元住吉駅 駅構造

元住吉駅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 08:31 UTC 版)

駅構造

島式ホーム2面6線の高架駅で、橋上駅舎を持つ。外側2線は東横線の特急通勤特急急行の通過線である。

東横線では、長らく日吉駅において各駅停車と急行との緩急接続が行われていた。1980年代末において日吉駅での大規模な改良工事の実施に伴い、待避線が使用できなくなった。このため、当該工事期間中に限り各駅停車は当駅で急行の通過待ちを行っていた。この改良工事完成後は日吉駅での緩急接続に戻され、早朝の各駅停車渋谷行1本のみが当駅で急行の通過待ちを行っていた。

しかし、目黒線延伸開業(武蔵小杉 - 日吉間)に先立ち、日吉駅の待避線を目黒線の線路に切り替えるための工事が実施されるため、2007年8月23日のダイヤ改正からは、日吉駅での速達列車の接続・通過待ちはすべて当駅での通過待ちに変更された。

駅舎や改札口のある改札階は渋谷寄りの3階(ホームの上)で、改札階と出入口の間は長いエスカレーターエレベーターなどで連絡されている。ただし、階段とエレベーターは西口側に存在しているが、東口側にはない。出入口は東口と西口の2か所があり、踏切の脇に出る構造になっている。3階は開放的な造りのコンコースで植栽もされ、飲食店などの店舗も営業し、改札前広場のガラス張りの壁から階下の線路や列車を眺めることができる。改札内コンコースも広々と造られており、同じくガラス張りの壁からホームを見下ろせる。ホームは2階にあり、階段・エスカレーター・エレベーターで接続する。

また、トイレは旧駅舎時代、駅外に公衆トイレがあったことから構内には設置されていなかったが、駅舎改築に際して改札内に新設され、ユニバーサルデザインの一環として多機能トイレも併設された。洗浄にはホームや線路に貯めた雨水が使われている(後述)。

2012年2月から3月にかけて、西口出入口前に6店舗が入居する地域密着型の商業施設がオープンした[6]

環境対策

当駅は、環境に配慮した駅を謳っている点が特徴として挙げられる。

ホームおよびコンコースの屋根部分には、鉄道駅で最大級となる太陽光発電システムを導入しており、最大出力時に駅で使用する電力の約14%程度を賄えるという。また、改札内・外コンコースに液晶ディスプレイがそれぞれ1台設置され、発電量を表示するだけでなく、地域の既存ネットワークを活用した天気予報や企業広告などの表示も視野に入れている。なお、このディスプレイは大井町線の各駅などに設置されている「東急お知らせモニター」とは別物である。

発電パネルには田園都市線南町田グランベリーパーク駅でも実績のある透過(採光)型建材一体型パネルが採用され、従来型パネルのバックシートを透過(採光)型に変更することで製品重量の増加を避けた。駅舎部のトップライトは耐火性が要求されるのでパネルの下面(室内側)に網入りガラスを取り付けた二重構造である。これは透過型で、日中はセルの隙間から太陽光を透過させて照明負荷の軽減を図りつつ、シルエットで太陽光発電の存在を認めうる。夜間はモジュール裏面(駅舎は網入りガラス裏面)に貼り付けた乳白色フィルムに室内照明光が反射し、内観は間接照明風で、昼夜で表情が異なる。パネル全体の透過率は約15%で、夏場のホームの暑さ対策を行っている。発電出力はホーム上家部で約100kW、コンコース部で約40kWであり、駅全体の消費電力の15%を賄う計画である[7]。この発電パネルは新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の太陽光発電新技術フィールドテスト事業の建材一体型システムの共同研究として設置され、太陽光発電システム事業費の50%の助成を受けている。太陽電池モジュールは単位面積当たりの変換効率の高い単結晶セルを強化ガラスと透過性のあるバックシートでラミネートした構造である。発電した直流電流を系統交流電力に変換するパワーコンディショナーは、プラットホーム上下線を区分けして50kWを2台、コンコース用に40kW1台の構成として故障時に備えた。交流に変換した電力は高圧一般配電線に系統連係され、駅構内の他負荷設備に供給される。この設備で年間約121,000kW/hの発電量が期待され、重量換算で約73tの二酸化炭素削減の効果がある。

