コップ座
名称:コップ座
学名:Crater
小分類:北半球
構成する主な星雲、星団、恒星:−
神話の主な登場人物:−
日本で観測できる時期:2月〜7月の約6カ月間
見ごろの季節:春(20時正中は5月上旬)
コップ座は、からす座のすぐ西にある小さな星座です。形はギリシャの昔の杯のようで、コップというより取っ手のついた優勝カップを想像させます。しかし、なにぶん4等星と5等星でできた暗い星座なので、見つけるのはなかなか難しいでしょう。
1.見つけ方のポイント
からす座のすぐ西を見ると、長々と延びるうみへび座に乗っかるようにして、杯のような形をした星の群れが見つかります。ただし、4等星と5等星ばかりなので、はっきりとした形を見出すのは難しいでしょう。本来は、小さな台形の上に、六角形を乗せたような形をしており、大きな杯(さかずき)のように見えるはずです。
2.神話の内容について
星座図を見ると、取っ手のついた豪華なカップの形をしています。古い星座でギリシャ時代に作られた星座です。
3.同じ時期に見える星座について
コップ座は、長く伸びるうみへび座に乗った格好をしています。東を見ると隣にコップ座、西を見ると隣にはろくぶんぎ座を見つけることができます。また北には、春の星座を代表するおとめ座、うしかい座、しし座、りょうけん座などを見ることができるでしょう。
4.主要都市での観測について
日本全国で観測することができますが、暗い星ばかりなので確認は難しいでしょう。
※参考文献:「星座クラブ」沼澤茂美著(誠文堂新光社)、「星のポケットブック」(誠文堂新光社)、「星座天体観測図鑑」藤井旭著(成美堂出版)、「星座・夜空の四季」小学館の学習百科図鑑、「星座博物館・春」、「同・夏」、「同・秋」、「同・冬」、「同・星座旅行」瀬川昌男著(ぎょうせい)、「星空ガイド」沼澤茂美、脇屋奈々代著(ナツメ社)
コップ座
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/14 15:53 UTC 版)
Crater | |
---|---|
属格形 | Crateris |
略符 | Crt |
発音 | 英語発音: [ˈkreɪtər]、属格:/krəˈtɪərɨs/ |
象徴 | the Cup |
概略位置:赤経 | 11 |
概略位置:赤緯 | −16 |
広さ | 282平方度 (53位) |
主要恒星数 | 4 |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 12 |
系外惑星が確認されている恒星数 | 2 |
3.0等より明るい恒星数 | 0 |
10パーセク以内にある恒星数 | 0 |
最輝星 | δ Crt(3.56等) |
最も近い星 | γ Crt;(83.85光年) |
メシエ天体数 | 0 |
流星群 | Eta Craterids |
隣接する星座 | しし座 ろくぶんぎ座 うみへび座 からす座 おとめ座 |
コップ座(コップざ、Crater)は、トレミーの48星座の1つ。暗い星座で3等級以上の明るい星はない。
主な天体
恒星
以下の恒星には、国際天文学連合によって正式な固有名が定められている[1]。
- α星:4等星。アラビア語で「(ワインを飲むための)カップ」を意味する言葉に由来するアルケス(Alkes)という固有名を持つ。
- WASP-34:10等星。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でフィリピンに命名権が与えられ、主星はAmansinaya、太陽系外惑星はHaikと命名された。
- HD 98219:8等星。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でホンジュラスに命名権が与えられ、主星はHunahpu、太陽系外惑星はIxbalanqueと命名された。
由来と歴史
少なくとも紀元前1100年頃のバビロニアの星図では、コップ座の星々は隣のからす座の星々と共にワタリガラス (MUL.UGA.MUSHEN) の中に組み入れられていたと思われる。イギリスの研究者ジョン・ロジャース (John H. Rogers) は、バビロニアの大要『MUL.APIN』において、コップ座やからす座と隣接するうみへび座が冥界の神Ningizzidaを表していたことに着目し、「うみへび座は冥界の門を表しており、うみへび座に隣り合うからす座とコップ座の星々は死の象徴であった」としている[2]。からす座とコップ座、うみへび座の組み合わせはギリシアに引き継がれ[2]、中近東から古代ギリシャや古代ローマに広がったミトラ教にも受容された[3]。
