割り箸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/19 11:42 UTC 版)
特徴
割り箸には次のような特徴がある。
- 割裂性
- 割り箸は竹や杉の割裂性を利用して作られてきた[2]。
- 清潔性
- 割られる前の割り箸はまだ使われていないことを示しており安心感を与える[2]。
- 機能性
- 割り箸は使い捨てで飲食店での時間と労力の節約となる[2]。ただし廃棄物の増加などの問題がある。
- 鑑賞性
- 割り箸は木の柾目など自然の素材を生かしたもので鑑賞性を持つ[2]。
実用的な理由では、素麺、ひやむぎ、うどんなどの 麺類を食べるとき、塗り箸などよりも滑りにくく、食べ物を保持しやすくなる。りんご飴や綿菓子に使用する場合、串よりも丈夫である事から保持しやすいなどの理由がある。
種類
形状
割り箸の形状は明治から大正期にかけて「丁六」「小判」「元禄」「利久」「天削」の5種類が考案された[2]。
- 丁六
- 頭部は長方形で中溝も四方の面取りもされていない最も基本的な割り箸[2]。明治10年に奈良県吉野郡の寺子屋教師であった島本忠雄によって考案された[2]。大衆に親しまれるようにと江戸時代に一般庶民が使用した丁銀(丁六)に因んで名づけられた[2]。
- 小判
- 四方の角を落した形状の割り箸[2]。中溝は彫られておらず、丁六と元禄の中間に位置するような形状をしている。
- 元禄
- 四方の角を切り落とし割れ目にも溝を入れた割り箸[2]。明治30年代に大和下市(奈良県下市町)で考案された[2]。箸の先の断面を見ると、八角形が 2つ並んでいるように見える。
- 利久
- 千利休が考案したとされる利休箸の小割の工程をもとに、これに割れ目、中溝を付け、さらに両端を削った割り箸[2]。明治末期に大和下市の小間治三郎が考案した[2]。二本合わせると真中が最も太く両端になるに従って細くなる。この形式の割り箸は二本がくっつくと一対の形になることから「夫婦利休」ともいう[2]。箸業界では縁起を担いで「利久箸」とあてた[2]。
- 天削(てんそげ)
- 天部分を鋭角に削ぎ落した形状をした割り箸[2]。大正5年に考案された[2]。わずかに先細、角取、溝付などの加工を施す[2]。
表面は一般に無地であるが、レーザーで文様を焼き付けた割り箸もある[4]。
素材
そもそもは杉や竹を用いて作られていたが、檜やエゾ松なども多く利用される。普及品には白樺やアスペン(ホワイトポプラ)など材が用いられることもあるが、素材ごとに独特の匂いがある。素材の違いにより、杉箸、竹箸、白樺箸などと呼ばれる。
- 檜
- 木の肌が滑らかで香りがよく、耐久性が強い特徴がある。香りには天然の殺虫、防カビ抗菌効果の強い物質が多く含まれる。資材利用の板にする工程が断裁であるため、端材を利用する割り箸としての歩留まりがよい。
- 白樺
- 木質がねばり強く、安値である。白樺は樹液が多く木材としての利用は僅かで、利用されないまま倒木して朽ち果てている状況である。国内の割箸製造業者では、白樺の樹液を煮沸する事により取り去り、有効活用している。
- 竹
- きれいに割れ、油をはじく特徴がある。天ぷら、鰻料理などの日本料理は元より中華料理でも好んで使用される。竹特有の虫の心配があるため梅雨時期を避けて採取され、カビを防ぐために製造の過程で限界まで乾燥を施し、ワサビを主成分とした防カビ材を用いる場合がある。また、竹は成長が早く竹林を維持するには頻繁に手入れを行う必要がある。国内では九州が主な生産地であったが、現在はほとんど中国からの輸入である。他の素材に比べて耐久性が高いので、洗浄してある程度繰り返し使用することが可能である。
製造方法
