外交
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/11 15:51 UTC 版)
概説
- 定義
外交という言葉は外国との交際に関わるさまざまな政治的活動の総称であるが、その内容には二つの意味に大きく分類することができると考えられている。ハロルド・ニコルソンの『外交』によれば、それは「外交交渉」という技術的側面と、「外交政策」という政治的側面である。外交という言葉は両者の全く性質が異なる概念を包括しており、使い分けられるべきものである[3]。
日本大百科全書にも同様の説明がされており『外交には、対外「政策」を決定する面と、決定された政策を相手国との「交渉」によって実現する面との両面がある。』[4]とされている。そして「外交とは両面の統一である」と解説している[4]。
- 政府による外交
一般に「外交」と言うと第一義的には国家の組織や政府要人によるものを指している。
典型的には国を代表する外交官や大統領や首相などが直接的な外交を行っている。
一般に国家には、外交を担当する行政機関が設置されている。名称、翻訳名称はさまざまであり、欧州のものは欧州対外行動局、アメリカのものはアメリカ合衆国国務省、日本のものは外務省、台湾は外交部、韓国も外交部、中国も外交部など。ロシアのものはロシア外務省と翻訳することが一般的である。
外交戦略に基づき立案される政策を外交政策、または実際に二国間ないし多国間で行われる具体的な国家間交渉を外交交渉という。
- 非政府系の外交の存在
国際社会一般、あるいは国際法において正当な外交の主体とは主権国家であり、すなわちその国を代表する政府が担うことを基本としている。
ただし昨今では一議員やNGO関係者が外国要人などと会談する、いわゆる民間外交や議員外交も盛んになっている。このような外交の場はセカンドトラックと呼ばれる。国家間の政府外交のみならず民間外交、議員外交、あるいはNGOなどによるトラックII外交など、多様な主体が行う国際交流ないし交渉も含めることがある。これも国家間の関係に結果として大きな影響力を持ち、関係の土壌を作る上で重要であるが、やはり国家の正規の機関の政策の影響力のほうがはるかに大きいので「外交」は第一義的には政府系のものを指すという状況に変わりはない。というのは、今日の国際社会においては各国の政策決定者や政府だけが正式の外交交渉の権限をもっていて、それによって国家間の関係を大きく変更することが可能だからである。
- 秘密外交の存在
また外交は古来から秘密裏にも行われてきており、また現代においてもその交渉をしばしば国民には隠して秘密裏に行う、ということが行われている。デリケートな交渉過程が明らかになることによって外交交渉の運用そのものが制限されることを避けるためのものであり、外交上の慣習であり、特に国際法違反というわけではない。なお秘密裏に結ぶ条約を秘密条約(en:Secret treaty)と言う。
ただし、機密文書であっても一定の年月のあとで公開されることになっている国も多いので、後の時代になって秘密外交や秘密条約が存在していたことが明らかになり、そこで誤った判断や愚かな条約が締結されていたなどと発覚すると国民から政府に対して大きな非難が沸き起こることにもなりがちである。例としては日米核持ち込み問題などがあげられる。
- 諸活動と情報収集
国際状況に適合した適切な外交が行えるかどうかは情報収集にかかっている[4]。
たいていの国が、外交を担当する政府系組織を設置しており、関係のある国に大使館や領事館などの在外公館を設置し外交官を常駐させて、外交に関する諸活動を行っている。外交官はさまざまな情報収集も行う。
だが、外交担当の人々が質の高い情報を大量に集めたとしても、政策決定者の側にはバイアス(政策決定者の心にある、特定のイメージ)があり、せっかくの情報にフィルターをかけてしまう[4]。政策決定者の側に強いバイアスがあると国際的な現実から目をそむけた不健全な外交となりがちで、バイアスが少ないと健全な外交となる傾向がある[4]。
注釈
- ^ 5世紀から6世紀のものとされる稲荷山古墳出土鉄剣に最古の日本語文字が刻まれている。北魏の僧が起こした修験道の目的の一つは当時の鉱山開発であった可能性もある。
- ^ 一方、欧州ではハプスブルク家が勢力を伸ばしていた。
- ^ オランダ東インドは1624年に明国の台湾本島に安平古堡(英語: Fort Orange)を設置しここをアジア貿易の拠点とした(のちの鄭成功の革命により一掃された)。
- ^ サトウは論文『英国策論』で明治維新を推進した。
- ^ 幕府がアメリカ公使を通じて発注した数隻の軍艦は、南北戦争の勃発や下関戦争の勃発による輸出差止めにより、明治維新が終わるまで日本に届かなかった。
- ^ 地球の表面積のうち陸地部分は約28.9%である。
- ^ 『国際知識及評論』は真珠湾攻撃が行われた1941年12月に廃刊。
- ^ 政府は強制的に殆どの綿花原料を輸出用等の綿製品製造に割り当てた[27]。
- ^ 『外交評論』はのち『国際連合』として1948年まで、『世界とわれら』として1949年まで発行された。『日本外交文書』は1952年からは外務省編となり、現在も発行されている。他、『国連ジャーナル』も発行されている。
- ^ 論じた例:辻雅之 (2006年6月5日). “日本の外交、やっぱり「三流」?”. ビジネス・学習. All About. 2011年11月24日閲覧。
出典
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ 『外交』[要ページ番号]
