原因疾患
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/31 04:00 UTC 版)
首下がり症候群の原因疾患としてはパーキンソン病、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、頚椎症、ミオパチー、重症筋無力症、甲状腺機能低下症などが知られている。また原因薬物としてドパミン作動薬やDPP-4阻害薬なども知られている。 パーキンソン病 ジェームズ・パーキンソンの「An Essay on the Shaking Palsy」の中でも首が前屈して下顎が胸骨に接するといった首下がり症候群を疑う記載が認められる。しかし長い間、パーキンソン病の首下がり症候群は注目されなかった。1989年のQuinnの報告でパーキンソン病と多系統萎縮症(特にMSA-P)の鑑別で重要と考えられるようになった。その後の欧州の研究ではパーキンソン病では首下がり症候群を示す患者は0.8%である一方で多系統萎縮症では36.8%で首下がり症候群が認められた。その後複数でパーキンソン病患者の首下がりは5~6%で認められるという報告もあったがパーキンソン病における首下がり症候群は稀な病態と考えられている。 パーキンソン病における首下がり症候群の原因は筋緊張の異常や限局性筋炎によるものという説が知られている。またドパミンアゴニストが姿勢異常の原因となることがある。筋緊張説の根拠は急に首下がりを呈した症例で認められる強い筋緊張の亢進である。金城が強い場合、患者を仰向けに寝かせて枕を外しても頭が接地しないことがある。ミオパチー説はKatzらが提唱した限局性筋炎(isolated myopathy)と言われるものである。Hemmiら、Margrafら、KleinあるいはSpulerらがパーキンソン病に伴う首上がり症候群でミオパチーが原因であると主張している。特にHemmiらの3例報告ではステロイド投与で首下がりは劇的に改善している。 多系統萎縮症 首下がりの原因が筋力低下の場合はdropped head syndrome、筋力低下を伴わず姿勢異常が原因の場合はdisproportionate antecollisが用いられる。2008年の第二回コンセンサス会議で決められた多系統萎縮症の診断基準 (PDF) ではdisproportionate antecollisはMSAを支持するred flag所見として記載されている。ジストニアが主体と考えられているが筋原性変化もみられるという報告もある。disproportionate antecollis にL-DOPAは無効でありドパミンアゴニストやアマンタジンは増悪することもある。、抗コリン薬、クロナゼパム、バクロフェン、テトラベナジン(ハンチントン病の治療薬)などが薬物療法として検討される。 脊髄小脳変性症 SCA3では首下がり症候群の報告がある。 筋萎縮性側索硬化症 首下がり症候群の鑑別として筋萎縮性側索硬化症がありうることは古くから知られている。しかし、実際に首下がり症候群で発症するALSの頻度は高くなくまとまった報告は少ない。代表的な検討ではインドの大規模施設からの9例の報告と新潟大学からの2例の報告が知られている。 頚椎症 加齢に伴う頚椎の退行変性である頚椎症は高齢者ではほとんど合併しているので首下がりの原因として単純に結びつけるのは問題がある。頚椎症による脊髄症や神経根症のみでは頸部伸筋の著明な低下や筋萎縮は起こらないと考えられている。頚椎病変以外の誘発因子や増悪因子がなければ首下がり症候群は起こらないと考えられている。単一の神経根障害や髄節支配を受ける後頸部の伸筋には代償機能が働くため、高度の筋力低下や筋萎縮をきたす可能性は極めて少ないと思われる。頸部の伸展に大きく関与する頭半棘筋はC2~C3、頸半棘筋はC4~C7と多髄節からの支配をうけている。 筋疾患 多くの筋疾患で首下がり症候群が起こりえる。炎症性筋疾患、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、代謝性ミオパチーなどが原因となり得る。炎症性筋疾患の代表疾患である多発筋炎や皮膚筋炎では頸部屈筋が頸部伸筋より弱いのが一般的で、頸部屈筋優位の筋力低下は炎症性ミオパチーの臨床診断基準にも組み入れられている。しかし近年は首下がり症候群を示した炎症性筋疾患の症例も報告されている。病理学的IBMの基準を満たすがIBMに特徴的な大腿四頭筋や深指屈筋優位の筋萎縮や筋力滴下をしめさない封入体筋炎疑いの首下がり症候群の報告もある。下の表でも封入体筋炎疑いとした。最も注目される疾患群は頸部伸筋に限局した筋力低下のみを認め、近位筋の筋力低下を伴わない疾患群である。1992年SuaerzとKellyとは頸部伸筋に限局し、特に伸筋群の筋力低下が著明であるため首下がりを呈した症例を首下がり症候群として報告した。1996年にKatzらは頸部伸筋群優位の筋力低下を呈した4例を報告し、非進行性の頸部傍脊柱筋障害が原因としisolated neck extensor myopathy(INEM)と名付け新しい一疾患概念として提唱した。