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かいき-ねつ くわい― 3 【回帰熱】

スピロヘータ病原体とする伝染病シラミダニ媒介する。高熱悪寒皮膚黄変などの症状呈するが五~七日消失し、約一週間無症状期のあと再び前症状起こし、これを繰り返す届出伝染病の一。再帰熱


感染症の種類

国立感染症研究所 感染症情報センター国立感染症研究所 感染症情報センター

回帰熱

疫 学
回帰熱(relapsing fever)は、齧歯類小動物鳥類等を保菌動物とし、野生ダニ(オルニソドロス属ダニ)やシラミによって媒介される細菌スピロヘータ感染症である。アメリカ大陸アフリカ中東欧州一部患者発生報告されている。本邦では、少なくともここ数十年患者報告されていない


世界における近年事例
流行地域での感染事例米国グランドキャニオンを含むロッキー山脈古くから回帰熱の流行地域として知られている。Paul ら1)はグランドキャニオン国立公園訪れ観光客10,000名について疫学調査行い流行地域内での保菌動物接触する機会比例して患者発生する傾向があることを報告している。殊にネズミ駆除が完全でない宿泊施設内での感染が疑われる例が15例中7例をしめた。主な病原体はBorrelia hermsii と推測された。
また、1999年米国テキサス州において、野外キャンプ中での感染が疑われた例が報告されている2)。この学童キャンプ中に洞窟探検をしており、この洞窟内で採取したダニからは回帰熱病原体Borrelia turicatae が分離されている。
流行地域からの輸入事例西アフリカからオランダ帰国した女性2名が回帰熱の診断を受けた3)。
1例はガボンで、もう1例はセネガルでの感染が疑われた。いずれも病原体検出されており、感染種はBorrelia crocidurae と同定された。同様の事例はColebunders ら4)によっても報告されている。
本邦では、保菌節足動物若しくは感染した哺乳動物野鼠など)は見つかっていないことから、国内での感染機会極めて低いと考えられる。しかし、流行地域での野外活動不衛生環境での生活により感染する輸入例には、十分な警戒が必要である。

臨床症状
菌血症による発熱期、および感染持続しているものの菌血症起こしていない状態(無熱期)を数回繰り返すいわゆる回帰熱が臨床上の特徴である。致死率は、治療を行わない場合病原体種類や健康状態等によっても異なるが、数~30%といわれている。
発熱期]感染後5 ~10 日経て菌血症による頭痛筋肉痛関節痛羞明、咳などをともなう発熱悪寒みられる。このとき、髄膜炎点状出血紫斑結膜炎肝臓脾臓の腫大黄疸みられることもある。発熱期が3 ~7 日続いた後、一旦解熱無熱期に移行する。
無熱期]無熱期では血中からは検出されない。発汗倦怠感時に低血圧症斑点丘疹をみることもある。この後5 ~7 日してから、再び発熱期に入るとされている。
上記症状以外として、肝炎心筋炎脳出血脾臓破裂大葉肺炎などがみられる場合もある。

病原体ボレリア

回帰熱病原体であるボレリアには少なくとも十数種類確認されている(表1)。これらのボレリアはいずれもダニ媒介或いはシラミ媒介性で、ダニ媒介性回帰熱の場合媒介ダニ分布地域患者発生地域はほぼ一致する。他のボレリア感染症としてライム病があるが、病原体種類は回帰熱ボレリアとは異なる。

回帰熱

表1. 回帰熱ボレリアの種類媒介動物、及びその分布地域

病原体診断

病原体分離病原体ボレリアの分離培養にはBSK 培地が用いられ、発熱期の血液から病原体分離が可能である。分離培地国立感染症研究所常備している。
形態確認発熱期の血中に暗視野顕微鏡下で病原体観察できる。アクリジンオレンジ染色ギムザ染色病原体染色される。


治療予防
回帰熱には抗菌薬による治療が有効である5)。ダニ媒介性回帰熱の場合にはテトラサイクリンが用いられる。シラミ媒介性回帰熱の場合は、テトラサイクリンエリスロマイシン併用若しくはドキシサイクリンが有効とされている。小児場合エリスロマイシン推奨されている。治療にともないJarisch‐Herxheimer 反応みられることもある。
予防には、媒介ダニシラミとの接触をさけることが重要である。保菌ダニ生息する地域では、ダニ生息する洞窟廃屋などにはなるべく近寄らないこと、また特に渡航中、近くで回帰熱発生情報を得た場合には、シラミダニ刺咬に注意することが極めて重要である。
予防目的としたワクチン開発されていない

