「三造」もの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 00:44 UTC 版)
主人公「三造」は作者の中島敦を仮託した人物である。中島は「三造」という人物名をその他のいくつかの作品にも用いているが、この「三造」が登場する自己検証的な最初の小説が『斗南先生』である。 『斗南先生』の後、未完の長編『北方行』では「黒木三造」という中島と近い年齢の人物が登場するが、もう1人の「折毛伝吉」も中島の投影された人物となっている。『北方行』の最終場面には、1930年(昭和5年)の中華民国19年の夏が秋に移ろうとしている時期のことが書かれている。 『北方行』の一部分を転用・流用した『狼疾記』でも中島自身である「三造」が語っている内省的な作品で、『狼疾記』とともに「過去帳」として括られている『かめれおん日記』では「私」となっているが、ともに女学校に勤めている主人公の作品である。 「三造」を主人公にした作品には、生前に活字化されなかった未発表の習作草稿『プウルの傍で』も存在する。この習作は1932年(昭和7年)8月の満州・中国旅行体験が契機となって中学時代を回想する内容であるため、執筆時期はその旅行からさほど経過していない時期と推察されている。よって、これが「三造」ものの最初である可能性も高いが、他の「三造」ものにみられるような自己検証的・形而上学的な主題は明確ではなく、途中放棄された様相となっている。
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