「幾何学の手ほどき」を通じた証明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 06:08 UTC 版)
「メノン (対話篇)」の記事における「「幾何学の手ほどき」を通じた証明」の解説
16. ソクラテスは、召使に「正方形」を書いて見せ、それを縦横に線を引き、「四等分」する。元の「正方形」の一辺を2プース(pous)とすると、四等分された「小さな正方形」の一辺は1プースであり、その面積は1平方プースとなる。「小さな正方形」を2つ合わせると、その面積は2平方プース。元の「正方形」は、「小さな正方形」4つから成るので、先の倍(2の2倍)であることを確認しつつ、ソクラテスはその「正方形」の面積を尋ね、召使は4平方プースと答える。ソクラテスは、次に元の「正方形」の「2倍の面積」を持つ「2倍正方形」を想像してもらう。その面積を問われ、召使は8平方プースと答える。ソクラテスは、それではその「2倍正方形」の一辺の長さはどれくらいかを問う。召使は(面積が2倍なのだから同じように)元の「正方形」の一辺(2プース)の2倍だと答える。ソクラテスは、メノンに今の召使は「面積が2倍の正方形は、2倍の辺からできる」と思い込んでいる状態だと指摘。 17. ソクラテスは、実際に縦横2倍の辺を持つ「大正方形」を書いて見せ、そこには元の「正方形」が4つ入ること、すなわち、2倍の辺からは4倍の面積の図形ができることを指摘、その面積は4平方プースの4倍で16平方プースだと確認する。召使、同意する。ソクラテスは、改めて面積が8平方プースである「2倍正方形」の一辺の長さを問う。ソクラテスは、「2倍正方形」が、元の「正方形」の2倍であると同時に、今書いた「大正方形」の半分の大きさであることを指摘。召使、同意する。ソクラテスは、元の「正方形」の一辺は2プースであり、「大正方形」の一辺は4プースなので、「2倍正方形」の一辺の長さはその間にあると指摘。召使、同意する。その長さを尋ねられ、召使は3プースと答える。ソクラテスは、実際に一辺3プースの図を書き加えて見せ、その面積を問う。召使は9平方プースと答える。ソクラテスは、「2倍正方形」の面積が8平方プースであることを確認しつつ、改めてその一辺の長さを問う。召使、分からないと答える。 18. ソクラテスは、メノンに今の召使は先程の「思い込み」状態から、「行き詰まり(アポリア)の自覚」(無知の知)にまで前進したと指摘。そして、「しびれさせること」(上記13)は真相発見の一助となることを指摘。メノンも、同意する。 19. ソクラテスは、「大正方形」内にある4つの元の「正方形」群のそれぞれに、それらを半分にする「対角線」を引き、正方形を作る。面積が4平方プースである元の「正方形」を半分にしたものが4つあるので、2×4=8平方プースの「2倍正方形」がようやく作られたことを、召使は確認する。 20. ソクラテスは、今の一連のやり取りによって、召使は知らなかったはずの事柄に対し、彼の中で様々な「思いなし」(思惑)が生じ、繰り返し尋ねられることでそれが明確化していったことを指摘。メノンも、同意する。ソクラテスは、それは「自分の中にあった知識を取り出し、把握し直すこと」であり、「想起する」ということではないかと指摘。メノンも、同意する。ソクラテスは、召使はこれまで幾何を教わったことがあるのか問う。メノンは、否定する。 21. ソクラテスは、召使が「現世」でそれを学んでないとすると、「前世」以前に学んだことになると指摘。メノンも、同意する。ソクラテスは、したがって魂は不死であり、全てを知っているのであり、知らないと思っているようなことでも、それを励まし、探求し、想起できるように努めるべきではないかと指摘。メノンは、なるほどと感心する。ソクラテスは、この説を以て様々なことを確信的に断言しようとは思わないが、人が何かを知らない場合に、こうしてそれを探求しなければならないと思う方が、勇気づけられ、怠け心が無くなり、より優れた者になるのではないかと指摘。メノンも、同意する。
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