DNA損傷への応答
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 16:27 UTC 版)
「クロマチンリモデリング」の記事における「DNA損傷への応答」の解説
クロマチン構造の緩和は、DNA損傷に対する最初期の細胞応答である。この緩和はPARP1によって開始されるようであり、PARP1のDNA損傷部位への蓄積はDNA損傷の発生後1.6秒以内に最大半値に達する。続いてADPリボース結合ドメインを持つクロマチンリモデリング因子ALC1がPARPの反応産物であるポリADPリボース鎖に迅速に結合する。ALC1のDNA損傷部位へのリクルートは損傷後10秒以内に最大値に達する。ALC1によるものと考えられるクロマチン構造の緩和は10秒以内に最大半値に達する。二本鎖切断部位でのPARP1の作用によって、2つのDNA修復酵素MRE11とNBS1(英語版)がリクルートされる。これら2つのDNA修復酵素のリクルートは、MRE11に関しては13秒、NBS1に関しては28秒で最大半値に達する。 DNA二本鎖切断の形成後のクロマチン構造の緩和の他の過程には、H2AX(英語版)のリン酸化型であるγH2AXが関与している。ヒストンバリアントH2AXは、ヒトのクロマチン中のH2Aヒストンの約10%を構成している。γH2AX(セリン139番残基がリン酸化されたH2AX)の蓄積はガンマ線照射による二本鎖切断の形成後20秒で検出され、1分で最大半値に達する。γH2AXを含むクロマチンの範囲はDNA二本鎖切断部位の周辺約 2 Mbpにわたる。 γH2AXはそれ自身がクロマチンの脱凝縮を引き起こすわけではないが、照射後数秒以内にMDC1(英語版)がγH2AXに特異的に結合する。それと同時にRNF8(英語版)とNBS1が蓄積する。NBS1は、γH2AXに結合したMDC1に結合する。RNF8は、ヌクレオソームリモデリング・ヒストン脱アセチル化複合体NuRDの構成要素であるCHD4(英語版)との相互作用によって、広範囲のクロマチン脱凝縮を媒介する。二本鎖切断部位へのCHD4の蓄積は迅速であり、照射後40秒以内に最大半値に達する。 DNA損傷に伴う迅速なクロマチン構造の緩和とDNA修復の開始後にはゆっくりと再凝縮が行われ、約20分でクロマチンは損傷前の状態に近い凝縮状態を回復する。
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