唯物論の歴史とは? わかりやすく解説

唯物論の歴史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 08:48 UTC 版)

唯物論」の記事における「唯物論の歴史」の解説

インドにおける唯物論とは一般にチャールヴァーカおよびローカーヤタ(順世)を指しており、彼らの著作としては8世紀後半の『タットヴァ・ウパプラヴァ・シンハ』が残るのみであるが、他にバラモン哲学仏教ジャイナ教の諸文献に、彼らの思想内容への言及やそれに対す批判数多く残されている。それらの資料から推察するにその批判は、真の実在地・水・火・風四元素のみだとし、身体感覚器官なども四元素集合に対して人為的に名称をつけたまでである、とし、知覚のみが唯一確かなpramana認識手段)であるとし、人が目指し得る最高の目的解脱でも天界でもなく、ただ現世における最大限快楽尽きる、との主張に基づくものであった。 「唯物論と言う呼び名は、17世紀西欧遡る17世紀末、ライプニッツは、すべての実体物体的なものであるとするエピクロスにならう者たちを『materialistes』と呼びデモクリトス主義者ホッブスの名をあげ、不敬醸成する者たちとした。同時に自然学において目的因認めない機械論的哲学原子論を、敬虔であろうとする姿勢にとって危険なものとした。 古代ギリシャ哲学において、レウキッポス原子論承けデモクリトスは、決定論的原子論展開した知覚思考含めて万物原子論的説明した伝えられている。宗教批判快楽主義知られるエピクロスは、経験主義立場からデモクリトス決定論緩和した理論展開した。彼らの著作断片しか残らず、ディオゲネス・ラエルティオス著『哲学者列伝』、ルクレティウス哲学詩『事物の本性について』が、後世概要伝えた。これらの著作は、ルネッサンス期ラテン語翻訳され哲学新風吹き込むものとして西欧知識人の間で受け入れられた。 17世紀フランス哲学者ガッサンディは、キリスト教融和図ったエピクロス原子論展開するイギリス哲学者ホッブスは『リヴァイアサン』を著し生命物体的なものとし、国家もまた人によって作られ人工的人間に過ぎないとして、政治・社会論じローマ・カトリック教会批判した18世紀自然科学進展より目的因による説明衰退する啓蒙時代フランス唯物論英語版)の系譜生れる生理学的知見増加背景にして、思考なども脳の働きとして説明できるとするラ・メトリは、『人間機械論』を著した。またディドロらは『百科全書』を企画し教条的・キリスト教学問体系抗して知識経験主義的に関連付ける立場を採った。その後エルヴェシウス精神論』、ドルバック『自然の体系』等が、こうした思想詳述した19世紀ドイツの哲学ヘーゲルは、唯心論唯物論も共に事態一面見ているに過ぎないとし、感覚も類的性質持ち生理学のみでは解けないとした。その後ヘーゲル学派宗教にたいする見方めぐって分裂しフォイエルバッハは、ヘーゲル批判して神性とは人類本質反照であるとする唯物論展開したフォイエルバッハ現実的人間主義立場受け継いだマルクスエンゲルスは、従来人間機械論的あるいは生理学的な唯物論その時代に制約されたものであったとして、ヘーゲルの弁証法継承した唯物論展開した。これを弁証法的唯物論という。 19世紀は後に「科学世紀」と呼ばれるほどの自然科学発達した時代であり、K・モレスコット(1871~95)、J・フォークト(1822-93)、ルートヴィヒ・ビューヒナーらは、自然科学的な知のみを体系化することによって哲学不要になる主張するようになった他方弁証法的唯物論立場をとったソビエト科学アカデミーは、モレスコットらの生理学的な唯物論浅薄俗流唯物論であると結論づけた。 日本では西欧思想紹介導入時期には、「物質学」「実質学」と訳されていた。19世紀後半精神主義思想確立を図る者たちによって “唯物論という訳語が定着される。社会主義的共産主義的思想随伴したものではない本格的論考は、20世紀第1次世界大戦後私費留学生たちが帰国するようになってのち、現れるようになった1932年結成され唯物論研究会において、戸坂潤らは物質基底的とする唯物論唱えたしかしながら戦時色強まった1938年2月12日唯物論研究会解散。同会機関誌唯物論研究』は同年3月をもって廃刊となった

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