齢構成、死亡率、生命表、生存曲線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 23:05 UTC 版)
「個体群生態学」の記事における「齢構成、死亡率、生命表、生存曲線」の解説
生物が死ぬまでの時間を寿命と言うが、この言葉の意味にもいろいろある。たとえば、アユは年魚といわれるように、春に川を上り、秋には川を下って産卵し、死ぬ。ところが、水槽内で大事に飼えば、2年以上育てることができる。このように、うまく行けばここまでは生きる能力がある、という意味での寿命を、生理的寿命という。これに対して、その生物が暮らしている環境で実現される寿命を生態的寿命という。アユの生態的寿命は1年、というわけである。 平均寿命というのもあるが、これは単独ではあまり意味をなさない。極端な例だが、生まれてすぐに半分が死に、残り半分が100年生きる動物も、全部が50年生きる動物も、その平均寿命は50年である。つまり、どの時期にどれだけ死ぬかの方が大事な特徴になる。ヒトのように、寿命が長い生物では、個体群を構成する個体の年齢構成を見ることで、そのような特徴を知ることもできる。しかし、寿命が短い動物では、この方法は使えない。個体群内の、ある時期に生まれた世代の個体をすべて把握し、それを追跡調査すると、どの時期にどれだけの個体がどのような原因で死ぬかを知ることができる。これを表にまとめたものを生命表という。 様々な生物の間で、このような死に方の比較をするために、縦軸に生存個体数(対数で)、横軸に時間を取ったグラフが考えられた。こうすれば、出発時点で100%だった個体数が、時間を追ってどのように減ってゆくかを曲線で示すことができる。この曲線を生存曲線という。生存曲線が単調な右下がりになるのは、生涯を通じて死亡率があまり変わらない生物の場合である。ウニのように、ごく小さい卵を多量に作るものでは、卵の時に多量に死んでしまうので、曲線は最初に激しく降下し、その後はなだらかな下り坂となる。ほ乳類などでは、逆にはじめの勾配は比較的緩やかで、終盤に急降下する。 このグラフから、小さい卵を多量に産むのと、大きい卵を少量産むのと、どちらが得か、という議論がある。前者では、卵は小さいから栄養の貯蓄も多くなく、必然的に子供の生存能力は弱く、その代わりに数はたくさん作れるから、当たれば大きい、この戦略を小卵多産戦略という。他方、大きい卵を産めば、数は作れない代わりに、個々の卵の生存は確保しやすい。これを大卵少産戦略という。大卵少産戦略では、卵1つの価値が相対的に高く、失った場合、損失が取り返せないほどになることもあり、親による子の保護が発達する傾向があるという。
※この「齢構成、死亡率、生命表、生存曲線」の解説は、「個体群生態学」の解説の一部です。
「齢構成、死亡率、生命表、生存曲線」を含む「個体群生態学」の記事については、「個体群生態学」の概要を参照ください。
- 齢構成、死亡率、生命表、生存曲線のページへのリンク