乍王朝
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乍驍宗(さく ぎょうそう) 声 - 藤原啓治 泰王。姓名は朴綜(ぼくそう)。元・戴国禁軍左将軍。委州の呀嶺出身。褐色の肌に白髪、真紅の瞳。人望が厚く、知略に優れた武将として他国にまで知られた。泰麒を竦ませる程の覇気を持つ。 剣の腕前は延王と並び、驕王に付き添い雁国へ赴いた際、尚隆と試合をして3本の内1本を取ったことを賞賛され、驕王(アニメでは延王)から剣を下賜された。 驕王から阿選と並んで重用されていたが、道義に反する命を拒否して3年ほど野に下っていたことがある。この時、黄海で朱氏に徒弟入りして騎獣の狩り方を学んでおり。軍へ復帰した後も休暇の度に黄海を訪れて、自ら騶虞の「計都」を捕獲し騎獣にした。その経験から昇山の際も李斎ら他の昇山者とは別行動を取り、僅かな手勢のみの単独行で妖魔が跋扈する黄海を踏破して蓬山に到達した。 蓬山で李斎・泰麒と共に騎獣狩りに行った際、誤って饕餮の巣穴に入り込み、饕餮に跳ね飛ばされ、然程の怪我はなかったのだが泰麒の気を散らさないように重傷を装い、泰麒の折伏を成功させた。李斎を始め多くの官が泰麒を無力な子供のように扱う中、蓬山の女仙が「戴の者は血の気が多い」と揶揄したような苛烈な血が泰麒にも流れていると判断しており、後に泰麒が自ら人を殺傷する様子を見て即座に納得していた。 頭脳明晰で決断力と実行力を兼ね備えているものの、謙虚さに欠け、やや独善的な面がある。自分の性格や言動に加減ができず、自ら「手綱をうまく緩められない性分」と語る程に無理にそれをしようとすると泥沼化する事を自覚している。そのため、人望は厚いが敵も多い。理想を実現するため、時には苛烈で強引な行為に走っていた。即位後は宮中内の要職を側近で固め、泰麒を漣国へ行かせている間に旧勢力・敵対勢力の粛清・排除を行っていた。 反乱軍討伐のため、かつて自分に一敗地を付けた轍囲のある文州へ出征中、琳宇(轍囲の手前の郷城)付近で姿を消し、その後7年間に亘って行方不明になる。実際には阿選が護衛として付けた烏衡に連れ出され、函養山で襲撃されて重傷を負い、縦坑の底に放り込まれた上、落盤を起こして生き埋めにされていた。暗闇の中に一人取り残されながらも王としての務めである郊祀を絶やさず、自力脱出のための努力を続け、やがて裂け目で遭遇した騶虞の「羅睺」を捕らえて騎獣とし脱出する。一度は阿選に捕らわれ公開処刑されそうになるものの、泰麒、文州で決起した李斎らの残党、潜伏を続けていた英章軍・臥信軍によって救出され、雁を始めとする諸国の支援を受けて玉座を取り戻す。 蒿里(こうり)/ 高里要(たかさと かなめ) 声 - 釘宮理恵(蒿里)、岡野浩介(高里要) 泰麒。鬣の色が鋼色の、麒麟の中でも稀な黒麒麟であり、周囲からは麒麟としての能力が高いと思われている。 卵果が実って間も無く蝕により日本へ流され、胎果として生まれ育った。10年後に延麒により発見され、身に覚えのない事で祖母の折檻を受け雪の降る庭に放り出されていた所を廉麟と汕子によって連れ戻された。その後は蓬山で育てられ、昇山開始の報を聞いて昇山してきた驍宗を王に選び戴国へ下るが、驍宗の出征中に阿選に角を斬られ、その衝撃から無意識に鳴蝕を起こして再び蓬莱へと渡り、同時に十二国で過ごした約1年間の記憶を失う。6年後、各国の協力により十二国へ帰還するが、肉食の強要や汕子・傲濫の暴走による血の穢れ、更に周囲から向けられた怨詛(怨みや憎しみ等の負の感情)により、体は瀕死の重体に陥っていた。西王母により病を祓われ回復した後、自分の存在が慶に少なからず負担をかけていると感じ、角が再生するのを待たずに驍宗を探すため李斎と共に戴国へ戻る。 帰還した戴では直接王宮に乗り込み、虚言で高官を混乱させた隙に自分の勢力を作り、民の救済と驍宗の捜索・救出を試みる。