「人」の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:56 UTC 版)
人新世における「人」とは何を指すかという議論がある。人新世では人類の影響が自明とされるが、これが人類による環境操作を正当化する人間中心主義につながることが問題とされる。人新世は、これまで社会科学や人文科学で研究されてきたジェンダー、セクシュアリティ、人種、階級、宗教などを全人類のリスクの観点から見直す機会としても論じられている。 人新世における人間中心主義や価値の一元化に対して、様々な分野から検討がされている。人類学の観点からは、「人」の範囲を拡張するマルチスピーシーズ民族誌がある。これは、人間社会を体内の微生物・ウイルス、食用の生物、ペットを含む複数の生物種のコミュニティとみなすアプローチである。フェミニズムやクィア理論では、人間の身体や異性愛を自明とする観点が批判的に検討されている。人新世において自然や生物種の存続が重要とされる場合、「未来の世代のために環境を守る」という価値観や、異性愛中心主義が求められる可能性がある。これに対して、人新世を根拠に価値観の一元化をするのではなく、複数の価値観を担保することが重要だと論じている。20世紀末から始まったポスト・ヒューマニズムの学派の中には、人間の完全性や中心性には懐疑的であるため人新世の人間中心主義を批判する論者がいる。社会経済的な観点からは、「人」という括りで全人類に同じ責任を課すことに対する批判もある(後述)。
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