16ビットCPUを採用した初の家庭用コンピュータ
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「TI-99/4A」の記事における「16ビットCPUを採用した初の家庭用コンピュータ」の解説
TI-99/4シリーズは初の16ビット・パーソナルコンピュータである。TI-99/4AのCPUは16ビットのTMS9900で、3.0MHzで動作する。TMS9900はTIのミニコンピュータ TI-990(英語版) に基づいた設計である。命令セットは豊富で、個々の命令は高機能でサイズも様々で、アドレッシングモードも豊富である。TMS9900にはIBM System/370にも見られたEXECUTE命令があり、命令のオペランドで指定されるアドレスにある命令を実行できる。 基本的にはCISCだが、RISCを思わせる特徴として「ワークスペース」の概念がある。チップ上には、プログラムカウンタ、ステータスレジスタ、ワークスペースポインタの3つのレジスタしかなく、全ての他のレジスタはワークスペースポインタが指すRAM上に置かれている。ワークスペースには16本のレジスタがあり、コンテキストスイッチ時にはワークスペースポインタを書き換えるだけでよい。TI-99/4 (A)がCPU RAMとして持つのはたった256バイトの「スクラッチパッド」メモリであり、これがワークスペースとして使われる。16ビットバスに直接接続されていてウェイトなしでアクセスでき、システム内の他のメモリより高速である。 CPUは16ビットだが、16ビットバス上に直接接続されているのはシステムROMとスクラッチパッドRAMだけである。他のメモリと周辺機器は16ビット→8ビットのマルチプレクサを介してCPUに接続するので、あらゆるアクセスに2サイクルかかり、さらに追加の4サイクルのウェイト状態が必要になっている。システムROMにピギーバック方式でSRAMを追加することでメモリを拡張するという改造がよく行われた。これにより多くのアプリケーションで30%ほど性能が向上したという。 当時の多くのマシンと同様、TI-99シリーズもVDP(ビデオ・ディスプレイ・プロセッサ)に画面表示を任せていた。TI-99/4のVDPはTMS9918である。これにはビットマップモードがなく、TI-99/4Aで追加された。アメリカ合衆国内のTI-99/4AのVDPはTMS9918Aであり、MSXでも使われた。欧州向けのPAL仕様のマシンではTMS9929Aが使われている。 これらVDPのユニークな機能として、他のビデオ信号上にグラフィックスをスーパーインポーズする機能をハードウェアでサポートしていた。VDPシステムへのアクセスは常に8ビット単位である。このため性能が制限される反面、VDPのアップグレードも容易になった。ヤマハがTMS9918と上位互換のV9938をリリースしており、これを利用して80桁表示を行う拡張カードがMechatronicsなどからリリースされている。これを使うと512×424ピクセルで16色か、256×424ピクセルで256色のグラフィック表示が可能となる。このカードは VDP RAM を16Kバイトから最大192Kバイトに拡張するが、V9938向けに書かれたソフトウェアでないとその利点を生かせない。 TI-99/4シリーズの独特なアーキテクチャは、このマシン向けに開発されていた8ビットプロセッサ9985の失敗に起因するとされている。9985開発が中止されたとき、16ビットの9900を代替として採用したため、既存のシステム設計に9900に適合させるのに苦労し、9900の良さを生かすような変更がなされなかった。
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