媒介動物
回帰熱ボレリアは、自然環境生息するダニ若しくはシラミに咬着されることによって媒介伝播される。
オルニソドロス属ダニアフリカ大陸アメリカ大陸欧州中近東一部自然環境中に見いだされる軟ダニで、一般家庭内に生息するダニとは異なる。吸血時間1 時間以内といわれ、咬着・脱落後気がつくことが多いであろう本邦では、オルニソドロス属ダニもしくはこれに近縁ヒメダニとして、クチビルカズキダニ、サワイカズキダニが見出されるが、限られた地域でのみ見出されていること、また、クチビルカズキダニはカリオス属とする証拠提出されていることから、これら軟ダニを介したボレリア感染可能性は低いと考えられる
シラミヒト寄生性シラミ媒介すると言われているが、詳細については不明である。一般的にシラミヒトから吸血することから、吸血されたヒトが回帰熱ボレリアを保有ていないかぎり次の感染が起こる可能性極めて低いと考えられる本邦ではシラミ刺咬症が多発しているが回帰熱は報告されていないことから、輸入例を除き、国内でのシラミ刺咬による回帰熱は今のところ心配ないと考えられる

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
回帰熱は4類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師判断により、症状所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断がなされたもの。
 ・病原体検出
  例、発熱期の血液からの分離培養
    暗視野顕微鏡下鏡検での病原体確認など
 ・病原体抗原検出
  例、スメアの観察蛍光抗体法)など


参考文献
1)Paul WS et al: Outbreak of Tickborne relapsing fever at the north rim of the Grand Canyon: evidence for effectiveness of preventive measures. Am J Trop Med Hyg. 66, 71-75, 2002.
2)Davis H et al.: Tickborne relapsing fever caused by Borrelia turicatae. Pediatr Infect Dis J.21,703-705, 2002.
3)Van Dam AP et al: Tick-Borne Relapsing Fever Imported from West Africa:Diagnosis by Quantitative Buffy Coat Analysis and In Vitro Culture of Borrelia crocidurae. J Clin Microbiol.37, 2027-2030,1999.
4)Colebunders R et al.: Imported relapsing fever in European tourists.Scand J Infect Dis.25, 533-536, 1993.
5)Long SS et al ed. Principles and Practice of Pediatric Infectious Diseases.Churchill Livingstone, 1067-1069.

国立感染症研究所細菌第一部 川端

  



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回帰熱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/11/11 12:54 UTC 版)

回帰熱(かいきねつ、relapesing fever)は、シラミまたはダニによって媒介される、スピロヘータの一種ボレリア Borrelia recurrentis を病原体とする感染症の一種。発熱期と無熱期を数回繰り返すことからこの名がつけられた。

目次

疫学

本邦では、少なくとも統計が残っている1950年以降は患者は報告されていなかったが、2010年ウズベキスタン渡航後に回帰熱に罹患した症例が奈良市で初めて報告された。

症状

上述の通り、発熱期と無熱期を数回繰り返すことが最大の特徴である。

発熱期
悪寒を伴い発熱(~40℃)し、頭痛筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、咳嗽を訴える。髄膜炎、点状出血、紫斑結膜炎肝臓脾臓の腫大、黄疸などを併発することもある。発熱期は3~7日程度続き、その後無熱期に移行する。
無熱期
解熱と共に血中の菌が検出されなくなる特徴がある。この期間中の症状としては発汗倦怠感、時に低血圧症や斑点状丘疹をみることもある。5~7日程度で再び発熱期に入る。
その他の症状
肝炎心筋炎脳出血、脾臓破裂、大葉性肺炎などを併発することがある。
致死率と死因
致死率は治療を行わない場合で数~30%程度とかなり高い。その際の死因としては不整脈を伴う心筋炎、脳出血、肝不全、解熱期の血圧低下、ショックなどが挙げられる。

治療

抗生物質による治療が有効で、状況によって以下の薬剤を使い分ける。

ダニ媒介性の場合:テトラサイクリン
シラミ媒介性の場合:テトラサイクリンとエリスロマイシンの併用、若しくはドキシサイクリン
小児の場合はエリスロマイシンが推奨される。

治療にともないヤーリッシュ・ヘルクスハイマー (Jarisch‐Herxheimer) 反応がみられることもある。

参考文献

  • Plorde, JJ (1994), “Spirochetes”, in Ryan, KJ et al, Sherris Medical Microbiology, Stamford: Appleton & Lange, pp. 385-400, ISBN 0838585418 





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