線型写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 23:07 UTC 版)
数学の特に線型代数学における線型変換(せんけいへんかん、英: linear transformation、一次変換)あるいは線型写像(せんけいしゃぞう、英: linear mapping)は、ベクトルの加法とスカラー倍を保つ特別の写像である。特に任意の(零写像でない)線型写像は「直線を直線に移す」。
- ^ 一次の微分形式(一次微分形式もしくは微分一次形式; differential one-form)を単に「一次形式」または「1-形式」(one-form) と呼ぶこともある。これとの対照のため、本項に云う意味での一次形式を「代数一次形式」(albegraic one-form) と呼ぶ場合がある。
- ^ 加法性から斉一次性が従うベクトル空間もあるが、一般にはそのようなことは期待できない。例えば、実数の全体 ℝ は無限次元 ℚ-線型空間とも一次元 ℝ-線型空間とも見做すことができるが、ℝ 上の加法的函数は必ず ℚ-線型写像となり、しかし必ずしも ℝ-線型でない(この場合はさらに連続性を仮定すれば ℝ-線型になる)ことが示される(コーシーの函数方程式の項を参照)。つまり一般には「加法性」と「斉一次性」は独立した制約条件である。
- ^ 考えている係数体が何であるかは線型性にとって重要である。例えば、複素数全体の成す体 ℂ は ℂ 上一次元のベクトル空間であるとともに、ℝ 上二次元のベクトル空間でもある。各複素数に対し、その複素共軛をとる操作は ℂ 上の ℝ-線型変換であるが、しかし ℂ-線型ではない。
線型写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/01/10 05:18 UTC 版)
詳細は「線型写像」および「作用 (数学)」を参照 体 K 上のベクトル空間 V とは、加法と呼ばれる二項演算 + とスカラー倍と呼ばれる単項演算族 {αk: V → V}k∈K (αk(v) := kv for v ∈ V) を演算として持つ代数系 (V, +, 0, −·, {αk}k∈K) である(ここで、0 は加法に関する単位元(零元)であり, −· は加法に関する逆元(マイナス元)を与える単項演算であるが、加法に関して V は群となるのでこれを略して (V, +, {αk}k∈K) と考えてもよい)。また、スカラー倍の全体からなる単項演算族は体 K から V の加法群としての自己準同型環 End(V) への単位的環としての準同型像として得られるものである。 二つのベクトル空間 (V, +, {αk}k∈K), (W, +′, {βk}k∈K) (βk: W → W; βk(w) := kw for k ∈ W) の間の準同型 f: V → W は f ( v 1 + v 2 ) = f ( v 1 ) + ′ f ( v 2 ) ( v 1 , v 2 ∈ V ) , {\displaystyle f(v_{1}+v_{2})=f(v_{1})+'f(v_{2})\quad (v_{1},\,v_{2}\in V),} f ( k v ) = f ( α k ( v ) ) = β k ( f ( v ) ) = k f ( v ) ( v ∈ V ) {\displaystyle f(kv)=f(\alpha _{k}(v))=\beta _{k}(f(v))=kf(v)\quad (v\in V)} を満たすものである。ベクトル空間(あるいはもっと一般の環上の加群)の間の準同型写像のことを通常は、線型写像と呼ぶ。
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線型写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/29 03:14 UTC 版)
任意の線型写像 ƒ: V → W は定義に云う線型性 f ( α v ) = α f ( v ) ( α ∈ F , v ∈ V ) {\displaystyle f(\alpha \mathbf {v} )=\alpha f(\mathbf {v} )\quad (\alpha \in F,v\in V)} によって次数 1 の斉次性を持つ。同様に、多重線型写像 ƒ: V1 × V2 × … × Vn → W は重線型性の定義により f ( α ( v 1 , … , v n ) ) = f ( α v 1 , … , α v n ) = α n f ( v 1 , … , v n ) {\displaystyle f(\alpha (\mathbf {v} _{1},\ldots ,\mathbf {v} _{n}))=f(\alpha \mathbf {v} _{1},\ldots ,\alpha \mathbf {v} _{n})=\alpha ^{n}f(\mathbf {v} _{1},\ldots ,\mathbf {v} _{n})} を満たすから、斉次次数 n の斉次函数である。ここから、二つのバナッハ空間 X と Y の間の函数ƒ: X → Y の n次-ガトー微分が斉 n次であることが従う。
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線型写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 00:46 UTC 版)
