院でアルバロに返り討ちに遭い、女主人公エレオノーラは絶命寸前のアルフォンソの刃に倒れ、アルバロは酷い運命を呪って崖から身を投げて自殺する、つまり主要登場人物が全て死ぬという、当時としては陰惨極まりない劇であったこと、そしてアルバロの最期の言葉が「自分は地獄からの使者だ、人類は皆滅びるがよい」という冒瀆的なものだったことが議論の的となった。 イタリア語への翻訳は1850年に出版されており、ヴェルディが読んだのはこのイタリア語版であったと考えられる(彼は母国語以外ではフランス語を解したものの、他の外国語は不得手であった)。実は既に1852年と1856年の2回、ヴェルディはこの戯曲をヴェネツィア・フェニーチェ劇場のための新作として検討したことがあったが、いずれの場合も厳しい検閲を考えて作曲を見送っていた(その結果『椿姫』、『シモン・ボッカネグラ』がそれぞれ誕生している)。これまで母国での上演作品で散々検閲に悩まされてきたヴェルディにとって、先述通り、検閲上の心配が低いと考えられたロシアで(イタリアでは上演許可がおりにくいような)冒険的新作を発表したい、というのも自然な考えだっただろう。
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