ドナルド・トランプ 発言

ドナルド・トランプ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 03:28 UTC 版)

発言

  • 2005年5月19日、911テロで崩壊した旧ワールドトレードセンターの跡地計画について、「モニュメント性の高い建築を作る案よりも、911テロで崩壊した旧ワールドトレードセンターよりも更に大きな『ツインタワーII』として再建しよう」と語っている[813]
  • 2016年5月5日、大統領選挙共和党の候補者となった時期に、「ヒスパニックを愛している(I love Hispanics!)」などとツイッター上で発言した[814]
  • 2016年7月21日、大統領選挙を見据えて、「我が国で何が起こっているかを見てほしい。人々が警察を冷酷に殺すような状態で、どのように我々は人に何かを教えることが出来るのか」と述べ、「他の国のふるまいを矯正しようとする前に米国は自らを秩序のもとに置かねばならない」とする考えを示したという[815]
  • 2024年のスーパーチューズデーでは「ディープステート(闇の政府)と闘う」という陰謀論を連発した[816][817]

バラク・オバマに対する攻撃

保守政治活動協議会で講演するトランプ(2014年

2011年にはハワイ州が発行したバラク・オバマ大統領の簡易な出生証明書("Certification of Live Birth")に疑問を呈し、「オバマは実際はハワイではなくアフリカ(ケニア)生まれで大統領の資格はないのではないか」という国籍陰謀論を蒸し返し、注目を集めた[818]

ABCニュースに出演したトランプはカメラの前に自身の出生証明書を掲げ、オバマにも同じことをするように要求した。「アフリカ生まれ」との疑惑を払拭するため、オバマは出生証明の原本をメディアに公開し、改めてハワイ生まれであるという事実を証明した。これについてトランプは、「バラク・オバマの出生情報を提出させることに成功した」と自画自賛した[819]

これには一部から人種差別だという反発とボイコット運動が起こり、グルーポンアプレンティスのサイトから広告を引き上げる騒ぎとなった[820]。また同年4月末に、トランプは年一回開かれるホワイトハウス記者クラブ主催の晩餐会に出席したが、ここでオバマは「この問題が一件落着して、彼らはもっと重要な問題に取り組めるだろう。月面着陸捏造だったのか? ロズウェルの真実は?」と、トランプら陰謀論を唱えた人々をジョークで皮肉った[821]

2015年9月18日には自身の集会で、自身の支持者がオバマをムスリム決めつけたときに否定しなかったことで再び非難を浴びた[822]2016年8月10日には、フォートローダーデールの集会において、オバマと対抗馬のヒラリー・クリントンイスラーム過激派組織ISIL(イスラム国)の共同創設者であるとの持論を展開。翌11日のCNBCでのインタビューにおいて「私は事実を言っているだけ」と述べた。しかし民主党チャーリー・ウィルソンやオバマ陣営の外交問題顧問を務めたズビグネフ・ブレジンスキーらが、冷戦下のイスラム系反共武装集団に政治的支援を与えていたとしても、創設したとまでは言い難い。クリントン陣営は、「的外れな主張」であり、「トランプが米国を見下していることを示す新たな例」であるとの声明を発表した[823]

2016年8月19日には、洪水の被害に見舞われたルイジアナ州のバトンルージュを訪問。トラックいっぱいに詰め込まれた支援物資(子供向け玩具、衣類、おしめ、水、食料など)を運び、荷下ろしも手伝った。そして「大丈夫さ。状況は良くなる」などと被災者を励ました。その一方で、大統領就任以来300回目となるゴルフプレーに興じていたオバマ[824]に対し、「大統領はゴルフをせずに、早くルイジアナを訪れるべきだった。遅すぎる」と批判するのも忘れなかった。

  • 2016年9月16日、トランプはワシントンで記者会見を開き、「オバマ大統領はアメリカ生まれ。以上」と短い声明を読み上げてオバマがアメリカ合衆国生まれであることを渋々認めたが、謝罪はしなかった[825]

クー・クラックス・クランへの曖昧な態度

2016年2月25日、非合法の白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の元最高幹部であるデービッド・デュークが、トランプの支持を表明して「移民問題に強く、メディアの嘘を暴いて、白人社会を発展に導く候補だ」と発言した[826]

