下痢原性大腸菌感染症とは?

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下痢原性大腸菌感染症

下痢原性大腸菌表1に示す通り5種類分類され、その疫学病原性についてはおのおの異なる。このうち腸管出血性大腸菌EHEC)については本週報1999年29号を参照されたい

疫 学
1 )腸管病原性大腸菌(EPEC)
先進国とは異なり開発途上国においては、EPEC は現在でも乳幼児胃腸炎依然として重要な原因である。ブラジルメキシコなど中南米中心とした地域乳幼児胃腸炎患者からのEPECの検出が多い。EPEC 感染症成人においても発生し、わが国においても毎年5 ~10 件のEPEC による食中毒発生している。
2 )腸管侵入大腸菌(EIEC)
EIEC 感染症一般に発展途上国東欧諸国多く先進国では比較的まれである。その媒介体は食品またはであるが、ときにはヒトからヒトへの感染もある。現在、わが国におけるEIECの分離多く海外渡航者の旅行者下痢からである。
3 )毒素原性大腸菌ETEC
ETEC途上国における乳幼児下痢症の最も重要な原因であり、先進国においてはこれらの国々への旅行者みられる旅行者下痢症主要な原因である。また、途上国においてはETEC下痢症はしばし致死的で、幼若年齢層死亡の重要な原因である。ETEC感染多く場合を介して感染であると考えられている。わが国においては下痢原性大腸菌による食中毒事例のなかではETEC による発生件数がもっとも多い。
4 )腸管凝集性大腸菌EAEC
開発途上国乳幼児下痢症患者からよく分離される。わが国ではEAEC 下痢症散発事例はあるが、食中毒集団発生事例報告少ない。比較新し群であり、自然界での分布も明らかでない。

表1. 下痢原性大腸菌分類

1.

腸管病原性大腸菌(enteropathogenic Escherichia coli ,EPEC):

 

attaching and effacing 病変を生じる。細胞接着性あり。

2.

腸管侵入大腸菌(enteroinvasive Escherichia coli ,EIEC):

 

細胞侵入性を持つ。

3.

腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli ,EHEC)

 

または志賀毒素産生大腸菌(shiga toxin-producing Escherichia coli ,STEC):
志賀毒素、エンテロヘモリシンを産生する。

4.

毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli, ETEC):

 

熱性耐熱性エンテロトキシン産生する。

5.

腸管凝集性大腸菌(enteroaggregative Escherichia coli ,EAEC):

 

EAST1 を産生する。細胞接着性あり。
EAST1=EAEC 耐熱性毒素

臨床所見
EPEC による症状下痢腹痛発熱嘔吐などで、乳幼児においてはしばしば非細菌胃腸炎ETEC 下痢症よりも重症で、コレラ様の脱水症状みられることがあるETEC による主症状下痢であり嘔吐を伴うことも多いが、腹痛軽度発熱もまれである。しかし重症例、特に小児場合コレラ同様に脱水症状陥ることがある。EPEC,ETEC 感染症における潜伏期間1272 時間であるが、それより短い場合もある。EIEC による症状下痢発熱腹痛であるが、重症例では赤痢様の血便または粘血便、しぶり腹などがみられ、臨床的に赤痢区別するのは困難である。潜伏期間一定しないが、通常1248 時間である。EAEC による症状は2週間上の持続下痢として特徴けられるが、一般に粘液を含む様性下痢および腹痛が主で、嘔吐少ない。

病原体
1)腸管病原性大腸菌(EPEC)
EPEC は培養細胞原則として限局接着localized adhesion, LA 、図1)をする。これはEPEC の持つEAF (EPEC adherence factorプラスミドよるもので、腸管粘膜付着関与する線毛bundle‐forming pilus,BFP )の形成による接着である。

下痢原性大腸菌感染症

図1.クリックすると拡大します。

その後粘膜上皮細胞への付着に伴う微細絨毛破壊アクチン重合による上皮細胞骨格の障害細胞膜陥没および破壊が生じ、いわゆるattaching and effacing (A/E)傷害引き起こす

2)腸管侵入大腸菌(EIEC)
EIEC の病原性赤痢菌のそれと同じと考えられており、粘膜上皮細胞への侵入増殖隣接細胞への伝播による上皮細胞壊死脱落潰瘍形成炎症像がみられる赤痢菌と同様120140 メガダルトンの病原性プラスミド保持する。
3)毒素原性大腸菌ETEC
ETEC粘膜上皮細胞付着するための因子(colonization factor antigen, CFA)を有し、これを介して上皮細胞接着する。粘膜上皮接着したはそこで増殖し、易熱性エンテロトキシンheat‐labile enterotoxin, LT)、耐熱性エンテロトキシンheat‐stable enterotoxin, ST)の両方、またはいずれか一方産生して下痢引き起こす
4)腸管凝集性大腸菌EAEC
EAEC培養細胞対す付着能は、EPEC とは異な接着因子プラスミドコードされるAAF線毛(aggregative adherence fimbriae)によるものであり、主として凝集接着(aggregative adhesion, AA 、図1)をするが例外もある。粘膜上皮細胞接着した後増殖し、耐熱性エンテロトキシン(EAST1)を産生して下痢惹起すると考えられている。

病原診断
患者便、原因食品から大腸菌分離し、その生化学性状血清型調べとともに毒素産生性、細胞侵入性、細胞付着性などについて病原因子調べる。病原因子検査方法については培養細胞を用いた生物学方法標的遺伝子検出による遺伝学方法があり、各病原因子プライマーを用いたPCR一般的に応用されている。EPEC については培養細胞付着性、EAF プラスミドBFPeae 遺伝子有無について調べる。EIEC では培養細胞侵入性、病原性プラスミド有無ETEC についてはLT,ST,CFA有無EAEC については、培養細胞付着性、AAF 、EAST1 の有無について調べる。

治療予防
治療基本的に赤痢サルモネラ症と同様で、対症療法抗生物質投与中心である。特にETEC 感染症場合脱水症状対す輸液が必要となる。予防対策としては、食品からの汚染避けるために、食品十分な加熱調理後の長期食品保存避けるなどの注意が大切である。また、発展途上国等への旅行では、飲水として殺菌したミネラルウオーター等を飲用するなどの心がけも必要である。ヒトからヒトへの二次感染に対しては、手洗い徹底することで予防することができる。

食品衛生法での取り扱い
食中毒が疑われる場合は、24 時間以内最寄り保健所届け出る

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
感染性胃腸炎は5類感染症定点把握疾患定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
○  診断した医師判断により、症状所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の2つの基準満たすもの
 1. 急に発症する腹痛新生児乳児では不明)、嘔吐下痢
 2. 他の原因よるもの除外
○  上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師判断により、症状所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの


国立感染症研究所細菌部 寺嶋 淳)






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