トンネル トンネルの分類

トンネル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/18 09:52 UTC 版)

トンネルの分類

道路トンネルの例(旧吹上トンネル)。両端の出口を低くする逆 V 字型の勾配になっており、自然排水が可能になっている。
道路トンネルの例(日本坂トンネル)。大規模火災事故(日本坂トンネル火災事故)発生の歴史があり、入り口に信号機を設けている
鉄道トンネルの例(青函トンネル
現役としては日本最古の鉄道トンネル「清水谷戸トンネル」(左側)。神奈川県横浜市戸塚区品濃町側(横須賀線東戸塚駅近辺)
河川トンネルの例(新湊川

用途別では、道路や鉄道の交通用トンネルの他に、灌漑や水力発電用の水路トンネルや、鉱山の坑道もトンネルの一種に数えられ、大都市で建設される共同溝や地下街、地下駐車場、地下鉄も広義のトンネルとされる[4]。場所や工法による分類では、山岳トンネル(山岳工法)、シールドトンネル(シールド工法)、都市トンネル、開削トンネル(開削工法)、沈埋(ちんまい)トンネル(沈埋工法)など様々な形態がある[14]

場所による分類

山岳トンネル

山を貫通するように掘られたトンネル。トンネル中央部を高く、両端の出口を低くする逆V字型の勾配(拝み勾配)とすることで自然排水が可能である。ただし、立地条件などから片勾配となっているものも少なくないが、これでも自然排水は可能である。

都市トンネル

都市の建造物の中や地下を通るトンネル。首都高速道路に於けるトンネルのほとんどや地下鉄の多くはこれである。滑走路等を避けて空港の地下を通るトンネルもある。傾斜は周囲の構造物などによって大きく異なる。

水底トンネル

川底海底に掘られたトンネル。構造的に中央部が低くなるため、排水を機械的に行う必要がある。

水中トンネル

例えば水族館水槽の中などに作られた観賞用の通路で、アクリル樹脂などで透明になっていてトンネルの外の水中を眺められる構造になっている[15]

用途による分類

道路トンネル

自動車用

自動車用の長大トンネルには大規模な換気設備や、非常ボタン・消火設備・非常電話・非常停車帯・避難用トンネル(避難坑)などの防災設備が設置されている。また、日本においては、道路法で長さ5,000m以上並びに水底・水際の道路トンネルは危険防止のため、危険物積載車通行が禁止されている。

最近建設されるトンネルは車同士のすれ違いが出来るよう、2車線確保できる断面積にする場合が多い。2車線未満のトンネルは一方通行や片側交互通行、車両幅制限、大型車の通行規制などで対応する場合がある。

高速道路や主要道路を中心に、ラジオの再送信を行っているケースもある。なお、トンネル内で交通事故や火災などが発生した場合、全ての放送局の再送信を休止して、緊急時の正しい行動を周知する放送を流す。これは、再送信している全ての周波数で同じものが流れる。

トンネルの入口手前に一般道路・高速道路問わず、信号機を設置している場合がある(写真参照)。また、高速道路ではトンネルの長さなどに関係なく必ず全てのトンネルの入口にトンネル情報表示器が設置される。長大トンネルではトンネル内にも設置される。

歩行者用

自動車用のトンネルにおいて歩道が設置されている場合、排気ガス対策から自動車用のトンネルとは別に併行してトンネルが設置されている場合がある。関門トンネルでは、人道用と車道用とが2層になっている。

また、歩行者専用に地下道が設置されている場合、道路鉄道を立体的に横断するために地下横断歩道が設置されている場合がある。

鉄道トンネル

鉄道用のトンネル。鉄道トンネルでは特に、単線のものを単線トンネル、複線のものを複線トンネルと呼ぶことが多い。換気が困難な長大トンネルや、特に列車運転頻度の高い線区のトンネルは早く(蒸気機関車が一般的であった時代)から電化されている。

また、鉄道は勾配に弱いため、山の斜面を標高の低いところから掘り進んで建設する必要に迫られることから、全般的にみて道路トンネルよりも長大なものが多い[16]

電化を前提としていない古くからある鉄道トンネルでは、電化の際に建築限界の小ささから通過できる車両に制限がかかったり(中央本線予讃線など)、架線などの必要なスペースが取れないため、問題となる(播但線の場合、姫路駅 - 寺前駅間は電化されたが、寺前駅 - 和田山駅間にあるトンネルは断面が小さすぎるため、同区間の電化を見送った)。

解決策として、断面積の大きい新トンネルを掘削し、旧トンネルを廃止したり(常磐線赤穂線呉線など)、複線化の際に単線トンネルを掘削し、路盤を下げるなどで旧トンネルを改良し、単線トンネルを2本並べた形にする方法(山陽本線東北本線など)がある。

また、複線化と電化を同時に行い、新線に複線トンネルを新設する場合も多い(北陸本線北陸トンネル〔現在はハピラインふくい線〕・頸城トンネル〔現在は日本海ひすいライン〕や函館本線の神居トンネル)。

