インフラストラクチャー インフラストラクチャーの概要

インフラストラクチャー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/03 23:52 UTC 版)

  1. 国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設。本項で詳述。
  2. 企業などの主幹となる設備を上記に例えた用語(組織の私有財産だが、組織内では公共施設のように振る舞う物)。
  3. 「下支えするもの」や「下部構造」を示す技術一般のこと(公共施設や私有財産を問わず。ITインフラストラクチャは技術一般の用語であり、所有者には言及していない。)。

語義

日本では、しばしばインフラ (infra) と略称されるが、インフラストラクチャー (infrastructure) が「下の (infra) 構造 (structure)」を指す通り、本来インフラ (infra) は「下」「未満」を意味する接頭辞で、「下にある」「低い」を意味するラテン語 inferus に由来し、スーパー (super) の対義語である。ただ、日本語では「下部構造」はドイツ語の「Basis」に由来する別義で用いられるため、インフラストラクチャーの意味で「下部構造」を用いることは少ない。

日本語では社会基盤基盤施設経済基盤という訳語も存在する。また、類似の用語として、社会資本公共サービスがある。

インフラストラクチャーはその経済が機能するのに必要なサービスや施設を含む、国、都市、その他の地域にサービスを提供する基本的な施設やシステム[1][2]である。

道路鉄道港湾ダム上下水道インターネット接続(ブロードバンドインターネット接続を含む)など産業基盤の社会資本、および学校病院公園社会福祉施設等の生活関連の社会資本など[3]、民間の物理的な改善で構成され、 一般に「社会生活条件を可能にし、持続させ、または高めるのに不可欠な商品およびサービスを提供する相互に関連するシステムの物理的構成要素」としても定義されてきた[4]

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概要

国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設を指す。また、情報化社会の情報網整備や新規分野の法律整備などの意味でも使用される。

ふつう、中央政府公共機関が建設、管理を行う公共の福祉のための施設であるが、財政構造改革推進等により民活型社会資本整備としてPFI手法も導入されている。

国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設とは、学校病院道路港湾工業用地公営住宅橋梁鉄道路線バス路線上水道下水道電気ガス電話など通信施設を指し、社会経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものの総称である。建造物からパイプ類、場合によっては電気機器サーバ等のハードウェア)レベルが該当する。

通常は道路、河川、橋梁、鉄道からガス、電話など社会生活基盤と社会経済産業基盤とを形成するものの総称としてこの語が使用されるが、学校や病院などの公益施設も含まれ、都市計画では道路、河川、鉄道、公園水道ごみ処理施設し尿処理施設等を社会基盤施設としている。主には公共事業で整備され、社会資本として経済、生活環境の基間設備を指す。

メリット

一般にインフラストラクチャーに該当する財は、市場による供給が著しく不足する可能性がある。そのため、インフラストラクチャー整備には中央政府地方自治体が参加し、公共事業として行われるものが多い。一度事業として整備された後は社会資本として経済の供給力に多大な好影響を及ぼす。例えば、都市間高速道路を整備することで、交通コストが低下し、工場立地が容易になり、商圏が拡大することで、域内の経済活動は活性化する。また、灌漑施設を作ることで、農地の生産性は飛躍的に高まる。これらの活性化の結果、当初の建設・整備に要するコストが回収され、公共投資として正当化される。一般に中央政府公共機関が整備したものの回収は活性化による税収によって行われるが、有料道路など利用者負担で直接回収する場合もある。

堤防やダム建設など河川改修事業は、災害対策の側面が大きい。「普代水門」も参照

2015年の時点で国際通貨基金はここ30年でインフラストラクチャーへの財政支出が低下してきていることを指摘し、世界経済を上向かせるために財政支出拡大が必要と述べた。道路や線路、デジタルインフラストラクチャー、電力網などを整備することで企業が生産性を向上させやすくなる[5]

デメリット

構造物工作物としてのインフラストラクチャーの場合は、物財であるため整備後に維持コストはかかる。経済成長が著しい場合は、インフラストラクチャーの整備はその後の経済成長によって正当化されるが、経済成長停滞や人口増加停滞が発生すると、インフラストラクチャー予算の割合に占める維持コストが増大し、新設が困難になる。また、維持コストが予算を上回ると、いくつかのインフラストラクチャーに対しては維持放棄をする結果になる。

公共施設の「維持」は国家財政にとって重たい固定支出になるため、公共施設としてのインフラストラクチャーの放漫整備は財政危機を招きやすい。また、インフラストラクチャー整備に関連した基幹産業が確立されるため、予算削減が困難な場合が多い。20世紀後半には、インフラストラクチャー整備の合理的性格が地域環境と利益相反するケース(例えば、都市間を最短距離で結ぶ道路や鉄道は通過点の住民には何らの利益ももたらさない)が多発したため、整備をめぐる住民の利害の対立が先鋭化し、整備への否定的な世論が高まった。

インフラストラクチャーを司る業界などが政治と癒着する傾向が強く、汚職官僚官製談合と呼ばれる不透明さを構築したり、腐敗した政治家による利益誘導が横行してきたため、国民の間でガバナンスに対する不信感を呼んだという背景がある。これは中華人民共和国によって世界で推し進められている史上最大規模[6][7]のインフラストラクチャー投資プロジェクトである一帯一路でも国際問題になっている。

