Hey, Bill!
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 14:55 UTC 版)
「ビル・ラッセル」の記事における「Hey, Bill!」の解説
ラッセルが加入した当時のセルティックスはリーグ1位の得点力を持つ代わりに、ディフェンスは失点でリーグワースト1位と、オフェンスのみに重点を置いた極端な戦力バランスとなっていた。セルティックスが優勝するにはこの戦力の不均衡を是正する必要があったが、そんな時に現れたラッセルは正にチームに劇的な変革をもたらす改革者だった。 アワーバックはチームの戦術に変更を加え、チームに攻撃的なディフェンスを仕掛けさせ、相手チームにターンオーバーを強いることで、セルティックスが最も得意としたオフェンスパターンである速攻を、より容易に出させようとした。攻撃的なディフェンスはかえってディフェンスに隙を生じさせ、相手のドライブを容易にしてしまう可能性があるが、アワーバックとセルティックスの選手たちはペリメーターのディフェンスラインを突破されようとも、慌てる必要はなかった。何故なら彼らが突破した先には、ビル・ラッセルが待ち構えているからである。ラッセルは言わばヘルプ・ディフェンスのエリートだった。その長身には似つかわしくない俊敏性を誇るラッセルは、チームのディフェンスに隙間が生じればすぐさまカバーに行き、味方が不利と悟れば援助に走ってダブルチームに付き、たとえディフェンスラインを突破されても、ラッセルの最大の武器であるブロックショットで敵のシュートを次々と叩き落した。ラッセルが後ろに控えているという事は、チームメイトのディフェンスをよりアグレッシブにさせた。たとえ抜かれても、ラッセルが止めてくれるという信頼があったからである。そしてよりアグレッシブになればよりターンオーバーを引き出すことができ、より簡単に速攻を出すことができる。もしシュートを打たれても、外れたらそのリバウンドは必ずラッセルが拾う。彼が拾えば、即ちそれは速攻のチャンスとなる。後に無敵を誇ることになるセルティックスの攻防一体の戦術は、全てがラッセルを基盤としていた。このセルティックスの戦術は、『Hey, Bill!』と呼ばれた。ディフェンスにおいてチームメイトがラッセルの助けを必要とした時、ラッセルをこう呼ぶことから名づけられた。またラッセルのブロックショットはスポーツブランドのウィルソンが「敵シューターの顔面に押し込むようだ」と評したことから、『ウィルソンバーガー』と呼ばれた。 1年目からセルティックスの大黒柱となったラッセルは1956-57シーズンを14.7得点19.6リバウンドの成績を残し、平均リバウンドはリーグトップだったが、当時のリバウンド王は平均ではなく通算で決められており、オリンピック出場のために24試合を欠場したラッセルは1年目でのリバウンド王の栄誉は逃した。 ニューヨーク・ニックス戦では問題行動を起こした。この試合でニックスのレイ・フェリックスから絶えず挑発行為を受けたラッセルは、アワーバックに相談したところ、「自分で対処するように」と言われたため、再びフェリックスから挑発を受けたとき、殴ってフェリックスを黙らせた。当然悪質な行為として25ドルの罰金を課せられた。また同じルーキーのチームメイト、トム・ヘインソーンとはやや険悪な関係となった。このシーズンの新人王を獲得したのはラッセルではなく、チームメイトのヘインソーンだった(評価はラッセルの方が上だったが、シーズン前半の欠場が響いた)。納得いかないラッセルは、ある時ヘインソーンがいとこのためにサインを書いて欲しいと頼まれても断り、またある時はヘインソーンが新人王の賞金として貰った300ドルの半分を自分が得られる権利があると主張した。2人のルーキーは暫く打ち解けることはなかったが、ボブ・クージーとは人種の壁があったにもかかわらず、良好な関係を築くことができた。
※この「Hey, Bill!」の解説は、「ビル・ラッセル」の解説の一部です。
「Hey, Bill!」を含む「ビル・ラッセル」の記事については、「ビル・ラッセル」の概要を参照ください。
- Hey, Bill!のページへのリンク