神話
紀元前3世紀のアレクサンドリアの学者エラトステネースの『カタステリスモイ (希: Καταστερισμοί) 』や帝政ローマ期初期の詩人オウィディウスの『祭暦 (羅: Fāstī) 』は、アポローンに仕えたカラスにまつわるエピソードの中でコップ座の由来について以下のような話を伝えている[4]。ゼウスに生け贄を捧げようとしたアポローンは、配下のカラスに水を汲みに行くように命じた。カラスは水を汲みに行く途中に、まだ熟していないイチジクの実を付けた木を見つけた。数日間待って熟した実をたいらげたカラスは、アリバイ工作のため泉にいた蛇を捕まえてアポローンの下に連れていき、蛇に邪魔されて水を汲めなかったと言い逃れしようとした。しかしアポローンはその嘘を見抜き、カラスに渇きの罰を与えた。そしてアポローンはこの事件を遺すため、カラス、盃と蛇を一緒に空へ置くこととした。このエピソードでは、盃はコップ座、蛇はうみへび座となっている[4]。
紀元前3世紀のギリシャの歴史家フィラルコス (Phylarchus) は、コップ座の起源となった盃について別のエピソードを伝えている。ケルソネソスの街エレウサは予期せぬ疫病に襲われた。統治者のデミフォンは疫病を止めるためにアポロンの神託を頼ったところ、高貴な生まれの乙女を神々の祭壇で毎年一人生け贄に捧げよとの神託を得た。デミフォンはくじ引きで乙女を選ぶとしたが、自分の娘はくじには含めず、他の娘を犠牲としていた。貴族の一人マストゥシウスはデミフォンのやり方に反対し、デミフォンの娘もくじ引きに参加させない限り自分の娘をくじ引きに参加させることはできない、と言った。怒ったデミフォンは、くじを引くことなくマストゥシウスの娘を選んで生け贄とした。マストゥシウスはその場では怒りを隠した平静を装ったが、数日後デミフォンの娘たちを罠に嵌めて殺し、その血をワインの壺に混ぜてデミフォンに飲ませた。そのことを知ったデミフォンはマストゥシウスとワイン壺を海に投げ込ませた。その後、彼が投げ込まれた海はマストゥシアンと呼ばれ、その港はCrater(ワインの壺)と呼ばれた。古代の天文学者は「悪行から利益を得ることはできない」という教訓を忘れられないよう、ワイン壺を星々の中に配した[5]。
脚注
出典
- ^ “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN)”. WGSN. IAU (2022年4月4日). 2022年7月3日閲覧。
- ^ a b Rogers, J.H. (1998-02). “Origins of the ancient constellations: I. The Mesopotamian traditions”. Journal of the British Astronomical Association (British Astronomical Association) 108 (1): 9-28. Bibcode: 1998JBAA..108....9R. ISSN 0007-0297.
- ^ Rogers, J.H. (1998-02). “Origins of the ancient constellations: II. The Mediterranean traditions”. Journal of the British Astronomical Association (British Astronomical Association) 108 (1): 79-89. Bibcode: 1998JBAA..108...79R. ISSN 0007-0297.
- ^ a b Ian Ridpath. “Star Tales - Corvus and Crater”. 2022年7月3日閲覧。
- ^ Condos, Theony (1997). Star myths of the Greeks and Romans : a sourcebook containing the Constellations of Pseudo-Eratosthenes and the Poetic astronomy of Hyginus. Grand Rapids, MI, U.S.A.: Phanes Press. p. 85-86. ISBN 978-1-60925-678-4. OCLC 840823460
コップ座
- コップ座のページへのリンク