難民 難民のイメージとラベル

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難民

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 05:53 UTC 版)

難民のイメージとラベル

『「難民である」というのは例えば「日本人である」「である」というような生まれ持った属性ではなく、社会がつけたカテゴライズであって、本人のアイデンティティーを表すものではない。』と東京大学大学院のとある研究者がコンゴ民主共和国における紛争暴力をテーマにした映画『女を修理する男』の上映会・トークショー「私たちは私たちの(無)関心と どう付き合うか」の中で述べている(難民支援協会との共催)[25]

オックスフォード大学の『難民研究ジャーナル』[26]でR・ゼッターが「最も強力なラベルのひとつ」と述べているように、「難民」ラベルの持つ効力が人道支援の必要性を強力に世界へ訴えかける一方、ラベルを援用した実務家らによる人権ビジネスへの加担も指摘されている。そのラベル効力で得た膨大な支援物資や活動費は、人類学者B・E・ハレル=ボンド[27]の言うところの「押し付け援助 (Imposing Aid)」へと繋がり、逆に難民の労働意欲や生活維持力を減退させ、難民キャンプ内をただの「要求集団化」させてしまう[28]

難民の発生地域と数値

下掲した国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による2023年6月14日公表『Global Trends FORCED DISPLACEMENT IN 2022』[29]の統計では、2022年12月31日時点で世界における難民庇護申請者の合計(下表の 難民、難民と同等の状況に置かれている者、庇護申請者、その他国際的保護を要する者の総計)は約4,007万人に上る。国内避難民や無国籍者などを含めた場合、約1億1,256万人となり、2022年5月以降は、1億人以上いる状況が続いている。

地域別では、中東を含めたアジアが最大の難民(41.7%)を有しており、次いでヨーロッパ(29.7%)、アフリカ(25.7%)の順である。ヨーロッパの場合、2022年ロシアのウクライナ侵攻によって発生したウクライナ出身難民の影響が大きい。

それに対して、庇護申請者では北アメリカ(35.6%)が最も多く、次いで南アメリカ(23.6%)、ヨーロッパ(17.6%)の順となる。

国内避難民や無国籍者などを含めた総数では、アフリカ(35.3%)が最も多く、次いで、アジア(30.4%)、南アメリカ(16.7%)の順となる。南アメリカの場合、国外に避難したベネズエラ人達の影響が大きい。

2022年度版 グローバル・トレンド:難民、帰還民、国内避難民そして無国籍
地域名 難民(A) 難民と同等の
状況に置かれている者(B)
A+B 庇護申請者 その他、
国際的保護を
要する者
帰還民
(難民)
国内避難民 帰還民
(国内避難民)
無国籍 その他 合計
アフリカ 754万5,579 0 754万5,579 60万797 0 28万657 2,530万3,689 464万4,127 103万5,763 28万2,252 3,969万2,859
アジア 899万9,292 327万2,627 1227万1,919 56万9,605 0 5万8572 1,828万9,768 106万3,848 284万1,377 40万7,627 3,426万4,132
ヨーロッパ 700万6,271 172万1,827 872万8,098 95万5,608 0 25 622万613 191 53万7,649 52万4,870 1,689万8,174
南アメリカ 27万2,860 20万 29万2,860 128万953 503万8,921 6 741万5,493 0 283 479万4,885 1,882万3,396
北アメリカ 43万3,002 7万4,780 50万7,782 193万7,506 17万8,535 0 0 0 4,802 2,313 263万181
オセアニア 6万1,795 5,000 6万6,795 9万4,460 0 0 9万1,634 0 8,318 2,500 25万5,389
総数 2,431万8,799 509万4,234 2,941万3,033 543万8,929 521万7,456 33万9,260 5,732万1197 570万8,166 442万8,192 601万4,447 1億1,256万4,131
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  • 注1 - 難民:紛争や迫害により自国を離れることを余儀なくされた人々。
  • 注2 - 庇護申請者:出身国外に逃れ、国際的な保護を受けながら難民認定を待っている人々。
  • 注3 - その他、国際的保護を要する者:出身国外に移動を強いられ、他のカテゴリー(難民、難民と同等の状況に置かれている者、庇護申請者)で報告されていないが、国際的な保護を必要としている可能性が高い人々。全員が国外に避難したベネズエラ人である。なお必要とする保護の内容は、強制送還に対する保護や、一時的または長期的な基本サービスへのアクセスが含まれている。
  • 注4 - 国内避難民:自国内で移動を強いられた人々。3つのグループの中で最も数が多い。
  • 注5 - 国内避難民は同様の状況に置かれた者も含む。
  • 注6 - 無国籍者は、世界95カ国の政府、他機関の集計に基づいた2022年末時点の人数である。しかし、多くの国で無国籍者に関するデータがないため、実際の数はさらに多いと推測される。
  • 注7 - 総数は、難民+庇護申請者+その他、国際的保護を要する者+国内避難民+無国籍者+その他-(難民と国内避難民の帰還民)+パレスチナ難民
  • 出典:Global Trends FORCED DISPLACEMENT IN 2022 [29]、数字で知る難民・国内避難民の事実[30]