詳細は「線型写像」を参照 二つのベクトル空間の間の関係性は線型写像あるいは線型変換によって表すことができる。これは、ベクトル空間の構造を反映した写像、即ち任意の x, y ∈ V と任意の a ∈ F に対して f(x + y) = f(x) + f(y), f(a · x) = a · f(x) を満たすという意味で和とスカラーとの積を保つものである。 同型写像とは、線型写像 f : V → W で逆写像 g : W → V, 即ち合成写像 f ∘ g: W → W および g ∘ f: V → V がともに恒等写像となるものが存在するものを言う。同じことだが、f は一対一(単射)かつ上への(全射)線型写像である。V と W の間に同型写像が存在するとき、これらは互いに同型であるという。このとき、V において成り立つ任意の関係式が f を通じて W における関係式に写され、また逆も g を通じて行えるという意味で、これら本質的に同じベクトル空間と見做すことができる。 例えば、「平面上の有向線分(矢印)」の成すベクトル空間と「数の順序対」の成すベクトル空間は同型である。つまり、ある(固定された)座標系の原点を始点とする平面上の有向線分は、図に示すように、線分の x-成分と y-成分を考えることにより、順序対として表すことができる。逆に順序対 (x, y) が与えられてとき、x だけ右に(x が負のときは |x| だけ左に)行って、かつ y だけ上に(y が負のときは |y| だけ下に)行く有向線分として v が得られる。 固定されたベクトル空間の間の線型写像 V → W の全体は、それ自体が線型空間を成し、HomF(V, W) や L(V, W) などで表される。V から係数体 F への線型写像全体の成す空間は、V の双対空間 V∗ と呼ばれる。自然な単射 V → V∗∗ を通じて、任意のベクトル空間はその二重双対へ埋め込むことができる。この写像が同型となるのは空間が有限次元のときであり、かつその時に限る。 V の基底を一つ選ぶと、V の任意の元は基底ベクトルの線型結合として一意的に表されるから、線型写像 f : V → W は基底ベクトルの行き先を決めることで完全に決定される。 dim V = dim W ならば、V と W の基底を固定するとき、その間の一対一対応から V の各基底元を W の対応する基底元へ写すような線型写像が生じるが、これは定義により同型写像となる。従って、二つのベクトル空間が同型となるのは、それらの次元が一致するときであり、逆もまた成り立つ。これは、別な言い方をすれば、任意のベクトル空間はその次元により(同型を除いて)「完全に分類されている」ということである。特に任意の n-次元 F-ベクトル空間 V は Fn に同型である。しかし、「標準的」あるいはあらかじめ用意された同型というものは存在しない。実際の同型 φ : Fn → V は、Fn の標準基底を V に φ で写すことにより、V を選ぶことと等価である。適当な基底を選ぶ自由度があることは、無限次元の場合の文脈で特に有効である(後述)。
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線型写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 05:08 UTC 版)
数学において、写像 f が線型であるとは、f について以下の2つの性質 加法性:任意の x, y に対して f(x + y) = f(x) + f(y) 斉次性(作用との可換性): 任意の x, α に対して f (αx) = αf(x) が満たされることである。ここで x, y は実数や複素数、あるいはベクトル[要曖昧さ回避]など一般に環上の加群の元、α はその環の元を表す。たとえば、一次関数はそのグラフが原点を通るとき、またそのときに限り線型性を持つ。 線型代数学はこのような線型の変換とそれによって保たれる空間の性質について研究する学問であり、ベクトル、ベクトル空間および行列によって表される線型写像や線型方程式系を扱う。また関数を関数に写す写像である作用素の線型性は関数解析学で扱われる。関数の微分を作用素と見なすことで得られる微分作用素(たとえば∇やラプラス作用素)の概念は線型作用素の重要な例である。
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線型写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 07:43 UTC 版)
詳細は「一次変換」および「変換行列(英語版)」を参照 行列とその乗法は、これを一次変換(つまり線型写像)と関連付けるとき、その本質的な特徴が浮き彫りになる。 線型写像の行列表現 m × n 行列 A から線型写像 Rn → Rm が各ベクトル x ∈ Rn を行列としての積 Ax ∈ Rm へ写すものとして定まる。逆に、各線型写像 f: Rn → Rm を生じる m × n 行列 A は一意的に決まる。陽に書けば、A の (i, j)-成分は、f(ej) の第 i-成分である。ただし ej = (0, …, 0, 1, 0, …, 0) は第 j-成分だけが 1 で他が全部 0 の単位ベクトルである。 このとき、行列 A は線型写像 f を表現すると言い、A を f の変換行列または表現行列と呼ぶ。 例えば 2 × 2 行列 A = [ a c b d ] {\displaystyle A={\begin{bmatrix}a&c\\b&d\end{bmatrix}}} は、単位正方形を (0, 0), (a, b), (a + c, b + d), (c, d) を頂点とする平行四辺形に写すものと見做すことができる。この平行四辺形は、単位正方形の頂点を成す四つの(列)ベクトル (00), (10), (11), (01) の各々に A を掛けることによって得られる。 この行列と線型写像との間の一対一対応のもとで、行列の乗法は写像の合成に対応する: 上記の A と f に加えて、k × m 行列 B が別の線型写像 g: Rm → Rk を表現するものならば、合成 g ∘ f は行列の積 BA で表現される。実際、 (g ∘ f)(x) = g(f(x)) = g(Ax) = B(Ax) = (BA)x である。最後の等号は行列の積の結合性による。
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線型写像
出典:『Wiktionary』 (2021/08/21 14:11 UTC 版)
名詞
- (数学)2つのベクトルを先に足し合わせて入力して返ってくる値とそれぞれのベクトルを入力して返ってくる値を後から足し合わせたものが同じで、あるベクトルを先にスカラー倍して入力して返ってくる値と元のベクトルを入力して返ってくる値を後からスカラー倍したものが同じである写像。体 K 上のベクトル空間 V, W において、任意のベクトル X ∈ V と Y ∈ W について f(X + Y) = f(X) + f(Y) を満たし、なおかつ任意のスカラー a ∈ K とベクトル X ∈ V について f(aX) = af(X) を満たす写像 f: V → W。
異表記・別形
参照
翻訳
線型写像と同じ種類の言葉
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