アセトアルデヒド 利用

アセトアルデヒド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 06:44 UTC 版)

利用

工業的に合成したアセトアルデヒドの大半は、ティシチェンコ反応による酢酸エチルの合成に用いられる。これはアルコキシドの触媒作用により、アセトアルデヒド2分子がカルボン酸とアルコールとに不均化しながら脱水縮合して酢酸エチルを生じるものである。

かつては酢酸の合成原料としても大量に利用されていたが、現在ではメタノールアセチレンからの直接合成の方が効率的であるため下火となっている。

その他、ピリジン誘導体、ペンタエリトリトールクロトンアルデヒドの合成前駆体として重要である。

毒性

ラットに対する急性毒性 (LD50) は、経口の場合で 1930 mg/kg、皮下注射の場合で 640 mg/kg。経口摂取の場合は、初回通過効果により見かけ上、毒性が減少する。

飲酒により生成されるアセトアルデヒドは、DNAタンパク質に結合して付加体となり、様々な疾病に関与しているとされる。

建築材から放出されるアセトアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質の一つとして問題視されている[9]

たばこ

アセトアルデヒドはたばこの煙に含まれており、ニコチンと相乗作用を示して、タバコへの依存性を増加させる[10]。アセトアルデヒド自体にも毒性はあるが、燃焼にすることよりメタン一酸化炭素に分解されてさらに毒性が増す。

アセトアルデヒドはたばこの添加物として、たばこ製造会社によって添加されている。その理由はアンモニアと同様、ニコチンの吸収・効果の増幅作用があり、より少量のニコチンで依存性を発揮させるため[11]や、燃焼を促進させるためなどである。L-システイン除放剤によってアセトアルデヒドを排除することで禁煙の成功率は上昇する[12]

発がん性

アセトアルデヒドについてはヒトに対する発がん性が疑われている[13]

動物実験では、ラットハムスターに対してアセトアルデヒドを吸入させることによって、呼吸器にがんが生じることが示されており、また細菌培養細胞を用いた実験でアセトアルデヒドの変異原性が認められている。 国際がん研究機関は以上の分析に基づき、ヒトに対する発がん性については研究の計画や規模に難があり証拠不十分とし、実験動物に対する発がん性については充分な証拠があるとして、アセトアルデヒドをグループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類している[14]

なおアルコール飲料は、膨大な研究の積み重ねにより十分な証拠があるとして、グループ1(ヒトに対する発がん性あり)に分類されている。エタノール以外の成分が発がん性に関わっている可能性は排除していないながらも、アルコール飲料中のエタノール、およびエタノールが代謝されて生じるアセトアルデヒドが、ヒトに対する発がん性を持つと結論している[15]

法規制

  • 化管法:第一種指定化学物質(1-11)
  • 化審法:優先評価化学物質(2-485)
  • 消防法:危険物第四類特殊引火物
  • 労働安全衛生法:危険物引火性の物、名称等を通知すべき有害物、変異原性が認められた既存化学物質
  • 大気汚染防止法:有害大気汚染物質 (優先取り組み物質)
  • 船舶安全法:引火性液体類
  • 航空法:引火性液体
  • 港則法:引火性液体類
  • 悪臭防止法:特定悪臭物質
  • 高圧ガス保安法:可燃性ガス、液化ガス
  • 食品衛生法:食品添加物(香料)
  • 化学物質の室内濃度の指針値:0.03 ppm (厚生労働省)

  1. ^ SciFinderScholar (accessed Nov 4, 2009). Acetaldehyde (75-07-0) Substance Detail.
  2. ^ a b c Online Sigma Catalogue , accessdate: March 17, 2022.[リンク切れ]
  3. ^ March, J. “Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structures” J. Wiley, New York: 1992. ISBN 0-471-58148-8.
  4. ^ Dmitry A. Ponomarev and Sergey M. Shevchenko (2007). “Hydration of Acetylene: A 125th Anniversary”. J. Chem. Ed. 84 (10): 1725. doi:10.1021/ed084p1725. http://jchemed.chem.wisc.edu/HS/Journal/Issues/2007/OctACS/ACSSub/p1725.pdf. 
  5. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
  6. ^ Marc Eckert, Gerald Fleischmann, Reinhard Jira, Hermann M. Bolt, Klaus Golka “Acetaldehyde” in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2006, Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a01_031.pub2.
  7. ^ アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について 著:中央環境審議会大気・騒音振動部会、有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会 サイト:環境省
  8. ^ Hipolito, L.; Sanchez, M. J.; Polache, A.; Granero, L. Brain metabolism of ethanol and alcoholism: An update. Curr. Drug Metab. 2007, 8, 716-727.
  9. ^ 室内環境学会編・関根嘉香監修「住まいの化学物質-リスクとベネフィット―」東京電機大学出版局(2015)シックハウス症候群
  10. ^ Nicotine's addictive hold increases when combined with other tobacco smoke chemicals, UCI study finds Archived 2011年2月9日, at the Wayback Machine.
  11. ^ フィリップ・J・ヒルツ 著、小林薫 訳「10章 宣誓の上で」『タバコ・ウォーズ: 米タバコ帝国の栄光と崩壊』早川書房、1998年。ISBN 978-4-15-208183-4 (元B&W社研究部長ウィガンド博士の証言)
  12. ^ Syrjänen K, Eronen K, Hendolin P, etal (2017). “Slow-release L-Cysteine (Acetium) Lozenge Is an Effective New Method in Smoking Cessation. A Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Intervention”. Anticancer Res. 37 (7): 3639–3648. doi:10.21873/anticanres.11734. PMID 28668855. http://ar.iiarjournals.org/content/37/7/3639.long. 
  13. ^ アセトアルデヒド”. e-ヘルスネット 情報提供. 2022年8月20日閲覧。
  14. ^ International Agency for Research on Cancer (1999). “Acetaldehyde” (PDF). Re-evaluation of Some Organic Chemicals, Hydrazine and Hydrogen Peroxide. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans. 71. http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol71/mono71-11.pdf 
  15. ^ International Agency for Research on Cancer (2010). “Consumption of Alcoholic Beverages” (PDF). Alcohol Consumption and Ethyl Carbamate. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans. 96. pp. 1278-1279. http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol96/mono96-6F.pdf 






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