「Global Trends FORCED DISPLACEMENT IN 2022」とUNHCR日本支部ホームページに記載の「数字で知る難民・国内避難民の事実」によれば、難民に関して、以下の事実を重要なポイントとしている [29][30]

  1. 約74人に1人、全世界人口の1%以上が難民であること。
  2. 2018年から2022年の間に、難民から生まれた子供が約190万人誕生したこと。
  3. 難民4人につき3人(76%)が、中低所得国に逃れていること。
  4. 難民の70%が、近隣国に逃れていること。トルコは約360万人近くの難民を、イランは約340万人の難民を受け入れている。
  5. 無国籍の難民が約442万人存在し、ミャンマーから逃れた人々が多くいること。
  6. 18歳未満の未成年難民が、難民全体の約40%を占めていると推計されること。
  7. 2022年ロシアのウクライナ侵攻は、第二次世界大戦終結以後で最も急速かつ最大規模の難民危機を引き起こした。2022年末時点で、国内避難民が約590万人、近隣諸国や国外に避難した難民の約570万人で合計約1,160万人のウクライナ人が依然として難民となっている。
  8. 災害による国内避難民は約3,260万人が報告され、2022年末時点で約870万人が避難生活を続けていること。2022年の新規難民及び国内避難民全体の半分以上 (約54%) を災害に関連した国内避難民であった。

次に、国別でみた場合、2022年末時点で最も多い難民(難民と同等の状況に置かれている者も含む)の出身国は、シリア(654万7,818人)である。次いで、ウクライナ(567万9,880人)、3番目がアフガニスタン(566万1,675人)であり、4番目が南スーダン(229万4,983人)、5番目がミャンマー(125万3,111人)であった。上位3カ国で約60.8%を占め、南スーダン・ミャンマーを含めた場合、約72.9%となる[29]。特にアフガニスタンとウクライナは、前年(2021年)から急激に増加している[31]

国内避難民や無国籍者などを含めた総数では、最も多い国は、シリア(1,379万5,342人)である。次いで、ウクライナ(1,218万77人)であり、 その次がベネズエラ(997万7,101人)、4番目がアフガニスタン(954万3,505人)であり、5番目はコンゴ民主共和国(785万3,031人)であった。上位3カ国で約31.9%を占め、アフガニスタンとコンゴ民主共和国を含めた場合、約47.4%となる。また、シリアとウクライナとコンゴ民主共和国は、国内避難民の方が多い[29]。但し、ベネズエラ出身難民の場合は、約半分が「その他、国際的保護を要する者」に分類されていることに留意する。

国別でみた国外へ避難した難民の出身国と避難先の国で見た場合、2022年末時点で、最も多かったのが、シリアからトルコへ避難している人は353万5,898人であり、約3人に1人近くがUNHCRにより支援された。次いで、アアフガニスタンからイランの341万3,249人であり、約3人に2人がUNHCRにより支援された。その次が、ベネズエラからコロンビアであり、 245万5,243人であり、約11人に2人が支援された。

また、世界の難民(難民及び難民と同等に置かれた者を含めた数)及びその他、国際的保護を要する者を合わせた数全体では、2022年で3,463万489人である。その内UNHCRに支援されたのは、全体の約48.8%(3,463万389人中1,689万7,084人[注釈 11])であった[32]

2022年末時点の難民出身国・避難先国上位10位(庇護申請者除く)[32]
難民出身国 避難先国 難民数 UNHCRが支援した
難民数
 シリア  トルコ 3,535,898 1,180,000
 アフガニスタン  イラン 3,413,249 2,290,166
 ベネズエラ  コロンビア 2,455,243 436,686
 アフガニスタン  パキスタン 1,743,278 1,743,278
 ウクライナ  ロシア 1,275,315 183,480
 ウクライナ  ドイツ 1,002,999 -
 ベネズエラ  ペルー 974,580 143,969
 ウクライナ  ポーランド 958,147 -
 ミャンマー  バングラデシュ 952,365 952,365
 南スーダン  ウガンダ 854,242 854,242
  • 難民数は、難民及び難民と同等に置かれた者を合計した数である。
  • この表でのベネズエラ出身難民は、難民だけでなく、その他国際的保護を要する者も含めた数である。
  • ロシアへ避難したウクライナ出身難民は、難民または一時亡命資格を認められた6万5,400人のウクライナ人に加え、2022年に他の滞在形態で記録されたウクライナ人も含まれている。
  • 2022年にイラン政府は、2021年に起きたアフガニスタンのターリバーン攻勢後に新たにイランへ来た人々や不法滞在者を含むイラン在住アフガニスタン出身者の人口の再集計を実施している。なお、イラン政府の報告によれば、約260万人のイラン在住アフガニスタン人が難民と同様の状況にあると報告されている。

難民の種類

上述した通り難民には様々な形態があり、また国連機関、国家当局、国際NGOが捉える難民観に差異があるため、各組織を貫いて難民を理解するには無理が生じている。以下、様々な難民の類型を二項対立で示したが、二項のはざまに布置された人々や、難民に酷似しながら類型に含められない人々も存在している。

