3I/ATLAS
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このページ名「3I/ATLAS」は暫定的なものです。(2025年7月)
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ATLAS彗星 3I/ATLAS |
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ハッブル宇宙望遠鏡が2025年7月21日に撮影した 3I/ATLAS の画像
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仮符号・別名 | A11pl3Z[1] C/2025 N1 (ATLAS)[2][3] 3I/2025 N1[4] |
見かけの等級 (mv) | ≈ 18(発見時)[3] |
分類 | 非周期彗星[2] (恒星間天体) |
発見 | |
初観測日 | 2025年5月21日[2][3] |
発見日 | 2025年7月1日[3] |
発見者 | ATLAS-CHL[3] |
発見場所 | Río Hurtado ( ![]() |
軌道要素と性質 元期:TDB 2,460,870.5(2025年7月14.0日)[2] |
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軌道の種類 | 双曲線軌道 |
軌道長半径 (a) | -0.264 au[2][注 1] |
近日点距離 (q) | 1.357 au[2] |
遠日点距離 (Q) | 定義不可[2] |
離心率 (e) | 6.142[2] |
公転周期 (P) | 定義不可[2] |
最大軌道速度 | 68.3 km/s[5][6][注 2] (近日点通過時) |
最小軌道速度 | ≈ 58 km/s[5][6][注 3] (双曲線過剰速度) |
軌道傾斜角 (i) | 175.113°[2] |
近日点引数 (ω) | 128.009°[2] |
昇交点黄経 (Ω) | 322.162°[2] |
平均近点角 (M) | -781.595°[2] |
次回近日点通過 | TDB 2,460,977.976[2] (2025年10月29日) |
最小交差距離 | 0.366 au(地球軌道に対して)[2] |
物理的性質 | |
直径 | < 11.2 km[7][注 4] |
自転周期 | 16.79 ± 0.23 時間[8] |
絶対等級 (H) | 13.7 ± 0.2[7] |
全光度 (M1) | 12.3 ± 0.7[2] |
色指数 (B-V) | 0.98 ± 0.23[9] |
色指数 (V-R) | 0.71 ± 0.09[9] |
色指数 (R-I) | 0.14 ± 0.10[9] |
年齢 | 70億年?[10] |
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3I/ATLAS または C/2025 N1 (ATLAS) は、2025年7月1日にチリのコキンボ州・Río Hurtadoで観測を行っていた小惑星地球衝突最終警報システム (ATLAS) によって発見された非周期彗星である[2][3]。発見直後は A11pl3Z と呼称されていた[1][11]。3I/ATLAS は、太陽の周囲を軌道離心率が約 6.14 という直線に近い双曲線軌道を描いて移動しており[2]、オウムアムア (1I/ʻOumuamua) とボリソフ彗星 (2I/Borisov) に続いて太陽系外からの飛来が確認された観測史上3例目の恒星間天体として知られている[12][13][14]。2025年11月頃に見かけの明るさが最も明るくなると計算されているが、それでも12等級程度であると予測されており[4][15]、近日点の通過前後でも肉眼で観測することはできないとされている[16]。
観測と命名
3I/ATLAS は、チリのコキンボ州・Río Hurtadoにて観測が行われている小惑星地球衝突最終警報システム (ATLAS) の望遠鏡によって2025年7月1日に発見された[3][12][17]。発見当初の見かけの明るさは約18等級、太陽に対する相対速度は約 61 km/s[18]、太陽からの距離は木星軌道のやや内側である約 4.53 au であり[19]、天の川付近のいて座とへび座の境界付近をゆっくりと移動していた[14]。この新たに発見された天体は、直後に暫定的な仮称として A11pl3Z と呼称され[1]、発見時の観測データは国際天文学連合 (IAU) が運用している小惑星センター (MPC) に提出された[17][20]。これらの観測結果から、当初この天体は地球軌道に接近する可能性のある非常に軌道離心率の高い軌道を描く天体である可能性が示され、小惑星センターは確認待ちの地球近傍天体候補の天体が掲載される地球近傍天体確認ページ (Near Earth Object Confirmation Page, NEOCP) に A11pl3Z を掲載した[17]。
