「美」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 00:22 UTC 版)
本篇では、「美」という概念の明確化を巡って、高名なソフィストであるヒッピアスを相手に、ソクラテスによる執拗な追及・問答が繰り広げられる。 作中、「美」の定義として、 「美しい乙女」 (← ソクラテス「個別具体的過ぎる、美しいものは他にもある」) 「黄金」 (← ソクラテス「美しいものは他にもある」) 「裕福で、健康で、ギリシア人に尊敬され、老齢まで生き、自分の両親を立派に弔い、自分の子供たちによって立派に埋葬されること」 (← ソクラテス「神々は当てはまらない」」) 「美しく見せるもの」 (← ソクラテス「対象自体が美しくなっているわけではない」) 「有用である限りのもの」 (← ソクラテス「悪事に役立つという意味での「有用なもの」もある」)「善いことをする能力や、そのことにかけての有用なもの」「有益なもの」「善の原因」 (← ソクラテス「「美」と「善」が別ものになってしまう」) 「聴覚・視覚を通じての快」 (← ソクラテス「全ての「快」に当てはまるか、「聴覚・視覚それぞれの快」を除く「聴覚・視覚両方の快」のみかのいずれか、どちろにしろ規定は矛盾する」) 「有益な快」 (← ソクラテス「既に先の議論において退けられている」) 等が提示されるが、ソクラテスの執拗な追及によって、ことごとく提示された諸定義の欠陥が顕にされ、堂々巡り・行き詰まり(アポリア)に陥ってしまう。 本篇では、途中で「美を美であらしめるもの」について言及されていながら、それをうまく探求・特定することができないまま、「有用性」や「聴覚・視覚の快」などが否定される形で、議論が行き詰まりを迎えてしまう。 プラトンはこの「美」の問題を、後に中期対話篇である『饗宴』や『パイドロス』において、イデアの一種である「美のイデア」へと還元し、 「我々人間の「不滅の魂」の中に眠っている、「諸々のイデア」の記憶の内、視覚という最も鮮やかな感覚と関係しているが故に、最も想起する力が強いのが「美のイデア」の記憶であり、それに対する欲求であるエロースの助力を得ながら、低俗な「肉体に対する愛(肉欲)」から「学知への愛(愛知)」へと、認識を抽象化・高度化させていった果てに、そこ(「美のイデア(美そのもの)」)へと実際に到達し、直接的に観得することができる」 といった話として、すなわち「美」こそが、 「人間がイデアへと到達するための、最も有力なルートの1つである」 といった話として、処理・合理化・昇華している。
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