この件について、2月28日のCNNのインタビュー番組で司会者が「デューク氏に支持されることを拒否するか」と尋ねると、トランプは「私はデュークという男を知らない。一度も会ったことがないし、何も知らない」と回答した。司会者がさらに「KKKと距離を置く考えはあるか」と三度にわたり質問したが、トランプは「あなたは私の知りもしないグループについて私に糾弾させようと思うべきではない」「白人至上主義者のことは何も知らない」、「どの団体のことを言っているのか分からない」と言うだけではっきりと拒絶しなかった[826]

しかし、トランプは2000年にデュークに関する発言を行っており、また番組2日前の2月26日の会見ではトランプが「デービッド・デュークが私を支持した?そうか、私は拒否する。よいね?」と記者に答えている。このように過去にデビットを認知した発言を行っていることの矛盾が批判された[827]

当時は大統領選挙の予備選挙の最中であり、共和党内からもトランプに批判が噴出した。マルコ・ルビオはトランプがデュークを認知しているはずだと指摘し、「白人至上主義を否定できないような候補を指名するわけにはいかない」と訴えた。テッド・クルーズは「人種差別が間違っていることや、KKKが許しがたい団体であることに異論はないはずだ」と述べた。ジョン・ケーシックは「米国内に憎悪団体の居場所はない」と強調した。また対立政党である民主党バーニー・サンダースも「米国初の黒人大統領の後を、KKKを容認する扇動者に継がせてはならない」と批判した[826]

後にトランプは釈明として、「イヤホンの性能が悪かったせいだった」と述べた[828]

セントラルパーク・ジョガー事件での死刑要求

1989年に起きた暴行・強姦事件で、トランプは無実の黒人ヒスパニックの少年たちを「死刑にせよ」と強く要求した。詳細はセントラルパーク・ジョガー事件(英語: Central Park jogger caseを参照。

1989年4月19日夜のセントラル・パークで、10代のストリートギャングが人々を襲った。夜9時ころから30人以上の黒人ヒスパニックの少年たちがパークの来園者を襲い始めた。

襲撃者たちはタクシーを石で破壊し、サイクリングコースで数台の自転車を襲った。人々が逃げ出すと歩行中の男性に襲いかかり、金品を奪って意識不明になるまで殴った。通りかかった教師はひどく殴打され、何度も蹴られた。ランニングコースにいた2人の男性も意識を失うまで鉄パイプと棍棒で殴られた。駆けつけた警官は、血の海だったと証言した。被害者たちは意識が戻ると、4、5人の黒人の若者に襲われたと証言した。通報を受けて急行したニューヨーク市警は、少年たちを逮捕しながらパーク内の見回りを始めた。

同じころ、パーク内のランニングコースでも、ジョギング中の28歳の白人女性Aが何者かに襲われてレイプされ、肛門を犯されるなどの暴行を受けた[829]。女性は発見時、縛り上げられ、口枷をされ、裸で、血液の75%を失う深刻な頭部外傷を負い、血まみれで泥の中に埋もれていた。女性は奇跡的に生きていたが、12日間昏睡状態にあり、深刻な障害が残った[830]

Aが発見される前、パーク内を見回っているパトカーの車内でリヤシートに座っていた少年が、出し抜けに「俺は殺人(murder)はしていない」と言い出した。「だが誰がやったか知っている。あいつら2人だ」と2人の名前をあげた。その隣に座っている少年も同調して「あいつがやった」と繰り返した。

Aが20日未明に発見されると、警察は逮捕した少年たちから14歳から16歳の黒人4人とヒスパニック1人の計5人を、Aへの暴行、強姦、殺人未遂の被疑者とした。5人ともパークでの襲撃に参加しており、うち2人は前述のパトカーで仲間から犯人と名指しされた少年だった。

5人は通行人を襲ったことは認めたものの強姦については否認し、目撃しただけで関与はしていないと供述した。5人の一人は「女を犯していた1人はフードを被ったプエルトリコ系(ヒスパニック)の少年だった」と供述し、一人は「レイプはしていない。俺は胸を触っただけだ」と供述した。

