石英 呼び名

石英

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 17:26 UTC 版)

呼び名

火成岩ができるとき石英の結晶は、他の鉱物の結晶ができた後でその隙間に成長するため本来の結晶の形になれず(他形結晶)、特有の結晶面が発達していないため塊状に見えるものを石英、肉眼で確認できる大きさで六角柱状の結晶(自形結晶)のものを水晶と呼んでいるが、昔はそれとは逆に塊状のものを水晶、六角柱状の結晶のものを石英と呼んでいたのが、いつしか今日のような逆の呼び方に変わってしまいそれが定着してしまったといわれている。それは、江戸時代中期の貝原益軒が書いた大和本草で、水晶と石英の定義を取り違えたからだともいわれていて、その誤りを平賀源内は自著の物類品隲で指摘していた[5]

ただ正倉院の目録では、自然のままの無加工のものを白石英、加工品を水精という使い分けをしており[6]、江戸時代以前の様々な文献等でも、石英水晶水精の区別は明確ではなく、その使い分けの基準は様々で且つあいまいでもあり、必ずしも江戸時代中期以降にその呼び方が逆になって定着してしまったとまではいいきれないようである。

産出地

石英産生の地図

石英は地殻を構成する非常に一般的な造岩鉱物で、長石に次いでもっともよく見られるもので、火成岩変成岩堆積岩のいずれにもしばしば含まれる。水晶としては、花崗岩ペグマタイト熱水鉱脈などに産出する。

砂は岩石風化することにより生じるが、石英は風化に強く、砂は石英主体となることが多い。一般的に、砂漠砂丘の砂は石英が主成分となる。

どこにでもあるため、砂埃(すなぼこり)にも石英が含まれている。石英はモース硬度7なので、プラスチック金属・車の塗装などは砂埃で容易に傷ついてしまう。そのため、宝石は石英より硬度の高いものが選ばれていることが多い。これは砂埃などで簡単に傷ついたりしては困るからである(ただし生体起源の宝石である真珠珊瑚琥珀などは例外)。

日本国内においても各地で産出するが、そのなかでも山梨県甲府市岐阜県中津川市愛知県春日井市などで産出されたものが有名である。

水晶鉱山

以下は水晶を目的に採掘している鉱山である。

性質・特徴

石英は二酸化ケイ素結晶の多形の一つで、1気圧、573℃で三方晶系低温型石英(α-石英、アルファクォーツ)から六方晶系高温型石英(β-石英、ベータクォーツ)に転移する。高温型石英は六角柱面を持たない。さらに高温では、鱗珪石クリストバライトに、また超高圧下でコーサイトスティショバイト相転移する。常温下における高温型石英の外観は仮晶による。

水晶(低温型石英)は、代表的な圧電体であり、圧力が加わると電気が発生する。このために初期のレコードプレーヤーのピックアップに使われた。今日、水晶の圧電性は、水晶発振器として最も活用されており、時計が単に「クォーツ」(水晶の英名)としばしば呼ばれるのは、水晶発振器を利用したクォーツ時計が最も多いからである。この原理を利用して、水晶振動子マイクロバランス (QCM) と呼ばれる微量質量を正確に測定するための装置の研究が行われている。


  1. ^ 国立天文台編『理科年表 平成20年』丸善、2007年、646頁。ISBN 978-4-621-07902-7 
  2. ^ Quartz (英語), MinDat.org, 2011年12月13日閲覧
  3. ^ Quartz (英語), WebMineral.com, 2011年12月13日閲覧
  4. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)「玻璃」の解説
  5. ^ 益富壽之助『石―昭和雲根志―』白川書院、1967年
  6. ^ a b c d e 堀秀道『堀秀道の水晶の本』草思社、2010年
  7. ^ “水晶の県山梨“のルーツを学術調査~山学大考古学研究会が乙女鉱山跡を現地調査~~近代産業遺産として保存活用を呼びかけ~ 山梨学院パブリシティセンター
  8. ^ a b c 『楽しい鉱物学』株式会社草思社、6月5日 1990。 
  9. ^ a b c d ロナルド・ルイス・ボネウィッツ著、青木正博訳『岩石と宝石の大図鑑』誠文堂新光社、2007年4月、221頁。 
  10. ^ シトリンとアメシストの違いは?”. 虚空座標 voidmark. 2023年2月2日閲覧。
  11. ^ 紫水晶の加熱実験(人工シトリン)/鉱物レシピ067P”. 天氣後報 II. 2023年2月2日閲覧。
  12. ^ a b 天然色のシトリンは少ない”. 水晶生活. 2023年2月2日閲覧。
  13. ^ a b c d 石英(水晶)の様々な結晶 www.tool-tool.com”. BW Professional Cutter Expert www.tool-tool.com. 2023年2月9日閲覧。
  14. ^ a b KURO的石の雑学辞典 水晶用語辞典 色による名前”. 虚空座標 voidmark. 2023年2日2日閲覧。
  15. ^ a b シトリンとは呼ばれない黄色い水晶”. 虚空座標 voidmark. 2023年2月2日閲覧。
  16. ^ イエロークォーツ(黄水晶)”. kiriri. 2023年2月2日閲覧。
  17. ^ マダガスカル産イエロークォーツA”. セルフクリエイション. 2023年2月2日閲覧。
  18. ^ 薔薇水晶(Rose Quartz)”. 空想の宝石・結晶博物館. 2023年2月2日閲覧。
  19. ^ KURO的石の雑学辞典 水晶用語辞典 表面の色による名前”. 虚空座標 voidmark. 2023年2月2日閲覧。
  20. ^ 水晶の意味・効果と種類一覧
  21. ^ 山花京子; 秋山泰伸「東海大学古代エジプト及び中近東コレクション所蔵の硫黄ビーズ製ネックレス復元研究」(PDF)『文明』第22巻、東海大学文明研究所、25-33頁、2018年3月31日。 NCID AN00222804https://opac.time.u-tokai.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=TC10002974&elmid=Body&fname=05_22_p25-33.pdf2022年10月19日閲覧 
  22. ^ キャリー・ホール著『宝石の写真図鑑』日本ヴォーグ社、p81
  23. ^ 山梨県. “甲州水晶貴石細工・原石に生命を吹き込む”. やまなしの美技. 2024年2月6日閲覧。






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