目的達成の直前で阿選により勢力を瓦解させられるが、驍宗処刑の場で麒麟にあるまじき「自ら剣を取り殺傷を行う」ことで驍宗の下へ駆けつけ、李斎らと共に驍宗を救出する。殺傷を行ったことによる穢瘁は再び西王母に清められるが、後遺症が残ることになった。 幼い頃は、祖母の厳しい躾により常に周囲に気を遣う自虐的な性格だった。蓬莱では浮いた存在だと自覚していたため、最初の蓬山への帰還の際、生家との別離をすんなりと受け入れて惜別の念は持っていなかったが、哀惜の念がありホームシックになる事もあった。二度の帰還を経た後は、一度決意した事は最後まで貫き通す強靭な意志を持ち、良くも悪くも強かで、戴の民らしい苛烈さを備える性格になった。 「蒿里」は蓬莱での名字をもじったもので、蓬山に存在する死者が住む山(蒿里山)を「いっそ不吉で縁起が良い」として驍宗が付けた字である。陽子より1歳下(蓬莱から2度目の帰還の時点で17歳前後)だが、麒麟としての成獣年齢はそれより少し若い。 白汕子(はくさんし) 声 - 勝生真沙子 泰麒の女怪。女の上半身に魚の首、豹の下半身に蜥蜴の尾の姿。泰麒に対して非常に過保護。 『魔性の子』では泰麒を守ろうとするあまり理性を失い、些細な事でも泰麒に危害を加えた者は傲濫と共に惨殺していた。 傲濫(ごうらん) 声 - うえだゆうじ 泰麒の唯一の使令。種族は饕餮(とうてつ)。麒麟と同等以上の強大な力(汕子曰く「王の手に余る程の力」)を持ち、他の使令達が本能的に近付くのも恐れおののく程の強烈な妖気を放つ、妖魔の中でも別格中の別格として扱われている。 決まった姿を持たず、柴の子犬や巨大な狛犬など様々な姿に変わる事ができ、普段は大きな赤い犬の姿をしている。 蓬莱へ渡った泰麒を守る為に、汕子と共に殺戮を繰り広げ、血の穢れにより妖魔の性を取り戻しかけ、結果泰麒の周囲に禍々しい妖気とおぞましい量の血の穢れをまき散らした。しかし後の泰麒捜索の際に、この膨大な妖気と穢れが手がかりとなる。 劉李斎(りゅう りさい) 声 - 進藤尚美 戴国瑞州師中将軍。姓名は劉紫。赤茶の髪の大柄な女性。驍宗の登極前は承州師におり、承州師の女将軍として王宮にも名が知れていた。 驍宗と同時期に昇山した1人で、騎獣の飛燕を介して泰麒になつかれ、その縁で驍宗とも誼を通じる。戴国に戻った後も泰麒や驍宗からの信任は篤く、驍宗登極による玉突き人事で空位になった瑞州師中将軍に抜擢され、驍宗の禁軍時代の人脈が大半を占める戴国宮中にあって、阿選らと共に数少ない外様の有力者として重用される。 驍宗と泰麒が行方不明になり、自身も反逆の汚名を着せられて部下と切り離された後も、事実上の支配者となった阿選に下ることを拒否して、6年間各地を転々としながら驍宗と泰麒の探索を続けた。進退窮まった時、泰麒と同じ年頃で同じ蓬莱で生まれ育った胎果の女王が慶国に登極した噂を聞き、仲間の花影の反対を振り切って、慶王に覿面の罪を生じさせてでも支援を要請するため、戴国を脱出した。妖魔に襲われ右腕を失うも何とか慶国に到着し、彼女の懇願により各国の麒麟が協力して泰麒捜索が始まった。 阿選の手を逃れる間に地位も名誉も資産も失い、景王を頼ろうとした際に花影と袂を分ったことで知己もすべて失い、慶国の保護下では「戴」という国以外に己の依って立つ場所を持たなくなっていた。泰麒の帰還後は泰麒さえ無事でいれば戴を救えているような気になっていたが、それでは戴の民に対する裏切りであると泰麒に諭され、泰麒と共に戴国へ帰還する。 戴で瑞雲観の道士の生き残り・去思と出会ったことを切っ掛けに、道観を中心として驍宗を捜索しながら坑夫や商人などに人脈を広げ、元は敵であった土匪とも協力関係を結び、遂には驍宗の救出に成功する。阿選によって再び驍宗が捕らえられた後は、僅かな残党を率いて悲壮な覚悟で驍宗救出に向かう。 花影(かえい) 戴国秋官長大司寇。元・藍州州宰。