くじゃく座
名称:くじゃく座(孔雀座)
学名:Pavo
小分類:南半球
構成する主な星雲、星団、恒星:ピーコック(アルファ星)/NGC6752(球状星団)
神話の主な登場人物:-
日本で観測できる時期:日本ではほとんど見えない
見ごろの季節:秋(20時正中は9月上旬)
インドなどにいる美しい羽根を持つ鳥、クジャクをなぞらえた星座です。17世紀のはじめにドイツ人のバイエルによって紹介されました。ちょうどクジャクの頭に当たる場所に、一番明るい2等星の「ピーコック」があります。このピーコックは英語でクジャクの意味です。日本では沖縄や奄美大島でさえ星座の一部が見えるだけですので、南半球へ行って見た方がよいでしょう。
1.見つけ方のポイント
全体を見るためには南半球へ行く必要があります。南半球の春ごろ(日本では秋)に南の空を見てみましょう。みなみのさんかく座の頂点が指す方向(ケンタウルス座とは反対の方向)に目を移していくと、明るい2等星ピーコックが見つかります。この星がクジャクの頭にあたります。くじゃく座はこの頭から胴体、長い尾羽と「く」の字形に曲がるように星が並ぶ星座です。ただ、ピーコックの他はあまり明るい星はありません。
2.神話の内容について
インドなどにいる鳥のクジャクを星座になぞらえたもので、神話とは関係ありません。1603年にドイツの天文学者ヨハン・バイエルが星図「ウラノメトリア」を発表したときに星座に加えられたのが最初とされます。しかし、それ以前から船乗りたちには知られていたともいわれています。
3.同じ時期に見える星座について
南半球の春(日本の秋)の星座です。日本ではなじみがありませんが、北にはインディアン座やいて座、東にはきょしちょう座やほうおう座、つる座などが見えます。また西にはさいだん座やみなみのさんかく座やさいだん座、南にははちぶんぎ座やカメレオン座が一緒に見えます。
4.主要都市での観測について
九州以北ではほとんど見えず、沖縄や奄美大島でも一部が見えるだけです。良く見るためには南の土地へ行く必要があります。
※参考文献:「星座クラブ」沼澤茂美著(誠文堂新光社)、「星のポケットブック」(誠文堂新光社)、「星座天体観測図鑑」藤井旭著(成美堂出版)、「星座・夜空の四季」小学館の学習百科図鑑、「星座博物館・春」、「同・夏」、「同・秋」、「同・冬」、「同・星座旅行」瀬川昌男著(ぎょうせい)、「星空ガイド」沼澤茂美、脇屋奈々代著(ナツメ社)
くじゃく座
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/27 13:55 UTC 版)
Pavo | |
---|---|
属格形 | Pavonis |
略符 | Pav |
発音 | [ˈpeɪvoʊ]、属格:/pəˈvoʊnɨs/ |
象徴 | 孔雀 |
概略位置:赤経 | 17h 40m 40.4s - 21h 32m 44.3s[1] |
概略位置:赤緯 | -56.59° - -74.97°[1] |
正中 | 8月25日21時 |
広さ | 377.666平方度[2] (44位) |
主要恒星数 | 7 |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 24 |
系外惑星が確認されている恒星数 | 3 |
3.0等より明るい恒星数 | 1 |
10パーセク以内にある恒星数 | 2 |
最輝星 | α Pav(1.918等) |
メシエ天体数 | 0 |
流星群 | Delta Pavonids |
隣接する星座 | はちぶんぎ座 ふうちょう座 さいだん座 ぼうえんきょう座 インディアン座 |
くじゃく座(くじゃくざ、Pavo)は、現代の88星座の1つ。16世紀末に考案された比較的新しい星座で、クジャクをモチーフとしている[1][3]。星座の北端近くにあるα星でも赤緯-56°44′と南寄りに位置しており、日本国内から全容を見ることは難しい。
主な天体
恒星
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって1個の恒星に固有名が認証されている[4]。
そのほか、以下の恒星が知られる。
- β星:見かけの明るさ3.48等の3等星[7]。くじゃく座で2番目に明るい恒星。
- δ星:見かけの明るさ3.96等のG型主系列星で4等星[8]。太陽と特徴が似た「ソーラーアナログ」の1つとされる星で、太陽系からの距離が約20 光年と、連星系でないソーラーアナログとしては太陽系に最も近くに位置する。
- SCR 1845-6357:M8.5の赤色矮星とT6の褐色矮星の連星系[9]。太陽系から約13 光年と近い距離にある。
星団・星雲・銀河
- NGC 6752:球状星団。見かけの明るさが5.4等[10]と明るく肉眼で見ることも可能で、球状星団としてはオメガ星団、きょしちょう座47に次いで全天で3番目に明るいとされる。パトリック・ムーアがアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだコールドウェルカタログで、93番に選ばれている[11]。
- NGC 6744:天の川銀河から約3,100万 光年の距離にある渦巻銀河[12]。天の川銀河も同じような姿をしているとされる[13]。コールドウェルカタログの101番に選ばれている[11]。
由来と歴史
くじゃく座は、1603年にヨハン・バイエルが出版した星図『ウラノメトリア』で世に知られるようになったためバイエルが新たに設定した星座と誤解されることがある[14]が、実際は1598年にフランドル生まれのオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが、オランダの航海士ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンが1595年から1597年にかけての東インド航海で残した観測記録を元に、オランダの天文学者ヨドクス・ホンディウスと協力して製作した天球儀にクジャクの姿を描き、オランダ語の星座名 Pau とラテン語の星座名 Pavo をそれぞれ記したことに始まる[3]。そのため近年はケイセルとデ・ハウトマンが考案した星座とされている[15]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Pavo、略称は Pav と正式に定められた[16]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない[注 1]。