メディアがこの事件を報じると、トランプは「犯人たちの死刑」と「ニューヨークでの死刑の復活」を求め、8万5000ドルを投じて新聞4紙に「死刑を取り戻せ!」「うろつく凶悪犯罪者の群れに気をつけろ」という全面広告を掲載した[829]。また当時のエド・コッチ市長が「憎しみや恨みを私たちの心から取り去らないといけません」と発言したことにも反論し「私はそうは思わない。私はこれらの強盗・殺人犯たちを憎みたい。犯人たちが苦しむことを望む。社会を攻撃する者たちには、攻撃を始める時が人権の終わる時だと教えるべきだ。」と主張した。 5人側を防御する弁護士は、この意見広告について「5人を公然と侮辱している」と抗議した。トランプは広告を打った日、テレビのインタビューで犯人として逮捕された5人の少年はニューヨークの抱える問題の象徴と述べ、さらに「俺は彼女を捕まえて手荒にレイプした奴らを憎む。嘘じゃない」と言った[830]

ニューヨーク市警は5人へ激しい取り調べを加え、Aへの暴行も自白させた(後に虚偽の自白と判明する)。陪審員による裁判は少年たちに懲役6年から13年を宣告した。5人は二審でも有罪になり服役した。

しかし2002年、この5人のぬれぎぬを晴らす出来事がおきた。連続強姦や殺人罪で服役していたヒスパニックの男性B(5人とは別人)が司法取引で強姦罪の免責と引き換えに、Aに乱暴した真犯人は自分だと告白した。Bの告白には信ぴょう性があり、DNA鑑定によっても裏付けられ、さらにBは1人でレイプしたと証言したため、5人の元少年たちは無実だったことが明らかになった。

5人の元少年たちは釈放されるとトランプに謝罪を求めた。元少年たちの弁護士は「ドナルド・トランプは社会に対して、また若者たち(被告)とその家族に対して、本当の謝罪をするべきだ」とコメントした。トランプは「謝罪しない。彼らは刑事に自白した。後になってからやっていないと言い出したが信じない」と拒否した。人権団体はデモ集会を行って、参加者たちはトランプ・タワーの前で「トランプのとんま!(Trump is a chump!)」「人種差別主義者」と声をあげた[831]

5人の元少年たちは人種差別、悪意訴追、精神的苦痛を理由としてニューヨーク市に2500万ドルの賠償を求めて訴えた。市側は、元少年たちを起訴に持ち込んだことには相当な理由があったとして応じず、市側の法律家も自分たちが勝つと感じていた。しかし裁判は10年間に及び、2013年ビル・デブラシオが「私が市長になればこの問題を解決する」と宣言し、新市長に就任すると、2014年5月に、元少年たちに解決金として4100万ドル(約46億円)を支払う決定をした。

トランプはこの決着を批判し「これは恥だ」「彼ら(ニューヨーク市を訴えた5人)は天使のような人間ではない」「4000万ドルはニューヨーク市の納税者にとっては大金だ。この受け取り手は大声で笑っているに決まっている」「決着はしたが潔白という意味ではない」「この司法制度は問題だらけで、この問題に費やされた時間とエネルギーはとんでもない」などと発言した[832]

無実が証明された5人の少年の内の1人は「トランプはあいかわらず憎しみに満ちた人間だ。トランプが大統領になることなど想像も出来ない」と、2016年2月にコメントした[833]

なお5人の元少年たちはニューヨーク市から4100万ドル(46億円)を受け取るとニューヨーク州に対しても5200万ドル(約58億円)を求めて2014年12月に提訴している。