驍宗登極以降は李斎の友人でもある。穏やかで人を罰するのは苦手とするが、その性分故に佞臣の粛清を進める中ではむしろ公正に人を裁けると考えた驍宗によって、大司寇に抜擢された。しかし公正さを保つ為に驍宗は抜擢の理由を言わなかったため、向かない仕事に気を病み職を辞す事も考えたが、花影の負担が大きいことに気付いた彼から李斎経由で本心を聞いて、職務に邁進する事になった。 阿選の乱後は王宮を脱出して放浪し、李斎と合流して最後まで行動を共にしていたが、騙すような形で他国に支援を求めようとする李斎とは袂を分かつ。その後、故郷の蘭州へ戻り、臥信と合流して江州攻めに協力する。 巌趙(がんちょう) 戴国禁軍左将軍。巌のような巨躯。驕王の治世では驍宗軍の師帥で、驍宗とは兄弟のような間柄だった。阿選の乱の際は鴻基にいたが、多くの人質を取られて身動きできず、官職も自邸も取り上げられ、驍宗の騎獣である計都の世話役として劣悪な待遇に甘んじた。泰麒の帰還後も表立って行動することを躊躇っていたが、項梁が出奔した際に代わって泰麒の大僕になる。 英章(えいしょう) 戴国禁軍中将軍。奇計奇策の軍人。文州に叛乱の鎮圧に赴くが、文州全土で次から次に勃発する暴動に対処しきれず、轍囲が巻き込まれるに至って驍宗自らの援軍を招くことになった。阿選の謀反を李斎から知らされた際、いち早く全軍を解散し、王師六軍の中で最も勢力を保ったまま潜伏する。 正頼(せいらい) 戴国瑞州令尹であり、傅相も兼任。泰麒の教育・世話を一手に引き受ける。驍宗配下の軍吏の中でも名うての文官。少々茶目っ気もあり、時にはそれで驍宗に絞られる。阿選の乱の際に国帑(国の資産)を隠匿し、そのため出奔に失敗して捕らえられ陰惨な拷問を受けるが、阿選の行動を大きく削ぐことに繋がった。驍宗帰還後は冢宰になるものと目されている。 霜元(そうげん) 戴国瑞州師左将軍。巌趙ほどではないが偉丈夫で、幼い泰麒に「騎士」という言葉を想起させていた。叛乱の鎮圧に苦心している英章の援軍として驍宗とともに文州へ赴き、阿選の乱後は李斎討伐の命令を拒否して軍を解散する。その後、誅伐を逃れて辺境の宗教都市・高卓に潜伏し、離散した麾下・兵卒を密かに集めながら驍宗を探し続けていた。 臥信(がしん) 戴国瑞州師右将軍。英章と同様に奇計奇策の軍人。文州の乱で驍宗が行方不明になった後、連れ戻された阿選軍に代わって文州へ派遣される。阿選の謀叛が発覚した後は2師を率い、蘭州で朱旌に匿われて潜伏する。正頼が隠匿した国帑を預かっており、驍宗が救出されるまで隠し続けた。 楚項梁(そ こうりょう) 英章軍の師帥で暗器の達人。阿選の乱後、英章や同輩との接点が失われてひとり放浪している最中、江州恬県で泰麒・李斎と邂逅する。その後、李斎と別れた泰麒の護衛として共に白圭宮に入り、拘束されていた正頼に接触して、国帑の在処を託され英章にそれを伝えるため出奔する。 静之(せいし) 臥信軍の旅帥。驍宗が昇山した際、随行した臥信の従者として共に蓬山に行っており、その際に李斎とも出会っている。阿選の乱の際、誅伐で重傷を負ったところを神農の習行に拾われる。回復後は習行の護衛に扮して仲間を探し、李斎と出会って驍宗を探す同志になる。 基寮(きりょう) 文州師将軍。驍宗登極直後は英章軍の師帥であり、驍宗の麾下達とは知己。阿選の乱の際に誅伐で重傷を負い、老安という僻地の里に匿われるが、傷が癒えず6年後に死亡する。老安の民に対し頑として素性を明かさなかったため、一時は驍宗ではないかと思われていた。 夕麗(せきれい) 英章軍の卒長。文州で軍が解散した後、葆葉に拾われ、李斎たちが葆葉と手を結んで以降は連絡役になる。兵卒としては体格や膂力で劣る女性であるが故に、女ながら将軍として立身している李斎に憧れを抱いている。
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