人形
『くるみ割り人形』(チャイコフスキー) クリスマス・イヴの夜更け、くるみ割り人形は少女クララの援助を得て、鼠の王を打ち倒す。その瞬間、大きな口で変な顔だったくるみ割り人形は、美しい王子に変身する。王子は「助けてくれたお礼に」と言って、クララを雪の国とお菓子の国へ連れて行く〔*翌朝クララが目覚めると、くるみ割り人形が昨夜と同じ大きな口で、横に寝ていた〕。
『ピノキオ』(コローディ) 怠け者の人形ピノキオは学校の勉強を嫌い、金貨が木になるという「ふしぎな原っぱ」や、遊んで暮らせる「のらくらの国」へ行く。遊んでいるうちピノキオはロバになり、サーカスに売られるが、海に沈められて再び人形に戻る。やがてピノキオはジェペット爺さんと再会し(*→〔魚の腹〕5)、以後は働き者になって、最後には人間になることができた。
★2a.美女に恋をしたら、それは人形だった。
『コッペリア』(ドリーブ) 青年フランツは、2階家の窓辺で読書する少女に心ひかれるが、それは人間ではなく、老コッペリウスが作った人形コッペリアだった。老コッペリウスがフランツの生命を抜き取ってコッペリアに吹きこもうとするので、フランツの恋人スワニルダが、コッペリアの服を着て踊る。それを見た老コッペリウスは、「人形のコッペリアに生命が宿った」と思って喜ぶ。
『砂男』(ホフマン) スパランツァーニ教授が20年苦心して、ぜんまい仕掛けの自動人形オリンピアを作る。砂男コッポラの奸計で、ナタニエルはオリンピアを人間と思い結婚を申しこむが、オリンピアが木の人形であると知って乱心する。後にナタニエルは、恋人クララを人形と思いこんで高塔から彼女を突き落とそうとし、遂には自ら身を投げて死ぬ。
『ホフマン物語』(オッフェンバック)第1幕 スパランツァーニ博士の依頼で、コッペリウスが人形オリンピアを造る。詩人ホフマンが美しいオリンピアを見て恋に落ち、彼女とワルツを踊る。コッペリウスは、人形製作の代金として博士から小切手を受け取るが、それが不渡りだったことに怒り、オリンピアを壊す。ホフマンは、オリンピアが人形だったと知って、呆然となる。
★2b.最初、人形を人間と思って身構える。後に、人間を人形と思って油断する。
『瓜盗人』(狂言) 夜、瓜盗人が畑へ侵入し、案山子を番人と見間違えて、許しを請う。やがて、それが案山子であると気づき、盗人は瓜をたくさん取って去る。翌晩、畑主が案山子の恰好をして畑に立つ。盗人は、案山子だと思って油断し、平気で瓜を取る。畑主は「がっきめ、やるまいぞ」と杖で盗人を打ち、驚いた盗人は、「ゆるいてくれい」と悲鳴をあげて逃げる。
『マザリンの宝石』(ドイル) ホームズは彼にそっくりの人形を、自室の肘掛椅子に置く。悪人が来て、ステッキで人形を打とうとするが、本物のホームズから「壊しちゃいけません」と声をかけられ、それが人形であったことを知る。後に、ホームズは人形のふりをして、肘掛椅子にすわる。悪人は、ホームズを人形と思い込み、油断して、盗んだ宝石を仲間に見せる。ホームズは椅子から跳び上がって、宝石をつかみ取る。
『カリガリ博士』(ウイーネ) カリガリ博士は夢遊病者ツェザーレをあやつって連続殺人を犯させる。その間、博士は、ツェザーレそっくりの人形を箱に入れ部屋に置いて、犯行時間にはツェザーレは眠っていたように見せかけ、アリバイ作りをする。
『日本書紀』巻9神功皇后摂政5年(A.D.205)3月 新羅の使者が、日本に人質になっているミシコチを船で脱出させた。そして茅で人形を作り、ミシコチの床に置いて、彼が病気で臥しているように見せかけた。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第3日第4話 王子が、娘から何度も冷たくあしらわれて怒り、ベッドの中の娘を短剣で刺す。短剣についた血を王子がなめると、甘い味がする。ベッドに寝ていたのは砂糖を固めた人形であり、娘は王子に許しを請い2人は結婚する。
『あきみち』(御伽草子) 盗賊金山八郎左衛門は、隠れ家の岩穴に入る前に、用心のため身代わりの人形を先にさし入れる。あきみちは、父の仇である金山八郎左衛門を討つべく待ち伏せしており、人形に斬りかかろうとする。その時、虚空から3百人余の声が「待て」と叫ぶので(*→〔口封じ〕1a)、あきみちは思いとどまる〔*金山八郎左衛門は安心して岩穴に入り、あきみちに討たれる〕。
