『プロムス』
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「シェイクスピア別人説」の記事における「『プロムス』」の解説
ことわざや比喩、警句、定型の挨拶文などを集めた1655篇の手稿からなる『慣用表現と上品語の宝庫』("Promus of Formularies and Elegancies"、略称『プロムス』)と題された雑記帳が19世紀に発見された。自作の断章も含まれてはいたが、大半は他の文学者の引用であった。出典には、セネカやホラティウス、ウェルギリウス、オウィディウスといったギリシア・ローマの古典文学者や、ジョン・ヘイウッド(John Heywood)の"Proverbs"(1562年)、モンテーニュの『エセー(随想録)』(1575年)、その他フランスやイタリア、スペインの文学者が含まれる。エドワード・トンプソン卿(Edward Maunde Thompson)は、この『プロムス』(最終部分を除く)はベーコンの手になるものだと結論を下した。実際、原稿第115葉の裏にはベーコンの署名がある。この雑記帳の内、原稿に日付が入れられているのは3枚目(1594年12月5日)と32枚目(1595年1月27日)の2箇所だけである。『プロムス』中に書き込まれた表現の多くが、シェイクスピアのファースト・フォリオにおいても使用されている。以下、若干の例をあげる。 So I say both of Galen and Paracelsus.ペーローレス「ガレノスもパラケルススも口を揃えて」 — 1603年–1605年作『終わりよければ全てよし』第2幕第3場 Galens compositions not Paracelsus separations. — 『プロムス』84葉目裏 Then may I set the world on wheels, when she can spin for her living.(ラーンス「あの女が糸車を回す仕事をしてくれればうまくいくな、金は天下の回りものってくらいだからな」) — 1589年–1593年作『ヴェローナの二紳士』第3幕第1場 Now toe on her distaff then she can spynne/The world runs on wheels. — 『プロムス』96葉目裏 O, that right should o'rcome might. Well of sufferance, comes ease.(女主人「ああ、無理を通せば道理が引っ込むってやつかしらね。まあ、人生苦もありゃ楽もあるでしょうよ」) — 1589年–1593年作『ヘンリー四世 第2部』第5幕第4場 Might overcomes right/Of sufferance cometh ease. — 『プロムス』103葉目表 正統派研究者の見解としては、これらの語句は上記の例を見ても分かる通り極めてありふれたものであり、全く別の人物によって書かれた『プロムス』と正典の中でこれらが同時に使われていたとしても不思議なことではない。
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