  • 「真の難民 (Bona Fide Refugee)」と「偽の難民 (Mala Fide Refugee)」
  • 「伝統難民 (Traditional Refugee)」[注釈 12]と「新難民 (New Refugee)」[注釈 13]
  • 「避難民 (DP: Displaced Person)」と「国内避難民 (IDP: Internally Displaced Person)」
  • 「条約難民 (Convention Refugee)」と「非条約難民 (Non-convention Refugee)」
  • 「自発的難民 (Voluntary Refugee)」と「非自発的難民 (Involuntary Refugee)」
  • 「政治難民 (Political Refugee)」と「経済難民 (Economic Refugee)」
  • 「法定難民 (Statutory Refugee)」と「マンデート難民 (Mandate Refugee)」[注釈 14]
  • 「海路難民 (Boat People)」と「空路難民 (Air People)」
  • 「庇護申請者 (Asylum Seeker)」と「支援対象者 (POC: People of Concern)」
  • 「強制移動民 (Forced Migrant)」と「自発移動民 (Voluntary Migrant)」[28]
  • 「事前避難型難民 (Anticipatory Refugee Movement)」と「事後避難型難民 (Acute Refugee Movement)」[33]

注釈

  1. ^ 外務省はパンフレット「難民条約」を、「難民の地位に関する条約」と「難民の地位に関する議定書」に加入時に発行[8]、2004年3月[9]に増刷されている(A5判 68ページ)。改訂版は巻末に「難民の地位に関する条約」「難民の地位に関する議定書」のほか、参考資料として「条約及び議定書の締約国一覧」「条約と国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所規程との関係」が付属してある[10]
  2. ^ 日本における法令番号は、「昭和56年条約第21号」。発効は、1982年1月1日
  3. ^ ノン・ルフールマン原則:(避難民の)送致・送還の禁止の原則。
  4. ^ 緒方貞子は1991年から2000年の間、第8代国連難民高等弁務官を3期務め、「金の鳩賞」国際賞[20]を受賞。
  5. ^ 日本における法令番号は、「昭和57年条約第1号」。発効は、1982年1月1日。
  6. ^ 出入国管理及び難民認定法」第2条第3号の2[21]において難民の用語が「第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう」と定義されており、当然に実運用も同一である[22]
  7. ^ 災害難民は多くの場合、被災者が国内の別の地域に移動するため国内避難民と呼ばれることがある。
  8. ^ 避難民 (DP):Displaced Person。
  9. ^ 庇護申請者 (Asylum Seeker):UNHCRによれば、自国を追われ、他国で難民としての地位と保護を求める人々を言う。UNHCRが難民と認定した場合でも、第一次庇護国の政府が難民と認めない場合がある。
  10. ^ 国内避難民 (IDP):Internally Displaced Person) — 難民は、国境を越えて初めて認定される。しかし、UNHCRによれば「国内に留まりながらも故郷を追われ、難民と同じような境遇にある人々」が多数存在するとしている。
  11. ^ 避難先の国で、避難した同じ出身国の1000人以上の難民グループを対象としており、全世界の難民(同等に置かれている者も含む。)の約99%をカバーしている。
  12. ^ 伝統難民:難民条約の定義に該当する難民のこと。政治難民と同義。
  13. ^ 新難民:東西冷戦終結後、世界各地で顕在化した民族紛争を起因として生じる難民のこと。
  14. ^ マンデート難民:条約難民だけでなく、UNHCRが独自の解釈で認めた難民のこと (生命・身体の保全・自由に対する重大で無差別な脅威、なおかつ一般に広まる暴力や公的秩序に対する深刻な混乱から生じる脅威の理由によって、本国外におり本国に帰還できない国際的保護を要する者)。
  15. ^ ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和20年勅令第5412号)
  16. ^ 難民調査官の指名を受けるには[59]、「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号)第2条第11号、第12号及び第12号の2の規定に基づいて定められた「難民調査官を指定する訓令」第3項に従い(平成13年1月6日施行)、入国審査官であり行政職俸給(一)4級以上[60]とされている。
  17. ^ 初年度の2010年受入れは5家族27名として[63][64]、一行は体調不良の2家族9名を除いて予定の2010年9月28日に来日した。同2家族も遅れて2010年10月13日に到着[65]
  18. ^ 1997年、当時の南アフリカ共和国大統領ネルソン・マンデラは「アフリカ難民の日」(現「世界難民の日」)である6月20日にアフリカ各国に協力を訴え、難民や避難民が発生する紛争解決を呼びかけている。また同氏は2001年、ブルンジ内戦の平和的解決を進める課程でタンザニア西部の難民キャンプを訪れ、ブルンジ難民の声に耳を傾けた[77]

出典

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  12. ^ 昭和27年02月27日 参議院地方行政委 鈴木一の発言「一昨年の十月から入国管理庁が発足いたしまして約一年間の間に三千百九十名という朝鮮人を送り帰しておる。今の密入国の大半は、九〇%は朝鮮人でございます」
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