『空き家の冒険』(ドイル) ライヘンバハの滝でホームズとモリアティ教授が格闘し、教授は滝壺に落ちてホームズは生還する。ホームズはベーカー街の自室に戻り、自分そっくりの蝋人形を窓辺に置く。ハドソン夫人が15分に1回、蝋人形を動かす。道を隔てた空き家から、モリアティ教授の仲間が蝋人形を狙撃するところを、ホームズとワトソンが捕らえる。
『広異記』「花嫁人形」 盧(ろ)という男が、陶製の花嫁人形を愛蔵していた。妻が冗談に「お妾さんになさるといいわ」と言う。以来、盧は魂が抜けたようになり、「毎晩、女が寝床へ入ってくる」と言う。盧夫婦は人形を寺に預け、供養してもらう。すると寺に怪しい女が現れ、「私は盧様の妾です。奥様に追い出されました」と言う。盧は花嫁人形を叩き壊す。人形の心臓部分には、鶏卵大の血塊があった。
『人でなしの恋』(江戸川乱歩) 19歳の「私(京子)」は、門野(かどの)という美青年のもとへ嫁ぐ。夫は新婚当初は「私」をかわいがってくれたが、まもなく、夜ごと1人で土蔵にこもるようになった。夫は土蔵の2階で、身のたけ3尺余りの美少女の京人形と、恋を語っていたのだ。「私」は嫉妬して、人形を引きちぎり叩きこわす。それを知った夫は、人形を抱いて刀で自殺する。
『帰ッテキタせぇるすまん』(藤子不二雄A)「ホノルルで夢を見た!?」 コイケ・シンイチは、新婚旅行でホノルルへ来た。妻のショッピングのお供でうんざりの彼は、喪黒福造に案内されて、特別メンバー制のホテルへ行く。そこには素晴らしいハワイ美人が待っていた。夜、シンイチが戻らないので心配する妻を、喪黒福造がホテルの一室へ連れて行く。シンイチは夢心地で、ダッチワイフを抱きしめていた。
『京人形』 左甚五郎が、遊女梅ケ枝を恋する余り、彼女そっくりの等身大の木彫り人形を作る。魂を込めて彫った人形なので、たちまち動き出すが、それは甚五郎同様の、男の身動きだった。「これではならじ」と、梅ケ枝が所持していた鏡を人形の懐に入れると、人形は女らしい柔らかな身振りになった〔*甚五郎は、主君の娘・井筒姫の命を救うために、人形の首を切って身代わりとする〕。
『好色一代女』巻3「わざわひの寛濶女」 奥方が、殿寵愛の美女そっくりの人形を作り、「悋気講(りんきこう)」と称して、女中たちと一緒にその人形を突きころばすなどして責めさいなむ。すると人形は眼を開き、座中を見回し立ち上がって、奥方の着物の褄に取りついた。奥方はその後病気になったので、この人形の怨念だとして、人形を焼き捨てた。
『列子』「湯問」第5 工人(=技術者)の偃師(えんし)が造った役者の人形は、見た目も動きも人間そっくりだった。人形は穆王の前で歌舞をしたが、女たちに色目を使ったので穆王は怒った。偃師は人形をバラバラに分解し、筋肉・内臓・骨格がすべて革や木でできていることを示した。
『ペトルーシュカ』(ストラヴィンスキー) あやつり人形の道化師ペトルーシュカには、魂が宿っていた。ペトルーシュカはバレリーナの人形に恋するが、ムーア人の人形の三日月刀で突き殺される。壊れて動かなくなった人形のペトルーシュカを、人形遣いの親方が見世物小屋へ運ぶ。その時、小屋の屋根の上にペトルーシュカの幽霊が現れて、踊る。親方は、魂の抜け殻である人形と、屋根の上の幽霊を見比べて、震え上がる。
『江談抄』第3-6 菅原家の本姓は土師氏である。昔、帝王を陵墓に葬る時必ず人を一緒に埋めたが、土師氏は土の人形をその代わりにした。これは国家のためには不忠であるので、菅原家の人々は官位が低い。
『日本書紀』巻6〔第11代〕垂仁天皇32年(A.D.3)7月 日葉酢媛命が薨じた時、陵墓に生きた人を埋めることを止め、代わりに埴輪を立てた。
『青塚氏の話』(谷崎潤一郎) 50代で禿頭の変態性慾者・青塚氏は、映画女優・由良子そっくりの、ゴム製の袋人形を30体も造り、一緒に暮らしていた。人形たちには髪や睫毛が植えられ、湯を入れてふくらませるので、人間と同じ体温があり、体臭もある。人形は、青塚氏が膝の上へ載せる時のポーズ、立って接吻する時のポーズなど、さまざまな姿勢をしていた。青塚氏は仰臥して、顔の上に、しゃがんだ姿勢の人形をまたがらせる。人形の下腹をおさえると臀の孔から瓦斯(ガス)が洩れ、さらに・・・・。
*美女の足で顔を踏んでもらう→〔足〕6aの『富美子の足』(谷崎潤一郎)。
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