DNA断片の調製
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/08 08:01 UTC 版)
目的のアミノ酸配列をコードしたDNA断片の調製方法には大きく分けて2種類ある。 1つは化学的にDNAを合成する方法である。現在では自動合成装置が市販されており、これを用いて望み通りの塩基配列を持つDNAを合成することが可能である。合成するDNAの塩基配列には目的とするアミノ酸配列をコードする翻訳領域の他に、ベクターと結合させるための制限酵素認識部位が必要である。また、できたペプチド鎖を酵素などで切り出すためのアミノ酸配列に対応する塩基配列を組み込むこともある。自動合成では塩基がうまく結合せず塩基配列の一部が欠損したDNAが生成し、その割合は塩基数が多くなるほど増える。そうすると完全な塩基配列を持つDNAを精製して取り出すのが困難になってくるので、合成できる配列の塩基数には上限がある。 もう1つは目的とするペプチドの翻訳元であるmRNAから調製する方法である。目的とするペプチドを産生している細胞内には、そのペプチドの翻訳元であるmRNAが必ず存在しているはずである。まず、その細胞内に存在するすべてのmRNAを混合物として取り出した後、mRNAの3'末端のポリアデノシン一リン酸配列に結合するオリゴデオキシチミジン一リン酸の5'末端に後でベクターと結合させるために必要な制限酵素認識配列を結合させたDNA断片をプライマーとして加え、逆転写酵素によりcDNA(にプライマーが結合したもの)を調製する。こうして調製したcDNA混合物に対し、目的のcDNAと結合する塩基配列に制限酵素認識配列を結合させたプライマーを添加してPCR法を行う。すると目的とするcDNAのみが増幅されて得られる。得られるcDNAは目的とするアミノ酸配列をコードする塩基配列の前に制限酵素認識部位を、後ろにポリアデノシン一リン酸配列と制限酵素認識配列を結合したものになる。
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