日本のインフラストラクチャーのうち、建造物・建設構造物ものは高度成長期に建設がなされたものが多く、これらについてが2020年代以降大量更新時代を迎えると言われているが、公共投資削減されてきているため、更新がままならなくなっている。このため、老朽化による事故が起こっている[8]

分類

1987年の米国国立研究評議会のパネルは、以下を参照して「公共事業インフラストラクチャー」という用語を採用した。

「…… 両方の特定の機能モード - 高速道路、街路、道路、橋。大量輸送;空港および航空路水道と水資源廃水管理固形廃棄物の処理および処分発電および送電テレコミュニケーション;そして有害廃棄物管理 - そしてこれらの様相要素を構成する複合システム。インフラストラクチャーの理解は、これら公共事業施設だけでなく、社会的要求や物的世界と相互作用して人々や物資の輸送、飲用水の供給、および公共施設と連携する開発手順、管理手法、開発政策にも及ぶその他のさまざまな用途、社会の廃棄物の安全な廃棄、必要な場所でのエネルギーの供給、およびコミュニティ内およびコミュニティ間での情報の伝達」[9]

米国土木学会は、2 - 4年ごとにさまざまなインフラストラクチャーの状態に関する組織の意見を表す「インフラストラクチャー報告カード」を発行している[10]。2017年現在 航空、橋、ダム、飲料水、エネルギー、有害廃棄物、内陸水路、堤防、公園、レクリエーション、港湾、鉄道、道路、学校、固形廃棄物、通過水、廃水など、16のカテゴリーがある。


経済的

ビジネス辞書によれば、経済インフラストラクチャーは「通信、輸送および配給ネットワーク、金融機関および市場、エネルギー供給システムなど、事業活動を可能にする国内の施設」として定義することができる。経済インフラストラクチャーは生産的な活動や行事を支援する[11]。これには、道路、高速道路、橋、空港、配水管網、下水道システム、灌漑施設などが含まれる[12]

ソーシャル

社会インフラストラクチャーは、社会サービスを支える施設の建設と保守として広く定義することができる[13]。社会インフラストラクチャーは、社会の快適さを高め、経済活動に基づいて行動するために作られている。これらは学校、公園、遊び場、公安のための建造物、ゴミ処理場、病院、スポーツエリアなど[12]

基本

基本的なインフラストラクチャとは、主要鉄道、道路、運河、港湾、ドック、電信、排水路、堤防、および土地の開拓を指す。それはインフラストラクチャのよりよく知られた機能から成る[12]。私たちが日々遭遇する世界のもの(建物、道路、ドックなど)。


  1. ^ Infrastructure | Define Infrastructure at Dictionary.com
  2. ^ O'Sullivan, Arthur; Sheffrin, Steven M. (2003). Economics: Principles in Action. Upper Saddle River, NJ: Pearson Prentice Hall. p. 474. ISBN 978-0-13-063085-8 
  3. ^ 広辞苑 第七版
  4. ^ Fulmer, Jeffrey (2009). “What in the world is infrastructure?”. PEI Infrastructure Investor (July/August): 30–32. 
  5. ^ Davos 2015: Gordon Brown urges world leaders to invest infrastructure The Guardian, 21 Jan 2015
  6. ^ China building biggest infrastructure project in history
  7. ^ ガーディアンThe $900bn question: what is the Belt and Road initiative?(2017年5月20日)
  8. ^ NHKスペシャル 調査報告 日本のインフラが危ない - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス
  9. ^ Infrastructure for the 21st Century, Washington, D.C.: National Academy Press, 1987.
  10. ^ 2017 Infrastructure Report, 112pp, American Society of Civil Engineers, 2017
  11. ^ What is economic infrastructure? definition and meaning” (英語). BusinessDictionary.com. 2018年4月25日閲覧。
  12. ^ a b c Torrisi (2009年1月). “Public infrastructure: definition, classification and measurement issues”. 2019年6月2日閲覧。
  13. ^ What is social infrastructure? | ThinkingAloudUK | Thinking Aloud” (英語). www.aberdeen-asset.fr. 2018年4月25日閲覧。
  14. ^ Land improvement, Online BusinessDictionary.com, [1] (accessed January 31, 2009)
  15. ^ Land development, Online BusinessDictionary.com, What is land development? definition and meaning - BusinessDictionary.com (accessed January 31, 2009)
  16. ^ a b D.O.D. Dictionary of Military and Associated Terms, 2001 (rev. 2005)
  17. ^ a b c d e f g Christian K.M. Kingombe 2011. Mapping the new infrastructure financing landscape. London: Overseas Development Institute
  18. ^ Peter McCawley (2010), 'Infrastructure Policy in Developing countries', Asian-Pacific Economic Literature, 24(1), May. See also Asian-Pacific Economic Literature Policy Brief No 19, May 2010, on 'Infrastructure policy in developing countries in Asia'.
  19. ^ Barclay, Cecily; Gray, Matthew (2016). California Land Use and Planning Law (35 ed.). California: Solano Press. pp. 585. ISBN 978-1-938166-11-2 
  20. ^ Koh, Jae Myong (2018) Green Infrastructure Financing: Institutional Investors, PPPs and Bankable Projects, Palgrave Macmillan.
  21. ^ “Large economic gains can come from mundane improvements in policy” (英語). The Economist. https://www.economist.com/leaders/2018/10/20/large-economic-gains-can-come-from-mundane-improvements-in-policy 2018年10月25日閲覧。 


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