「幽霊指揮者」の草分け的存在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/10 08:18 UTC 版)
「幽霊指揮者」の記事における「「幽霊指揮者」の草分け的存在」の解説
このような「架空の指揮者による録音」は、LPレコードの時代から存在する。例えばアメリカの音楽プロデューサーのイーライ・オバースタイン(英語版)が所有していた"Record Corporation of America"という会社は、"Allegro"や"Royale"等のレーベル名で、「フリッツ・シュライバー(Fritz Schreiber)指揮」などと称して多数の海賊盤を販売していた。このフリッツ・シュライバーという指揮者は実在しない。オバースタインの会社は、他にも指揮者のヨーゼフ・バルツァー(Joseph Balzer)やゲルト・ルバーン(Gerd Rubahn)、ピアニストのエリオット・エヴァレット(Elliott Everett)、ゲルハルト・シュタイン(Gerhard Stein)、エリック・シルヴァー(Eric Silver)、ヴァイオリニストのヤン・バラコフスキー(Jan Balachowsky)などの名義でもレコードを発売していたが、これらの指揮者・演奏家もシュライバーと同様に実在しない。 こうした架空名義のレコードのうち、実際の演奏者が判明しているものも存在する。例えば「フリッツ・シュライバー指揮、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団」の演奏として発売されたワーグナーの『ニーベルングの指環』のレコードの場合、音源は1953年のバイロイト音楽祭のラジオ中継であり、実際の演奏者はカイルベルト指揮バイロイト祝祭管弦楽団である。しかし未だに正体がわからないものも残っている。特にシュライバー名義のベートーヴェンの交響曲第3番のレコードは、「本当はフルトヴェングラー指揮のラジオ放送用録音なのではないか」という憶測を呼び、中古レコード市場で1万円を超える値がついたこともあったという。 ドイツの指揮者兼音楽プロデューサーであるアルフレート・ショルツ(Alfred Scholz)は、オーストリア放送協会の放送用録音を大量に買い取り、PILZというレーベルを設立して、自身が指揮したもの、あるいは架空の演奏家のものとして大量に売りさばいた。幽霊指揮者の演奏とされるCD音源の多くは、この流れを汲んでいるとされる。 これらの中に、ショルツ自身の演奏による録音が存在する可能性は否定できないが、概して演奏者データが信頼できないため、検証できない。 PILZはその後倒産し、POINT、ONYX、MEDIAPHONなどに分化した。
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