外交 多国間外交

外交

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/11 15:51 UTC 版)

多国間外交

上記のような2国間外交のみならず、国際会議国際機関などで多くの国家が集まり共通の議題について外交を行う、いわゆる多国間外交も盛んに行われている。多国間外交は19世紀の列国間の会議外交に淵源を持つが、第一次世界大戦の勃発とともに協商国側で定期的な会議が頻繁になり、大戦終結後も対象を広げて重要な外交の手段となっていった[43]。第二次世界大戦後には国際機関の数は激増し、多国間外交はより重要となっていった[44]。こうした多国間外交の場として最も大きなものは国際連合であるが、このほかにも世界銀行世界保健機構などといった専門分野を持つ国際機関や、東南アジア諸国連合ヨーロッパ連合などの地域協力機構、主要国首脳会議などの国際会議など、さまざまな多国間外交の場が存在する。

外交官以外による外交

首脳外交

職掌としての外務省・外交官以外にも、様々な立場から外交が行われている。各国政府のトップが直接会うことで外交を行う、いわゆる首脳外交もその一つである。

こうした首脳外交は、ナポレオン後のヨーロッパの体制を定めるために列国の首脳が一堂に会した1815年のウィーン会議を嚆矢とする[45]。20世紀に入ると交通・通信手段の改善によって首脳会談のコストが下がり、頻繁に行われるようになっていった[46]。最も重要なのは1975年に開始された主要国首脳会議であり、この他にもAPEC首脳会議など様々な首脳会議が開催されている。

こうした首脳会談、特に定期化した首脳会談においては裏方である外交官や官僚たちによって事前の折衝がほぼ終了しており、トップによる直接対話というメリットが薄れているという指摘もあるが、冷戦終結をもたらした1989年マルタ会談のように、大きな成果をもたらすこともある[47]

また、直接面会するだけではなく、2か国の首脳間の直通電話回線(ホットライン)を設置して緊急時に対話を行うこともある[48]

議員外交など

議員による議員外交や、地方公共団体の長あるいは議員による外交活動も盛んに行われている。

欧州(特に欧州連合とりわけストラスブール)は議員外交が盛んな場所として知られており、欧州各国の密接な政治結合は行政府による公的外交以外にも各国議会の議員団が展開する公的・準公的外交による調整や人的ネットワークに依存するところがある。

他に、ロビー活動も活発に行われる。

人材交流・民間外交

各国の行政機関における行政官の人材交流も盛んであり、各職掌・省庁ごとに研究員や調査官などの名目で行政官同士の人事交流が行われることがある。

軍事面では駐在武官の伝統があり、主要国の大使館には大使館付きの駐在武官が派遣され、軍事面での外交調整における実務面での調整や人的ネットワーク作りに従事している。財務省、あるいは各国中央銀行など公的機関の人材交流も盛んに行われている。

人事交流は相手先国の研究所や大学に研究者として派遣する名目で行われることも多い。

各国の外交

アメリカの外交

イギリスの外交

中国の外交

日本の外交

日本においては、日本国憲法第73条により、内閣が外交関係を処理する。実際の対外的事務は外務省設置法により、外務大臣を長とする外務省が所掌する。

日本では、「日本は外交が下手」という言説がよくある[注釈 10]

日本における議員外交

日本でも国会議員の海外視察などを通じ議員外交が展開されているが、鈴木宗男元議員の対露外交や山崎拓元議員の北朝鮮外交などのいわゆる「二元外交」が問題視されたことがある。国会議員は改選のたびに議員としての地位が不安定となるため、2009年の衆議院選挙のように大規模な現職議員の落選が発生すると、従来の議員外交のネットワーク・コネクションが大量に失われるという弊害がある。

日本における人材交流・民間外交

国交のさかんでない第三国においては現地で活動している日系人や日系企業、NGOなどが外交活動の足がかりになることがあり民間外交と呼ばれることがある。貿易振興機構や観光協会のような行政法人、外国語学校、あるいはブラジル日本文化福祉協会、サンパウロ日伯援護協会、ブラジル都道府県人会連合会などといった日系日本人会、あるいは日中友好協会、日中文化交流協会などといった民族団体などが重要な役割を果たすことがある。