また、ホームや線路に降った雨水を線路下の貯水タンクに貯めて浄水し、トイレの洗浄水として利用している。従来、駅構内トイレのように水道使用量が多大で、雨水利用による節水効果が高い施設での採用事例は少ない。本駅でのトイレ洗浄水量は1日約19L程度で、雨水利用による節水効果が高いと見られる。ホーム上家の雨水を雨水貯留タンク(約50L)に貯水し、濾過器で濾過した後、トイレ洗浄水として利用している。そのため、トイレ水使用量のうち25%を賄う計画となっている[7]。鉄道駅の場合、大容量雨水貯留タンクをどこに設置するかが問題になるが、本駅はホーム下に設置された。また、トイレ洗浄水系統の給水ポンプも、地上階ではなくホーム階レベルに設置することにより、搬送動力削減も実現した。

駅構造の推移

2006年9月23日まで当駅は地上駅であり、島式ホーム2面4線で、内側が本線、外側が待避線であった。また、同日まで使用されていたホームは2代目であり、開業時から1963年頃までの初代のホームは現行の高架駅とほぼ同じ位置にあったが、元住吉検車区の拡張工事およびホーム有効長延伸工事に伴いホームを渋谷方に移動した。なお、ホームの数は初代から現行の3代目まで同じである。また、出入口は西口と東口の2か所で、それぞれ踏切の東西の脇に出るようになっていた。これは開業時からほぼ同位置である。

  • 初代ホーム(1926年2月14日 - 1963年頃)
    • 改札:橋上式、階段:それぞれのホームの渋谷方の端、改札口:橋上の1か所のみ
  • 2代目ホーム(1963年頃 - 2006年9月22日)
    • 改札:地下式、階段:それぞれのホームの横浜方の端、改札口:地下の1か所のみ[8]
  • 3代目ホーム(2006年9月23日 - )
    • 改札:高架式、階段・エスカレーター・エレベーター:それぞれのホームの渋谷方の端(階段とエレベーターは西口側に存在し、東口側にはない)、改札口:ホーム上の1か所のみ

のりば

番線 路線 方向 行先
2 東横線 下り 横浜元町・中華街新横浜二俣川方面[9]
3 目黒線 日吉・新横浜・二俣川方面[10]
4 上り 目黒赤羽岩淵浦和美園西高島平方面[11]
5 東横線 渋谷池袋川越市所沢方面[12]

備考

  • 当駅では、東急新横浜線相鉄線との直通列車は目黒線ホームにのみ発着する(東横線の直通列車はすべて通過)。
  • 東横線の通過線にホームはないが、下りが1番線、上りが6番線である。そのため、ホームの番線表示は2 - 5番線が振られている。
  • 東横線は各駅停車のみの停車であるため、ホームの有効長は20m級車両8両分であるが、東横線の回送電車が当駅に停車する場合や非常時に備え、20m級10両編成の電車が停車できる様、非常用ホームとして2両分延長している。延長部は通常は柵で封鎖され、ホームドアも設置されない。
  • 後述の通り、2番線と5番線に各1編成が夜間留置される。また、通過線である6番線にも1編成が夜間留置され、翌朝武蔵小杉方へ回送で出発する。
  • 東横線の武蔵小杉寄りには非常用の渡り線が設置されており、ダイヤ乱れが発生した場合に使用される。

元住吉検車区

2006年9月23日までの地上駅時代は当駅南側の元住吉検車区に直接入庫・出庫が可能な構造であり、上下線双方から当駅が始発・終点となる列車が朝ラッシュ時や夜間に多数存在していた。さらに、当駅は特急・通勤特急・急行の通過駅であるが、検車区への出入庫を兼ねて当駅が始発・終点となる急行が設定されていた[13][14][15]

しかし、当駅が高架化されてからはホームが200m程日吉寄り、すなわち元住吉検車区の直上へ移設されたため、駅構内から検車区には直接入庫・出庫が不可能な構造になった。このため、以降は隣の武蔵小杉駅および日吉駅からの出入庫を行う形で運用されている。武蔵小杉方は目黒線の上下線路に接続されており、東横線の電車も武蔵小杉駅~当駅間では目黒線で出入庫回送する。武蔵小杉駅は渡り線などにより全ホームから検車区の入出庫が可能である。日吉方は東横線の下り線路のみに接続されており、横浜方面へ向かう電車の出庫のみに使われ、隣の日吉始発となる電車が多い。逆に日吉駅からの入庫は駅の構造上から不可能である。なお、かつて運行されていた東京メトロ日比谷線からの直通電車が元住吉検車区に出入庫する場合は全列車が武蔵小杉駅発着となっていた。