中国
現在のくじゃく座の領域は、三垣や二十八宿には含まれなかった。この領域の星々が初めて記されたのは明代末期の1631年から1635年にかけてイエズス会士アダム・シャールや徐光啓らにより編纂された天文書『崇禎暦書』であった[17]。この頃、明の首都北京の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊あり、南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものとなっている[17]。これらの星座はそのまま清代の1752年に編纂された天文書『欽定儀象考成』に取り入れられており、くじゃく座の星も「孔雀」という星官とされた[17]。
呼称と方言
日本では明治末期には「孔雀」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[18]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「孔雀(くじゃく)」として引き継がれ[19]、1944年(昭和19年)に天文学用語が見直された際もこの呼称が継続して採用された[20]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[21]とした際に、Pavo の日本語の学名は「くじゃく」と改められた[22]。この改定以降は「くじゃく」が星座名として継続して用いられている。
現代の中国でも「孔雀座」と呼ばれている[23]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年2月27日閲覧。
- ^ “星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
- ^ a b Ridpath, Ian. “Pavo”. Star Tales. 2023年2月27日閲覧。
- ^ a b Mamajek, Eric E.. “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年2月27日閲覧。
- ^ "alp Pav". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年12月13日閲覧。
- ^ "bet Pav". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月8日閲覧。
- ^ "del Pav". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年12月13日閲覧。
- ^ "SCR J1845-6357". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年12月13日閲覧。
- ^ Frommert, Hartmut (2000年7月30日). “NGC 6752”. Spider's Homepage. 2023年2月27日閲覧。
- ^ a b Frommert, Hartmut (2006年8月22日). “The Caldwell Catalog”. SEDS Messier Database. 2023年2月27日閲覧。
- ^ "NGC 6744". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月27日閲覧。
- ^ “Wide Field Imager view of a Milky Way look-alike, NGC 6744”. www.eso.org (2011年6月1日). 2023年2月27日閲覧。
- ^ 原恵 『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、26-30頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
- ^ 山田陽志郎「星座」 『天文年鑑 2013年版』誠文堂新光社、2012年11月25日。ISBN 978-4-416-21285-1。
- ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年2月27日閲覧。
- ^ a b c 大崎正次「清時代の星座」 『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、106-114頁。ISBN 4-639-00647-0。
- ^ 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、11頁、ISSN 0374-2466。
- ^ 東京天文台 編 『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁 。
- ^ 学術研究会議 編「星座名」 『天文術語集』1944年1月、10頁。doi:10.11501/1124236 。
- ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- ^ 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、158頁、ISSN 0374-2466。
- ^ 大崎正次「辛亥革命以後の星座」 『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、115-118頁。ISBN 4-639-00647-0。
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