RNA分解酵素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 15:09 UTC 版)
RNAを切断する酵素にはRNAのみを特異的に分解するリボヌクレアーゼとDNAとRNAの両方を分解できるヌクレアーゼがある。哺乳類の血清中では核酸を3'末端から分解する3'エキソヌクレアーゼの活性が強く、さらにリボヌクレアーゼも存在するため、体内に入ったRNAは迅速に分解される。特に一本鎖RNAは分解されやすく、一本鎖RNAにウシやヒトの血清を加えると30秒程度でほとんど分解されてしまう。そのため、生体内のヌクレアーゼに耐性を示し、生体内で効果的に作用する人工核酸がアンチセンス法やRNAi法の開発に必須である。 リボヌクレアーゼ リボヌクレアーゼとして古くからその反応機構が研究されているものに、リボヌクレアーゼA(RNase A)がある。RNase AはRNA中のホスホジエステル結合を3'-モノリン酸と5'-水酸基を切断する酵素である。生体内ではRNase Aの酵素反応機構と全く異なるメカニズムでRNAを分解するリボヌクレアーゼも数多く存在する。核酸医薬の分野でよく知られてるリボヌクレアーゼはRNase HとRNase Ⅲである。RNase HはDNAとヘテロ二重鎖を形成しているRNAを3'-水酸基と5'-リン酸体へと切断する酵素である。またRNase ⅢはRNA-RNA二重鎖の両側の鎖を切断し、同じく3'-水酸基と5'-リン酸体へと分解するが、その際に3'側にヌクレオチド残基が2つぶら下がったオーバーハング構造を形成するのが特徴である。RNase HはアンチセンスDNAの生理活性発現メカニズムに関与する。RNase Ⅲ型の切断をするDicerは外来の二本鎖RNAを切断しRNAiを引き起こす短い二本鎖RNA(siRNA)を生成するのに必須の酵素である。 3'-エキソヌクレアーゼ 3'-エキソヌクレアーゼ活性をもつ酵素として実験室でよく用いられる酵素にヘビ毒ホスホジエステラーゼ(snake venom phosphodiesterase、SVPD)がある。この酵素はDNAやRNAのリン酸ジエステル結合を3'末端側から加水分解し、3'-水酸基と5'-リン酸に分解する。SVPDは新しくデザインしたアンチセンス核酸や生体内の3'-エキソヌクレアーゼに対する安定性の試験管内で予測するための便利なツールとして利用される。SVPDなどDNA、RNAの両方を分解できるヌクレアーゼは、リボヌクレアーゼとは異なり、RNAの2'-水酸基を直接には認識していないと予想される。しかし、実際にはRNAの2'位を化学修飾することで、リン酸ジエステルの周囲の立体的環境や静電的環境を変化させ、間接的にヌクレアーゼ耐性を向上させることができる。そのような2'位の修飾基としてはメチル基、2-メトキシエチル(MOE)基、3-アミノプロピル(AP)基、2-(N,N-ジメチルアミノオキシ)エチル(DMAOE)基など多数報告がある。
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