前述の通り、地上駅時代は上下線双方から当駅発着の電車が多数存在していたが、東横線横浜方面からの武蔵小杉行(検車区へ入庫する電車)は列車本数の少ない終電間際の一部電車に限られており、逆に東横線渋谷方面からの武蔵小杉行は朝ラッシュ時間帯後や夜間に多く設定されている。これは、横浜方面から入庫する場合、武蔵小杉駅で方向転換かつ目黒線上り線を横断し下り線に転線して検車区に向かう必要があり、運行に支障をきたしかねないためである。このことから、検車区への入庫も兼ねた東京メトロ03系または東急1000系による菊名始発当駅止まりは高架化を機に消滅し、駅高架化以降は回送扱いで武蔵小杉駅に到着した後、目黒線に転線した後に検車区に入庫するという運用方法が採られていた。

ただし、高架化後も東横線の上下線双方の終電(各駅停車)1本だけは従来通り当駅止まりであり、到着後そのままホームで留置され、翌朝の当駅始発列車(元町・中華街行と和光市行)として運行する。2021年ダイヤ改正より、横浜方面からは元住吉行きのあとに菊名行きが1本新設されている。なお、目黒線の当駅止まり・始発の列車はない。

臨時運行による特例

  • ハイシーズンに運行される臨時急行「みなとみらい号」は、北千住発着列車は従来日吉で特急を待避していたが、目黒線の日吉乗り入れで待避が不可能になった関係で2006年12月運行分より本駅に停車し、待避するようになった。なお、2008年7月運行分より高島平発着列車が、同年12月運行分より浦和美園発着列車がそれぞれ本駅に停車するようになった。
  • 2007年6月30日7月1日に運転された臨時列車「リバイバル急行8000系号」で、上り一方向のみだが「急行 元住吉行」が復活した。本駅の5番線に乗客を降ろした後、回送扱いで武蔵小杉で折り返し、目黒線の線路を通って元住吉検車区に入庫した[16]
  • 2007年7月12日に運転された東横線開業80周年記念の祝賀列車は渋谷からの片道運転で、本駅到着後日吉へ回送し、折り返し本駅を通過して武蔵小杉まで回送、さらに折り返して目黒線の線路を通って元住吉検車区に入庫した。
  • 2008年1月13日に運転された8000系のさよなら運転[17]が実施された際は、今まで設定されたことのなかった「特急 元住吉行」が運行され、特急停車駅の他に通常特急が停車しない本駅にも停車した。また、本駅で定期列車の特急渋谷行および元町・中華街行を待避するという珍しい光景も見られた。
  • 2009年9月21日 - 23日に運転された臨時急行「Y150たねまる号」は、ダイヤおよび待避設備の都合上本駅に臨時停車して、後続の特急を待避した。

