可変翼
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可変翼(かへんよく)とは、飛行機において、その翼を、航空力学的な特性から見て翼平面形が異なるタイプに属すると言えるほどに飛行中に変形させられる[注 1]機構を持った翼のことで、特に主翼について言う[注 2]。後退角を変化させるものが多いが、翼端を折り下げてアスペクト比の変化を狙ったものもある。可変翼を有する機を可変翼機という。英語ではswing-wingなどという他、直訳すると「可変形状翼」となるVariable Geometry wingという表現もあり、VG翼・VG翼機などともいう。可変翼機は低速から高速まで、低い空気抵抗と適切な揚力を得ることができるが、機構が複雑であることによってその効果以上に設計から製造、メンテナンスに至るまで高価になることから、実験機以外で実運用に供されたモデルは、ほぼ軍用機のみである[注 3]。
注釈
- ^ 操縦舵面や全遊動翼、またフラップやスポイラー等の、軽微な変形と特性の一時的な変化を目的としたものは含まない。
- ^ 主翼以外の例として、Tu-144 (航空機)のカナードがあるが、同機(の引き込み式カナード)について可変翼(機)とする言及はあまり見られない。
- ^ 例外として、ビーチクラフト スターシップがある。
出典
- ^ Tucker, Vance A. (1987). “Gliding Birds: The Effect of Variable Wing Span”. J. Exp. Biol. (Company of Biologists) 133: pp. 33-58 .
可変翼
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可変翼
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「F-14 (戦闘機)」の記事における「可変翼」の解説
翼を68°に後退させたF-14A 主翼を大きく開いているF-14B F-14の大きな特徴の一つとして、飛行中に速度によって主翼の後退角を変え、翼幅・翼面積・翼の平面形を変化させて、常に最適な揚抗比と主翼形状が得られる可変翼を装備しており、可変翼は後退角を20度から68度の範囲で動く。 可変翼はF-111でも採用していたが、F-111では巡航飛行時に操縦士が手動で角度を変更するのに対し、F-14ではマッハ・プログラム・コンピュータにより角度の自動制御を可能としている。この自動制御は速度に対応した最適化だけに留まらず、加速時には後退角を大きくして抵抗を減らして、マッハ2.34の最大速度で飛行することができ、旋回時には後退角を小さくし翼幅を広げて旋回半径を小さくしたりもする。F-4(J型)との比較では、加速性能で45%、旋回半径で40%、旋回率で64%向上している。この値は推力重量比や翼面荷重の比較からの計算値を上回っており、その分が可変後退翼による性能向上といえる。 後退モード切替スイッチはスロットルレバー側面にあり、自動(AUTO)モードにしておくと、マッハ後退プログラム(MSP:Mach Sweep Programmer)と呼ばれる自動可変システムにより、飛行速度と気圧高度の変化を検知して、主翼後退角を常に最適な位置に設定することが可能であり、マッハ0.4までの20度から線形に後退し、14,000ft以下の低空では0.6付近で約25度となり、そこから変化が急になり1.0付近で68度となる。20,000ft以上では0.7付近で約22度となり、1.0付近で68度となる。また、爆撃(BOMB)モードでは、主翼後退角を55度に設定され、正確な射爆撃を可能にしている。なお、MSPが故障した際には、最大角制限の下で手動により自由に後退角を変更することもできる。また、非常用レバーを使用することにより、20度、55度、68度、75度に設定ができる。ただし、75度の後退角では主翼と尾翼が重なる事になり、この状態で飛行した場合は主翼と尾翼の干渉で悪影響をもたらすため、これを使えるのは降着装置に荷重がかかっている時のみに限られている。そのため75度は後退角設定ではなく、他機種の主翼折りたたみ機構に相当する「空母上での収納スペースを節約し、取扱いを容易にするため」のモードである。 