2010年代の再編成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 06:35 UTC 版)
「ハラフシカブトガニ類」の記事における「2010年代の再編成」の解説
Dunlop & Selden (1997) が列挙した上述の形質の有効性は Lamsdell (2011) を初めとして疑問視され、ハラフシカブトガニ類は必ずしも他のカブトガニ類に類縁とは限らない可能性が浮かび上がる。Lamsdell (2013) によって行われる再検討では、上述の形質とその他の共通点は全てが次の通りカブトガニ類以外の分類群(主にウミサソリ類とカスマタスピス類、および基盤的な真鋏角類オファコルス)にも見られ、カブトガニ類の共有派生形質にはなれず、むしろ真鋏角類か節足動物全般の祖先形質である可能性が高いことを指摘していた。 背甲の側部隆起線はウミサソリ類とカスマタスピス類の palpebral lobes(複眼の内側を走る隆起線)と同じ位置にあり、相同性が示唆される。 背甲の心葉はウミサソリ類とカスマタスピス類を通じて広く見られる。 軸部と肋部に区別された背板は節足動物として一般的であり、オファコルス、カスマタスピスなどの化石鋏角類や、鋏角類ですらない三葉虫などにも見られる。 退化的な後体第1節はウミサソリ類とカスマタスピス類全般に見られ、前者は背板が見当たらないほど退化し、後者は「microtergite」として表れる。 9-11節の後体はハラフシカブトガニ類とカブトガニ類に共通しているが、基盤的な真鋏角類オファコルスとダイバステリウムもこのような後体をもつ。 .mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}} 基盤的な真鋏角類オファコルス(1枚目)とダイバステリウム(2枚目)。 ウミサソリ類 カスマタスピス類(左下:カスマタスピス) さらに、ハラフシカブトガニ類の系統位置は今までの見解よりも雑多で、種によっては基盤的な真鋏角類もしくは Dekatriata(カスマタスピス類・ウミサソリ類・クモガタ類を含んだ系統群)に近縁という、真鋏角類の系統内で様々な位置から分岐することを示唆する次の形質も取り上げられる。 ウェインベルギナ:本属の脚に関しては「6対目の脚をもつ」と「発達した外肢をもつ」という2説はあるが、いずれも真鋏角類の祖先形質とされ、どれが正解だとしても本属は基盤的な真鋏角類であることを示唆する(基盤的な真鋏角類オファコルスとダイバステリウムの脚は発達した外肢をもち、真鋏角類の姉妹群ウミグモ類は第7体節由来の脚をもつ)。 ウェインベルギナ・ヴェヌストゥルス・Camanchia など:これらの属の背甲の外縁は基盤的な真鋏角類や他の多くの節足動物のように隆起はせず、肋部は前後である程度積み重なるのに対して、残りのハラフシカブトガニ類は他のカブトガニ類やウミサソリ類のように背甲の外縁に隆起が走り、肋部は前後で重ねていない。 リムロイデス・Bunodes・Cyamocephalus・Pseudoniscus:これらの属は Dekatriata 類のように、後体は第3-4節で最も幅広く、リムロイデスを除いて背板は往々にして軸部を走るこぶの行列はなく、肋部も退化的である。 鋏角類 ウミグモ類 真鋏角類 †オファコルス †ダイバステリウム Prosomapoda †ウェインベルギナ* †Anderella* †ヴェヌストゥルス* †Camanchia* †Legrandella* 狭義のカブトガニ類 †Kasibelinurus †Pickettia †ルナタスピス カブトガニ亜目 Planaterga †Willwerathia* Pseudoniscidae †Cyamocephalus* †Pseudoniscus* †Bembicosoma* Bunodidae †Pasternakevia* †リムロイデス* †Bunodes* Dekatriata †Winneshiekia †Houia †カスマタスピス類 †ウミサソリ類 クモガタ類 Bicknell et al. (2019) を基に、ハラフシカブトガニ類(*)を中心にした広義のカブトガニ類(青枠)の系統関係。 再検討がなされたこれらの形質を基にハラフシカブトガニ類と他の真鋏角類の系統関係を解析したところ、ウェインベルギナ・ヴェヌストゥルス・Camanchia などは他のカブトガニ類とDekatriata よりも早期に分岐し、リムロイデス・Bunodes・Cyamocephalus・Pseudoniscus などは Dekatriata と単系統群(Planaterga)になるという、ハラフシカブトガニ類を大きく分ける解析結果を与えられた。これによると、ハラフシカブトガニ類をも含んだ従来のカブトガニ類、いわゆる「広義のカブトガニ類(Xiphosura sensu lato)」はオファコルスなど以外の真鋏角類(Prosomapoda)から Dekatriata を除いた側系統群になるため、本群を除いた単系統群のカブトガニ類、いわゆる「狭義のカブトガニ類(Xiphosura sensu stricto)」は、 Lamsdell (2013) によって次の形質で再定義された。 第7体節は退化的でその付属肢は唇様肢である。 後体は前端で最も幅広い。 心葉は背甲の後半を超えるほど前へ伸びる。 側部隆起線は前方で会合してM字状となる。 それ以降本群に注目した2010年代の多くの文献もこの見解を踏襲し、系統解析にほぼ一致な結果を出した。2015年に記載され、カブトガニ類と Dekatriata らしき特徴を兼ね備えた化石真鋏角類 Winneshiekia と Houia も、広義のカブトガニ類とハラフシカブトガニ類のこのような非単系統性をさらに支持する証拠と見なされる。 Houia yueya の腹面構造。カブトガニ類のような背甲(Ca)をもつ同時にウミサソリ類などを思わせる下層板(Mt)と肋部のない後体(Ops)がある。
※この「2010年代の再編成」の解説は、「ハラフシカブトガニ類」の解説の一部です。
「2010年代の再編成」を含む「ハラフシカブトガニ類」の記事については、「ハラフシカブトガニ類」の概要を参照ください。
- 2010年代の再編成のページへのリンク