  1. ^ a b c d 東急の駅、p.57。
  2. ^ 「七駅の改札口自動化」『交通新聞』交通協力会、1974年5月29日、1面。
  3. ^ 東横線武蔵小杉~日吉間線増工事に着手(東京急行電鉄ニューリリース) (PDF) (インターネットアーカイブ・2021年時点の版)
  4. ^ 元住吉駅を高架化します」(PDF)『HOT ほっと TOKYU』第313号、東京急行電鉄、2006年8月20日、2017年1月22日閲覧 
  5. ^ 東急東横線で電車追突、18人けが 元住吉駅 - 日本経済新聞 2014年2月15日
  6. ^ 東横線・目黒線元住吉駅西口に地域密着型の商業施設がオープン - 2012年1月26日、東京急行電鉄。
  7. ^ a b http://www.tokyu.co.jp/contents_index/guide/pdf/051118.pdf (PDF)
  8. ^ 元住吉駅(東京急行電鉄ホームページ・インターネットアーカイブ・2002年6月時点)。
  9. ^ 東横線標準時刻表 元住吉駅 横浜 元町・中華街 新横浜方面”. 東急電鉄. 2023年3月18日閲覧。
  10. ^ 目黒線標準時刻表 元住吉駅 日吉・新横浜方面”. 東急電鉄. 2023年3月18日閲覧。
  11. ^ 目黒線標準時刻表 元住吉駅 目黒方面”. 東急電鉄. 2023年3月18日閲覧。
  12. ^ 東横線標準時刻表 元住吉駅 渋谷方面”. 東急電鉄. 2023年3月18日閲覧。
  13. ^ 東横線渋谷駅下り時刻表(2000年9月改正時点)平日朝ラッシュ終了後に多数の急行元住吉駅行きが設定されている(東京急行電鉄ホームページ・インターネットアーカイブ・2002年6月時点)。
  14. ^ 東横線元住吉駅上り時刻表(2000年9月改正時点)急行は本来通過であるが、平日朝に当駅始発の急行(発車時刻入り)が設定されている。(東京急行電鉄ホームページ・インターネットアーカイブ・2002年6月時点)。
  15. ^ 2009年4月時点でこのような運転方法を採用している駅として京阪本線淀駅東武伊勢崎線北春日部駅名鉄名古屋本線須ヶ口駅近鉄京都線近鉄宮津駅西日本旅客鉄道(JR西日本)関西本線(大和路線)の柏原駅があり、いずれも当時の本駅と同様に普通列車(各駅停車)と当該駅が始発・終点となる速達列車のみが停車する。なお一部停車する優等列車の種別は、京阪と近鉄は急行、東武は区間急行、JRは快速、名鉄の須ヶ口駅は快速急行と特急である。また、1994年まではJR西日本阪和線日根野駅も同駅発着の快速に限りこの事例に当てはまっていたが、こちらは同駅から分岐する関西空港線の開業により全快速列車が停車するようになったため、この事例に含まれなくなった。
  16. ^ 東急線のお知らせ「リバイバル急行8000系号」を運転します
  17. ^ 東急線のお知らせ「8000系さよなら運転」
  18. ^ 元住吉駅前(もとすみよしえきまえ) - 川崎市交通局 2011年4月28日
  19. ^ 川崎市、バス路線廃止を届け出 元住吉駅前通経由バス 安全確保など難しく - 神奈川新聞(カナロコ) 2016年6月29日掲載 2016年12月29日閲覧
  20. ^ 「川崎地下鉄」計画を断念 読売新聞(神奈川版)2013年1月29日
  1. ^ a b c d 東急電鉄株式会社. “2022年度乗降人員 |東急電鉄”. 2023年6月17日閲覧。
  2. ^ a b 東急電鉄株式会社. “2019年度乗降人員 |東急電鉄”. 2023年6月17日閲覧。
  3. ^ a b 東急電鉄株式会社. “2020年度乗降人員 |東急電鉄”. 2023年6月17日閲覧。
  4. ^ a b 東急電鉄株式会社. “2021年度乗降人員 |東急電鉄”. 2023年6月17日閲覧。
  1. ^ レポート - 関東交通広告協議会
  2. ^ 川崎市統計書 - 川崎市
  3. ^ 線区別駅別乗車人員(1日平均)の推移 (PDF) - 24ページ
  1. ^ 平成12年 - 222ページ
  2. ^ a b 平成13年 (PDF) - 224ページ
  3. ^ 平成14年 (PDF) - 222ページ
  4. ^ 平成15年 (PDF) - 222ページ
  5. ^ 平成16年 (PDF) - 222ページ
  6. ^ 平成17年 (PDF) - 224ページ
  7. ^ 平成18年 (PDF) - 224ページ
  8. ^ 平成19年 (PDF) - 226ページ
  9. ^ 平成20年 (PDF) - 230ページ
  10. ^ 平成21年 (PDF) - 240ページ
  11. ^ 平成22年 (PDF) - 238ページ
  12. ^ 平成23年 (PDF) - 238ページ
  13. ^ 平成24年 (PDF) - 234ページ
  14. ^ 平成25年 (PDF) - 236ページ
  15. ^ 平成26年 (PDF) - 238ページ
  16. ^ 平成27年 (PDF) - 238ページ
  17. ^ 平成28年 (PDF) - 246ページ
  18. ^ 平成29年 (PDF) - 238ページ






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