- ^ a b c d e f g h 『日本大百科全書』【外交】
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- ^ 「近代ヨーロッパへの道」p224-225 成瀬治 講談社学術文庫 2011年4月11日第1刷
- ^ 「国際政治学をつかむ」p167 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
- ^ 「国際政治学をつかむ」p170-171 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
- ^ 「国際政治学をつかむ」p30-31 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
- ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p154-155 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
- ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p71-72 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
- ^ a b 「国際政治学をつかむ」p171 有斐閣 2009年11月30日初版第1刷
- ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p84 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
- ^ 「政治学の第一歩」p216 砂原庸介・稗田健志・多湖淳著 有斐閣 2015年10月15日初版第1刷
- ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p130-132 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
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- ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p166-169 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
- ^ 日本の貨幣史。
- ^ 香川敬三『岩倉公實記(上卷)』、62頁。1906年。
- ^ 国立公文書館「初の外国人受賞者」。
- ^ 清水雅大「ナチズムと日本文化:― W・ドーナートにおける日独文化提携の論理 ―」『現代史研究』第61巻、現代史研究会、2015年、 1-15頁、 doi:10.20794/gendaishikenkyu.61.0_1、 ISSN 0386-8869、 NAID 130007412618。
- ^ 帝国弁護士会。
- ^ 大阪毎日新聞[3]。1918年(要登録)[リンク切れ]
- ^ 「日米新協定を綿業界は好感」 神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 綿織物業(2期第1-029) 大阪毎日新聞 1937.1.23 (昭和12)。
- ^ 「自主から強権へ統制完成に驀進」。 1938年6月。 神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 綿織物業(08-030) 大阪毎日新聞 1938.6.29 (昭和13)
- ^ 日本外交協会公式サイト。
- ^ 政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所「日米関係資料集」。
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- ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p55-57 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
- ^ a b 「現代国際関係の基礎と課題」内第4章「国際関係の法制度」瀬川博義 p79 建帛社 平成11年4月15日初版発行
- ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p94-95 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
- ^ 「大使館国際関係史 在外公館の分布で読み解く世界情勢」p97 木下郁夫 社会評論社 2009年4月25日初版第1刷
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- ^ 「国際関係・安全保障用語辞典 第2版」p339 小笠原高雪・栗栖薫子・広瀬佳一・宮坂直史・森川幸一編 ミネルヴァ書房 2017年11月20日第2版第1刷
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- ^ 「外交 他文明時代の対話と交渉」p164 細谷雄一 有斐閣 2007年12月30日初版第1刷
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