なお、鉄道車両の高速化に伴い、トンネル微気圧波などが問題となったため、トンネルの出入口付近に、少しでも圧力変化を穏やかにするための構造を設けている場合もある。


水路トンネル

水路用のトンネル。

運河において、山を避けてトンネルを掘り、船舶の航行が可能なトンネルがある(例:イギリスバーミンガム近くのネザートン・トンネル英語版)。河川では洪水を避けるためなどに掘削された河川トンネルがある。用水路では暗渠も参照。

また、下水道についてもトンネルが用いられる。下水処理場そのものをトンネルに設置した例もある[17]

貯蔵用トンネル

大量のワインの貯蔵には地下の倉(ワインカーヴ)が用いられる。この地下蔵を掘るにもトンネル掘削技術が用いられるが、一方、廃道となったトンネルをワイン貯蔵用に再利用する場所もある[18]

栽培用トンネル

キノコ等の菌類の栽培には湿度が要るが、日光が不要などの状況があり、廃道となったトンネルを転用している場所もある[19]


注釈

  1. ^ 呉音では「ずいどう」、漢音では「すいとう」となる。国土交通省は「ずいどう」を用いている[1]
  2. ^ より稀な例としては、川沿いや谷底の道が冬季に雪崩の危険があることからトンネルで迂回することもある。
  3. ^ 関越トンネルでは天井板の撤去は難しいとされ、撤去は一部にとどまった。

出典

  1. ^ 隧道』 - コトバンク
  2. ^ トンネルとは?、一般社団法人日本トンネル技術協会
  3. ^ a b 浅井建爾 2015, p. 190.
  4. ^ a b c d e 浅井建爾 2001, p. 234.
  5. ^ 長崎新聞 (2019年6月21日). “トンネル工事で減水 水源確保、水田に送水 諫早市多良見町井樋ノ尾地区 | 長崎新聞”. 長崎新聞. 2020年7月10日閲覧。
  6. ^ 九州新幹線工事で水枯れ 代替井戸で水田へ送水、久々の田植えに喜び”. 毎日新聞. 2020年7月10日閲覧。
  7. ^ トンネルでは基準の10倍超 - 東大など、高速道路上の二酸化窒素濃度を調査(2012年1月13日マイナビニュース)
  8. ^ 長いトンネル、外気は禁物…NO2基準の50倍」『読売新聞』2012年1月14日。 オリジナルの2012年1月23日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20120123221429/http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=52993 
  9. ^ 「河口湖・新倉掘抜史跡館」山梨新報社公式HP
  10. ^ 「河口湖新倉掘抜史跡館」河口湖net公式HP
  11. ^ 「市指定史跡・市指定名勝」富士吉田市公式HP
  12. ^ 『東北新幹線工事誌 黒川・有壁間』(日本国有鉄道仙台新幹線工事局編)及び『上越新幹線工事誌 大宮・水上間』(日本鉄道建設公団東京新幹線建設局編)による
  13. ^ 快適で安全な地下鉄を目指して(営団地下鉄ホームページ)(インターネットアーカイブ・2003年時点の版)
  14. ^ 浅井建爾 2001, pp. 234–235.
  15. ^ 例:旭川市・旭山動物園
  16. ^ 浅井建爾 2015, p. 192.
  17. ^ 下水処理場なんでも一番・その2_日本最初のトンネル式下水処理場
  18. ^ 産業遺産保存・活用事例集33_甲州市勝沼地域におけるワイン貯蔵庫・遊歩道としての活用
  19. ^ 「予防医療.com」・特集・キノコ多糖体
  20. ^ a b 社団法人交通工学研究会, ed. (2007), 道路交通技術必携2007, p. 116, ISBN ISBN 978-4-7676-7600-5 (PDF)
  21. ^ 品川線の秘密13 トンネルの換気方式 (PDF) - 東京SMOOTH(首都高速道路特設サイト)内
  22. ^ a b 浅井建爾 2001, p. 241.
  23. ^ a b c d e 浅井建爾 2015, p. v.
  24. ^ 月報KAJIMA 2001 October
  25. ^ ジオスター(株)
  26. ^ 浅井建爾 2001, p. 240.
  27. ^ 浅井建爾 2001, pp. 238–239.
  28. ^ a b 浅井建爾 2015, p. 188.
  29. ^ 浅井建爾 2015, p. vi.
  30. ^ 『南日本新聞』 2012年2月14日付 4面(新武岡トンネル貫通)
  31. ^ 鹿児島東西道路鹿児島IC~建部IC間が開通 - 鹿児島建設新聞、2013年9月28日付
  32. ^ a b 高速道路のトンネルで火災が発生した場合の対処とは?”. 日本自動車連盟. 2013年12月10日閲覧。
  33. ^ a b c d e ロム・インターナショナル(編) 2005, pp. 95–96.
  34. ^ 小﨑美希、‎原直也、‎望月悦子、鈴木広隆、秋月有紀『建築光環境工学―その基礎から応用まで―』理工図書株式会社、2018、123-124頁。 
  35. ^ 一例としてトンネル工事で女性を立入禁止」『日経コンストラクション』2001年9月5日http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20010905/1712/ 
  36. ^ 圧巻のスケールと技術力、世界の巨大トンネル10選 CNN(2017年3月25日)2017年5月14日閲覧






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