SuaerzらとKatzらの8例のうち頸部に筋力低下が限局したのが4例で残り4例は上肢帯の筋力低下を伴っていた。8例中7例ではCKの値は正常であった。筋電図では筋原性変化が認められた。筋病理では炎症細胞浸潤が乏しい報告が多い。INEMは未治療で自然軽快する例も経口ステロイド内服で速やかに軽快する例もある。また成人ポンペ病は首下がり症候群の他、歩ける段階で呼吸筋障害で呼吸不全に至るため特徴的である。 分類疾患名発症年齢CK値上昇頸部筋以外の筋力低下ほかの特徴的所見確定診断炎症性ミオパチー 多発筋炎・皮膚筋炎 あり 近位筋 筋病理 全身性硬化症に伴う筋炎 あり 近位筋 筋病理、抗体検査 封入体筋炎疑い 中年以降 あり なし 筋病理 免疫介在性壊死性ミオパチー あり 近位筋 筋病理 INEM 高齢者 なし~あり なし/上肢帯 筋病理 筋ジストロフィー 顔面肩甲上腕型ジストロフィー 35~60歳 あり 顔面筋、肩甲周囲筋、上腕二頭筋 遺伝子検査 筋緊張型ジストロフィー 26~51歳 あり 顔面筋、胸鎖乳突筋、遠位筋 前頭部禿頭、ミオトニア 遺伝子検査 LaminA/C関連先天性筋ジストロフィー 乳児、3~10歳 軽度上昇 傍脊柱筋、上肢近位筋、下肢遠位筋 関節拘縮 遺伝子検査 先天性ミオパチー 成人発症ネマリンミオパチー 37~72歳 なし なし/近位筋、上肢遠位筋 高口蓋、ミオパチー顔貌 筋病理 代謝性ミオパチー カルニチン欠損症 11歳 なし 近位筋 肝酵素上昇 筋病理、酵素活性 成人ポンペ病 33~48歳 あり 下肢帯筋、傍脊柱筋、呼吸筋 酵素活性、遺伝子診断 ミトコンドリアミオパチー 筋病理、好気性負荷試験 内分泌性ミオパチー 副甲状腺機能亢進症 なし~軽度上昇 ホルモン検査 甲状腺機能低下症 なし なし ホルモン検査 アミロイドミオパチー 77歳 なし なし 筋病理、免疫電気泳動 電解質異常に伴うミオパチー 低カリウム性ミオパチー 74~85歳 なし~軽度上昇 なし 内服歴、生化学検査、診断的治療 重症筋無力症 1986年にLangeらは重症筋無力症によって首下がり症候群が起こり得ることを報告した。その後幾つかの症例報告がされている。多くの例では首下がりが初発症状、あるいは単独の臨床症状である。首下がり症候群が重症筋無力症の単独の症状となる症例の診断根拠はAChR抗体あるはMusk抗体が陽性であるという点である。電気生理学的検討やテンシロン試験の結果は報告毎に異なる。 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症による首下がり症候群はホルモン補充療法で軽快することがある。 薬物 ドパミン受容体刺激薬、DPP-4阻害薬、甘草を含む漢方製剤、アマンタジン、オランザピン、ボトックス筋注、コルヒチン、抗HIV治療薬であるジドブジン、抗がん剤のビンクリスチン、ステロイドミオパチーを起こすステロイド、キノロン系抗菌薬などで首下がり症候群は報告されている。薬剤性の首下がり症候群は被疑薬を中止しない限り改善が得られないことが多い。
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原因疾患
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 04:34 UTC 版)
原因疾患として代表的なものには以下のものが挙げられる。 慢性動脈閉塞症 慢性動脈閉塞症では、血行再建により遠位までの組織の温存と切断端の一次治癒が期待できるので、血行再建術や血管内治療が可能かどうかを検討することが必要である。 急性動脈閉塞症 塞栓症や血栓症によるものの鑑別が重要である。塞栓症が原因の場合、周術期に下肢、内臓、脳などに再塞栓を来すことがあり注意を要する。また血栓症の場合は既存の血管病変が存在することを念頭に置いて、血管病変に対する治療も考慮する。 糖尿病足 糖尿病性血管病変による虚血と糖尿病性神経障害による感覚障害が生じた足に、体型、外力、外傷、感染などの原因が絡んで多彩な症状を呈し、潰瘍・壊死を形成した状態である。糖尿病のコントロールが不良であることが多く、また効率に感染を合併するため、周術期の厳重な管理を要する。
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原因疾患
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/21 01:18 UTC 版)
昏睡の原因は大きく3つに分けられる。 大脳半球の障害 脳幹の障害 代謝異常 一酸化炭素中毒や低血糖など 原疾患によって治療法は大きく異なるため、昏睡が起こったところを目撃した人や家族からそのときの状態や持病などを聞き、原因は何なのかを見極めることが重要である。
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