可変翼の主翼と機体の胴体との結合には、胴体の中央部に、チタンを真空中で電子ビーム溶接を使用して組立てられた、中央部タンクと主翼の取付け部分がある主翼中央部とで構成されている箱型構造部があり、主翼の取付け部分のピボット軸(旋回軸)にボール・ベアリングを介して取付けられており、箱型構造部に取付けられた油圧スクリュー・ジャッキにより、主翼後縁の一端を押したり引いたりすることにより主翼を可動させる。チタンを採用した理由には、強度確保と重量軽減を図るためであり、F-111で採用されていた鋼製のピボット軸において、ひび割れが多発していたためである。しかし、素材と工作技術の両面では製造コスト上昇の要因となった。 可変翼機は速度に応じて最適の揚抗比を得ることができるものの、主翼の後退による空力中心の移動、可動機構の複雑さや、可動部品、特に軸の強度確保を必要とするなどの面から、工数など諸コストの上昇を招く事が問題視された。また、重量増加もエネルギー機動性的には大きな問題であり、可変翼による性能向上効果が相殺される事となる。F-14に若干遅れて欧州機のトーネード戦闘機にも採用されているが、それ以降の採用は途絶えている。 当初F-14ではもう一つの可変翼として主翼付け根のグローブベーンを展開するようになっていた。これはマッハ1.4以上になると主翼付け根前縁から展開される小翼で、超音速飛行で揚力中心が後退するのを打ち消す狙いがあった。マッハ1.0-1.4では手動で操作でき、また、空戦モードにしておくと空戦フラップと連動して迎角とマッハ数に応じて作動した。さらには後退角55度の爆撃モードでは全開となった。しかし、飛行特性にほとんど影響を与えないことがわかり、A型機の運用当時では無効化され、B型およびD型機では搭載兵器との干渉をなくすために廃止されている。 戦闘爆撃機のF-111には可変翼部分にもパイロンが設けられ、後退角の変化に応じてパイロンも一定方向に向くように連動したが、本機には可変翼部分にはパイロンは設けられなかった。これによって機構はF-111と比べ簡易化したものの、後に本機に攻撃・爆撃能力を付加する際に、大きな欠点となった。
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可変翼
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「F-111 (航空機)」の記事における「可変翼」の解説
前述の通り、実用機として初の可変翼を採用している。これはCAS(コントロール増強システム)の導入によって可能になった。可変翼は主翼の後退角を変える事によって飛行特性まで変わってしまうため、F-111以前に試作された航空機においては、操縦性に著しい問題があった。 CASによってコンピューターによる補正を加える事により、安定した操縦を可能にしている。F-111の主翼は16度 - 72.5度(ただし前縁後退角、以下同)まで、速度に応じて任意に可動させることができる。主翼下には片側4箇所のハードポイント(重量強化点、パイロンを取り付けられる場所)があり、各種兵装の搭載が可能であるが外側2箇所ずつのハードポイントは主翼に固定されており後退角26度以上ではパイロンごと切り離す必要があったため実際には使用しづらかった。内側2つずつのハードポイントは後退角に応じてパイロンの角度が変化するようになっていたが、一番内側のハードポイントは後退角54度以上で胴体と接触してしまうため後退角をそれ以上にする場合はやはりパイロンごと切り離す必要がある。つまりすべての角度において使用可能なハードポイントは内側から2つ目のみであり実際に使用する場合もそこを中心に使用されていた。これらの理由から主翼後退角を可動させるレバーは26度と54度で一旦止まるようになっている。 また、後退角26度以上でフラップが使用できなくなり、45度以上でロール制御に使用するスポイラーの内側がロックされ、47度以上で外側がロックされる。そして、それ以上の後退角では、ロール制御は水平尾翼が行うことになるため、これらの点を境に飛行性能が著しく変わる。しかし、ハードポイントの場合と違いレバーは止まらない上、上述のCASの導入によりパイロットは飛行性能の変化に気づかない事になる。そのために後退角を45度以上にしたことにパイロットが気づかず墜落しそうになったという事例がある。これは危険なマンマシンインタフェース(あるいはユーザインタフェース)デザインの一例とされる。
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