『大宇宙魔女英語辞典』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/02 07:28 UTC 版)
「メアリ・デイリー」の記事における「『大宇宙魔女英語辞典』」の解説
このように、デイリーの著作には造語や言葉遊びが多いが、これは「言語における反フェミニズム」、すなわち、言語に根ざしたミソジニーの批判である。デイリーはこうした価値・善悪を表わす言葉を「反転 (reversal)」させることが、既存の価値体系を「反転」させることであると考えていた。1987年出版の『ウェブスター新大宇宙魔女英語辞典第一版』は、造語や言葉遊び、言葉の「反転」の集大成である。女性について否定的・侮蔑的な意味をもつ言葉は多いが、たとえば、「醜い老女」を表わす"crone"は「crone-ology(老女・学=年代記)」として「否定されてきた女性の歴史を再発見する」という意味に「反転」され、「鬼婆」を表わす"hag"は「hagiography(鬼婆を記述すること)」および「hagiology(鬼婆・学)」として「聖人伝」に「反転」される。さらに、ユングが提唱した「意味のある偶然の一致」を表わす「synchronicity(シンクロニシティ)」は"syn-crone-icity"、すなわち「老女によって意味あるものとして経験され、認識された奇妙な偶然」ということになる。また、生成し続ける"Be-ing"としての神という概念から、"Be-Laughing"は「人工的な疑似リアリティやタブーを打ち破り、希望を覚醒させること」、"Be-Thinking"は「元の自己を思い出すこと、オリジナルな質問を呼び戻すこと」、"Be-Speaking"は「議論すること、言葉を用いて心理的・物質的変化をもたらすこと」といったデイリー独自の言葉を作り出した。他にも「避妊問題の保証付き解決策」は「Mister-ectomy(男性切除)」であるとするなど、辛辣な批判を込めた言葉遊びも多い。『ユングとフェミニズム』を著したデマリス・S・ウェーアは、読者はこれらの新語・造語に対して個々の問題意識に応じた反応を示すだろうが、「重要なのは、これらによって、違った視点で違った考え方をするよう促されることである」と述べている。
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