びょうげんせい‐だいちょうきん〔ビヤウゲンセイダイチヤウキン〕【病原性大腸菌】
病原性大腸菌(びょうげんせいだいちょうきん)
夏になると食中毒が増えていく。O-157に感染すると、3日程度の潜伏期間のあと、激しい腹痛や水様性下痢、鮮血状血便などの症状が出る。またO-157は体内でベロ毒素を産出すが、これによって尿毒症を併発すると、最悪の場合、患者が死亡することがある。
O-157の特徴は感染力が非常に強いことである。ごく微量の細菌からでも経口感染して広がる。特にO-157に汚染された給食などを食べて、小学校や老人ホームで集団感染することがある。
例えば1996年7月、大阪府堺市では、学校給食を食べた小学生を中心に、食中毒としては異例の約6500人がO-157に集団感染した。またこの事故で、当時小学6年生の女児が亡くなっている。
予防手段としては、調理や食事の前によく手を洗うことが大切である。また1分間75度以上の熱で加熱すると菌は死滅するので、食品に充分熱を加え、調理食品は速やかに食べること、が重要である。
O-157は大腸菌ということで、肉や魚が危険、というイメージがある。しかし過去にはカイワレ大根が菌に汚染されていた、という事例がある。野菜は水道でよく洗って調理することが、汚染防止につながる。
(2000.07.01更新)
病原性大腸菌 [Pathogenic Escherichia coli]
糞便1グラム当たり約1×1012(1兆)個の細菌がおり、固形成分の約3分の2が細菌である。糞便1グラムの中にある、1兆個の細菌の99.9%は酸素があると増殖できない偏性嫌気性菌のバクテロイデス(Bacteroides)属やプレボテラ(Prevotella)属の細菌が大部分で、残りの0.1%の約1×109(10億)個が通性嫌気性の細菌になるが、その大部分が大腸菌である。
大腸菌は菌体抗原(O抗原)と鞭毛抗原(H抗原)、莢膜抗原(K抗原)により血清型別されるが、その多くはヒトや動物には病気を起こさないで、正常細菌叢の一部としてそれぞれの場所に住み着いている。
病原性のある大腸菌は
① 腸管病原性大腸菌(EPEC)
② 腸管組織侵入性大腸菌 (EIEC)
③ 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
④ 腸管出血性大腸菌(EHEC)
⑤ 腸管付着性大腸菌(EAEC)の5つに分類される。この中で、腸管出血性大腸菌O157:H7は志賀毒素を産生し、1996年に大阪府堺市でおきた学校給食による大量食中毒で有名になったが、ほかの大腸菌も様々な毒素を産生する。
大腸菌によって起こる病気は、食中毒以外に、尿路感染症や旅行者の下痢、腹部感染症や敗血症、髄膜炎などが知られているが、近年薬剤耐性大腸菌による呼吸器系の感染症も増加している。 グラム陰性菌なので、細胞壁にリポ多糖体(LPS)を持ち、化学療法剤で治療をすると死滅し、時には内毒素ショックを起こす事もある。
飲料水として適切かどうかを判定する条件に、「大腸菌群は検出されてはならない」という項目がある。これは、大腸菌群が検出された水は、何処かで糞便が接触している可能性があり、赤痢などの水系感染の危険が高い為である。
病原性大腸菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 07:55 UTC 版)
病原性大腸菌(びょうげんせいだいちょうきん)とは、特定の疾病を起こす大腸菌菌株の総称である。毒素原性大腸菌[1]とも呼ばれる。細菌学的には、菌の表面にある抗原(O抗原とH抗原)に基づいて細かく分類される[2]。このうち、O111 (O-111とも) やO157 (オーいちごーなな、O-157とも) の抗原を持つ菌株は、100人を超える規模の食中毒をたびたび発生させ先進国で問題となっており[3]、メディアによる報道ではこの抗原名で呼称されている。
- ^ 竹田美文、「腸炎ビブリオ・毒素原性大腸菌・腸管出血性大腸菌・コレラ菌 (PDF) 」 モダンメディア 2012年10月号(第58巻10号)
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- ^ “O157等腸管出血性大腸菌感染症に注意しましょう”. 千葉県 (2018年6月19日). 2019年7月11日閲覧。
- 1 病原性大腸菌とは
- 2 病原性大腸菌の概要
- 3 注目されることとなった経緯
- 4 統計
- 5 感染対策
- 6 脚注
病原性大腸菌と同じ種類の言葉
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