  1. ^ アメリカ合衆国における大統領選挙はアメリカ選挙人団によって決定され、それは各州に連邦議会の代表者と同じ数の選挙人が割り当てられ、各州の全ての代表者はその州での選挙で勝った者に投票するというものである(ただしen:faithless electorsは除く)。結果として、次期大統領が全国の全人口に対して、多数の票を得ていないという事がありえる(en: List of United States presidential elections by popular vote margin)。この事態は1824年から5回起きている英語版
  2. ^ 選挙がCOVID-19パンデミック下で実施され郵便投票が普及したために120年ぶりの投票率66パーセント越えとなり[28]、そのために両候補ともこれまで歴代最多であった2008年アメリカ合衆国大統領選挙でのバラク・オバマの獲得票を上回る7000万票超を獲得[29]。バイデンは8000万票超を獲得した史上初の候補者となり、トランプもそれに次ぐ史上第2位の得票を得た候補者となった[30]
  3. ^ 戦後の大統領でトランプ以外に現職でありながら大統領選挙に落選したのは、ジェラルド・R・フォード1976年アメリカ合衆国大統領選挙で落選)、ジミー・カーター1980年アメリカ合衆国大統領選挙で落選)、ジョージ・H・W・ブッシュ1992年アメリカ合衆国大統領選挙で落選)の3名である。なおアメリカの全歴史の中では落選した現職の大統領は10人いる。トランプは特にフランクリン・ルーズベルトに敗れたハーバート・フーヴァーに似ているとして両者を比較する報道が多く見られた[33]
  4. ^ ただし、他の適当な候補地が見つからず開催中止になった。ちなみに、女子ゴルフの世界5大メジャー大会の1つ「全英オープン」の開催予定地もトランプの所有するコースだったが、こちらを運営するイギリス女子ゴルフ連合は特別な反応を見せず、大会は予定通りに開催された。
  5. ^ 「ドナルド・トランプ氏が選挙に出たことは驚いたし、私を財務長官に指名したことには更に吃驚した」
  6. ^ トランプへのメディアの報道を過剰なバッシングと捉えた上で、1980年の選挙報道でマスコミが共和党候補のレーガンを「全人類の脅威」「爆弾魔」など批判していたことを引き合いに出しながら、もし大統領に当選すれば穏当な保守派の大統領になると予測している。 Luttwak, Edward N. (2016年3月9日). "Suffering From Trumphobia? Get Over It". The Wall Street Journal(英語記事・全文読める). 2016年4月8日閲覧
  7. ^ あるいは日本の例。著者は市場原理主義者・自由放任主義者・リバタリアンとして知られるアイン・ランド日本語訳者:脇坂あゆみ. "共和党候補がトランプに絞られたのは必然だ 討論会を通じリーダーシップへの期待高まる". 東洋経済オンライン. 2016年4月8日閲覧
  8. ^ 「偉大な米国を取り戻す」は、トランプのオリジナルではなく、1979年からの大統領選挙で現職のジミー・カーターに挑んだ故ロナルド・レーガン元大統領が掲げたスローガンである。共和党候補が自身とレーガンをひき寄せることはよくあり、このフレーズはスコット・ウォーカーテッド・クルーズも使ったことがある。その際にトランプは、このスローガンを自身の発明品と主張して他の候補を非難したが、トランプの発明品でも無い。マルコ・ルビオ陣営のスローガンも、レーガンの再選キャンペーンの「朝を再びアメリカに」を使っていた。Make America Great Againの項も参照。
  9. ^ 共和党候補者で大統領選挙に当選したのはジョージ・W・ブッシュ以来8年ぶりである。歴代大統領の中では議員・州知事・市長などの政治家としての実務経験もなく、軍人にもなった経験も無い人物が大統領になるのはアメリカ建国史上初である。過去歴代の大統領の中で唯一政治家にならず、軍人から1953年1月20日に大統領に就任したドワイト・D・アイゼンハワー以来64年ぶりということになる。
  10. ^ この代表はバーニー・サンダース上院議員とされる。
  11. ^ この代表はベン・カーソン医師とされる。
  12. ^ When was the last time anybody saw us beating, let's say, China in a trade deal? They kill us. I beat China all the time.
  13. ^ I like China. I sell apartments for— I just sold an apartment for $15 million to somebody from China. Am I supposed to dislike them?
  14. ^ I love China. The biggest bank in the world is from China. You know where their United States headquarters is located?. In this building, in Trump Tower. In this building, in Trump Tower. I love China.
  15. ^ People say, “Oh, you don't like China?” No, I love them. But their leaders are much smarter than our leaders, and we can't sustain ourself with that.
  16. ^ 人民軍の銃撃を受けながらJSAからMDL(DMZ)を横切って亡命した前年のen:Oh Chong-song事件など
  17. ^ ヒラリー・クリントンはトランプの発言を「常軌を逸している」とした。
  18. ^ 日本では母体保護法により妊娠満22週未満の中絶は一定の条件のもとで合法となるが、それ以降は堕胎罪に問われる。詳細は人工妊娠中絶を参照。






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