スギを用いた割り箸では原料として製材時に出る端材を原料とする。丸太を製材すると断面が円弧状の背板と呼ばれる端材が生じる。これを用いて割り箸に加工する。家内制手工業的な小規模の工場で製造される。また、背板を輸出し、輸出した先で加工し輸入するという方法も行われている。一方でシラカバ等を原料として製造する場合は端材ではなく丸太が用いられる。丸太を合板の単板(ベニヤ)を製造する要領でロータリーレースで板状にし、それから箸に加工する。
長さ
寸を用いて基本的に4種類。割り箸の独特の慣習で実際は1寸(約3cm)短い寸法となる。
- 6寸(約16.5cm)、7寸(約18cm)、8寸(約21cm)、9寸(約24cm)
6寸には「丁度六寸」の丁六箸の意味もある。8寸は末広がりの縁起「八」を兼ねて祝い事(ハレの箸)に多く使用される。
箸袋・箸帯・箸飾り
割り箸は紙でできた袋(箸袋、箸包)に入っていることが多い。1916年(大正5年)に大阪の藤村という職工が駅弁用に袋に入れた箸を衛生割箸として意匠登録したことに始まる[2]。
コンビニエンスストアで弁当などの付属品として提供されるものはポリエチレン製になっている。紙袋に入ったものは割り箸の一部が袋から露出しているものと袋に完全に封入されているもの(完封)がある。ポリエチレン袋に入ったものは全て密封されている。箸袋の中に爪楊枝が同封されていることがある。その際には爪楊枝で怪我をしないようにとの注意書きがある。
箸袋に「おてもと」と書いてあることがあるが、これは「手もとに置く箸」という意味の「お手もと箸」が省略されたものである[5]。また、箸袋にはその提供元の店名やその連絡先(住所及び電話番号)が書かれていることもある。
日本料理店等では通常の箸袋ではなく箸帯(割り箸の中央部を巻きつけるもの)や箸飾り(割り箸の先端を通しておくもの)を用いているところもある。
- ^ a b c d e f g h 「割箸」と環境問題 森林林業学習館
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 勝田春子「食文化における箸についての一考察 : わが国における箸の変遷 (第3報) (明治時代~昭和時代)」『文化女子大学研究紀要』第22号、文化女子大学研究紀要編集委員会、1991年1月、103-113頁、ISSN 02868059、NAID 110004819052、2022年3月25日閲覧。
- ^ a b c d e “割り箸が熱い!今世界と国内で起きていること(田中淳夫) - 個人”. Yahoo!ニュース. 2023年3月13日閲覧。
- ^ a b c d e 【はじまりを歩く】割り箸(奈良県)江戸期に普及 食文化を彩る/余す部分なく 原材料を活用『朝日新聞』土曜朝刊別刷り「be」2021年9月4日6-7面(同日閲覧)
- ^ “お箸の話”. 大月. 2020年4月4日閲覧。
- ^ 田中淳夫『割り箸はもったいないか』2007年。ISBN 978-4-480-06364-9。
- ^ “「下市はわりばしの発祥の地です」”. 下市町 (2016年2月26日). 2020年4月4日閲覧。
- ^ a b “こども森林館 森林Q&A”. 林野庁. 2012年12月25日閲覧。
- ^ “平成20年版環境・循環型社会白書” (PDF). 環境省 (2008年). 2011年2月6日閲覧。
- ^ a b c d 「割箸」と環境問題 東京箸業組合
- ^ 第6章 これからの環境と私たちの行動 島根県(2021年9月5日閲覧)
- ^ “環境への取り組み”. 大和物産. 2012年12月25日閲覧。
- ^ “お箸について”. 大和物産. 2012年12月25日閲覧。
- ^ “割りばしに残留する亜硫酸塩の測定法について”. 奈良県保健環境研究センター年報・第43号・平成20年度. 2015年7月1日閲覧。
- ^ 王子ホールディングス株式会社
割り箸と同じ種類の言葉
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