注釈

  1. ^ 5世紀から6世紀のものとされる稲荷山古墳出土鉄剣に最古の日本語文字が刻まれている。北魏の僧が起こした修験道の目的の一つは当時の鉱山開発であった可能性もある。
  2. ^ 一方、欧州ではハプスブルク家が勢力を伸ばしていた。
  3. ^ オランダ東インドは1624年に明国台湾本島に安平古堡英語: Fort Orange)を設置しここをアジア貿易の拠点とした(のちの鄭成功の革命により一掃された)。
  4. ^ サトウは論文『英国策論』で明治維新を推進した。
  5. ^ 幕府がアメリカ公使を通じて発注した数隻の軍艦は、南北戦争の勃発や下関戦争の勃発による輸出差止めにより、明治維新が終わるまで日本に届かなかった。
  6. ^ 地球の表面積のうち陸地部分は約28.9%である。
  7. ^ 『国際知識及評論』は真珠湾攻撃が行われた1941年12月に廃刊。
  8. ^ 政府は強制的に殆どの綿花原料を輸出用等の綿製品製造に割り当てた[27]
  9. ^ 『外交評論』はのち『国際連合』として1948年まで、『世界とわれら』として1949年まで発行された。『日本外交文書』は1952年からは外務省編となり、現在も発行されている。他、『国連ジャーナル』も発行されている。
  10. ^ 論じた例:辻雅之 (2006年6月5日). “日本の外交、やっぱり「三流」?”. ビジネス・学習. All About. 2011年11月24日閲覧。

出典

  1. ^ [1]
  2. ^ [2]
  3. ^ 外交[要ページ番号]
  4. ^ a b c d e f g h 『日本大百科全書』【外交】
  5. ^ a b 「国際政治学をつかむ」p166 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
  6. ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p52 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
  7. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p59 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  8. ^ 「近代ヨーロッパへの道」p224-225 成瀬治 講談社学術文庫 2011年4月11日第1刷
  9. ^ 「国際政治学をつかむ」p167 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
  10. ^ 「国際政治学をつかむ」p170-171 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
  11. ^ 「国際政治学をつかむ」p30-31 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
  12. ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p154-155 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
  13. ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p71-72 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
  14. ^ a b 「国際政治学をつかむ」p171 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
  15. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p84 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  16. ^ 「政治学の第一歩」p216 砂原庸介・稗田健志・多湖淳著 有斐閣 2015年10月15日初版第1刷
  17. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p130-132 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  18. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p164-165 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  19. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p166-169 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  20. ^ 日本の貨幣史
  21. ^ 香川敬三『岩倉公實記(上卷)』、62頁。1906年。
  22. ^ 国立公文書館「初の外国人受賞者」
  23. ^ 清水雅大「ナチズムと日本文化:― W・ドーナートにおける日独文化提携の論理 ―」『現代史研究』第61巻、現代史研究会、2015年、 1-15頁、 doi:10.20794/gendaishikenkyu.61.0_1ISSN 0386-8869NAID 130007412618
  24. ^ 帝国弁護士会
  25. ^ 大阪毎日新聞[3]。1918年(要登録)[リンク切れ]
  26. ^ 「日米新協定を綿業界は好感」 神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 綿織物業(2期第1-029) 大阪毎日新聞 1937.1.23 (昭和12)。
  27. ^ 「自主から強権へ統制完成に驀進」。 1938年6月。 神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 綿織物業(08-030) 大阪毎日新聞 1938.6.29 (昭和13)
  28. ^ 日本外交協会公式サイト
  29. ^ 政策研究大学院大学東京大学東洋文化研究所「日米関係資料集」
  30. ^ 「政治学の第一歩」p217 砂原庸介・稗田健志・多湖淳著 有斐閣 2015年10月15日初版第1刷
  31. ^ 「国際政治の基礎知識 増補版」p325-326 加藤秀治郎・渡邊啓貴編 芦書房 2002年5月1日増補版第1刷
  32. ^ 軍事力と現代外交 歴史と理論で学ぶ平和の条件[要ページ番号]
  33. ^ 国益」『国際政治事典』[要ページ番号]
  34. ^ 第14回 外交とは何か (PDF)”. 2011年11月24日閲覧。
  35. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p183-187 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  36. ^ 「国際政治の基礎知識 増補版」p260-264 加藤秀治郎・渡邊啓貴編 芦書房 2002年5月1日増補版第1刷
  37. ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p55-57 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
  38. ^ a b 「現代国際関係の基礎と課題」内第4章「国際関係の法制度」瀬川博義 p79 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  39. ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p94-95 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
  40. ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p97 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
  41. ^ 「現代国際関係の基礎と課題」内第4章「国際関係の法制度」瀬川博義 p80 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  42. ^ 「国際関係・安全保障用語辞典 第2版」p339 小笠原高雪・栗栖薫子・広瀬佳一・宮坂直史・森川幸一編 ミネルヴァ書房 2017年11月20日第2版第1刷
  43. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p120-121 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  44. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p156 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  45. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p71 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  46. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p159 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
  47. ^ 「国際政治の基礎知識 増補版」p315 加藤秀治郎・渡邊啓貴編 芦書房 2002年5月1日増補版第1刷
  48. ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p164 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷






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