天文学者やアマチュア天文家などによって行われた他の観測施設による追跡観測により、この天体は地球に接近するような軌道ではなく、星間空間から飛来してきて二度と太陽へ接近しない双曲線軌道となっている可能性があることが明らかになり始めた[13][17][21]。そして正式な発見の前に行われていた観測データも用いてこの天体が実際に星間空間から飛来してきた恒星間天体であることが確認されるようになった。これらの観測記録には、同年6月14日から6月21日にかけて行われた Zwicky Transient Facility による観測や[3][22]、6月25日から6月29日にかけて行われた ATLAS による観測の結果が含まれている[14][13][17]。アマチュア天文家の Sam Deen は、同年6月5日から25日までの ATLAS による正式な発見前に行われた観測の結果にも注目し、A11pl3Z が早期に発見されなかったのは、銀河系中心部の恒星が高密度で分布している領域の前を通過していたためと推測している[15]。
初期観測では、A11pl3Z が小惑星なのか彗星なのかは分かっていなかった[14][21][22]。2025年7月2日にチリの Deep Random Survey やアメリカ・アリゾナ州のローウェル・ディスカバリー望遠鏡、ハワイ島・マウナケア山のカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡による観測では、A11pl3Z の周囲にコマと見かけの長さが約3秒角の短い尾が観測され、A11pl3Z で彗星活動がみられることが示唆された[3][15]。一方で、アラン・ヘールを含む多くの天文学者は、A11pl3Z に彗星のような特徴は見られないと報告している[15]。2025年7月2日21時31分(協定世界時、日本標準時では翌3日6時31分)、小惑星センターは小惑星電子回報 (Minor Planet Electronic Circular) にて A11pl3Z の発見を正式に発表し、最初に発見を報告した「ATLAS」とこれまでに確認された3番目の恒星間天体であることを示す符号「3I」を付した 3I/ATLAS という名称を正式に命名した[3][15]。また、同時に非周期彗星としての符号である C/2025 N1 (ATLAS) という名称も付与された[3]。3I/ATLAS の発見・命名が正式に発表されるまで、小惑星センターには31ヵ所の異なる観測施設で記録された122の観測データが収集された[3]。
さらに同年7月6日には、Zwicky Transient Facility による5月22日から6月21日までの期間に行われた10回分の観測データ内からも 3I/ATLAS が検出されたことが小惑星電子回報にて公表されている[23]。7月18日にはそれよりもさらに早い5月21日以降にイスラエルのワイツマン天文観測所 (Weizmann Astrophysical Observatory) によって観測されていた記録が公表された[24]。
2025年6月にファーストライトが公開されたばかりであるヴェラ・C・ルービン天文台も、同年6月21日から7月3日までの検証観測中において 3I/ATLAS を偶然観測することに成功していた[7]。これらの観測により、中心部のコマがわずかに大きくなっていることが示され、想定される核の直径に制約を課すことが出来た。ヴェラ・C・ルービン天文台による検証観測がさらに2週間早く始まっていれば、ATLAS よりも先に 3I/ATLAS を発見できていた可能性がある[7]。
7月21日にはハッブル宇宙望遠鏡による 3I/ATLAS の観測が行われた[25]。また、同年11月にはハッブル宇宙望遠鏡は 3I/ATLAS の紫外線分光観測を行って核から放出されているガスの組成とそれに含まれている硫黄と酸素の比率を調査する予定となっており[26][27]、それ以降も太陽から離れていく 3I/ATLAS の様子を観測する見通しである[28]。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も近日点通過前の同年8月と通過後の12月に 3I/ATLAS を観測する予定となっている[26][29]。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による赤外線分光観測では、3I/ATLAS に含まれている水や一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニアなどの特定の化合物が含まれているかを検出することができる[26]。
軌道

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