馬追丘陵とは? わかりやすく解説

馬追丘陵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/04 17:20 UTC 版)

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馬追丘陵の位置

馬追丘陵(まおいきゅうりょう)は、北海道石狩平野南東に位置する最高標高287.1m[1]丘陵である[2][3]。「まおい」という名称は、アイヌ語で「ハマナスの実があるところ」を意味する「マウ・オ・イ」に由来する[4]

概要

馬追丘陵は、最北端は空知管内夕張郡長沼町の東部から、最南端は胆振管内勇払郡厚真町の北西端にまで至っている。全長は約50kmで幅は5~8kmであり、北高南低のなだらかな背斜丘陵を形成している更新世段丘である[2][3][5]。最高点の標高は287.1mである[1]。JR室蘭線以南の最南部を早来丘陵と言う事もある[2][3]。空知方面ではきらら397等のの稲作やジャガイモなどの畑作リンゴ等の果樹栽培を、胆振方面では酪農が行われている。北部の山麓には馬追温泉(単純硫黄泉,16℃)が、南部の山麓に鶴の湯温泉(含硫黄 - ナトリウム - 塩化物・炭酸水素塩泉,14.8°C)が存在している[2]。丘陵は南部を中心に勇払平野に繋がる、遠浅川やフモンケ川などの形作る多くの谷底平野が入り込んでいる[5]

地質的特徴

北海道道央南部地域は、千島弧と東北日本弧の衝突によって形成された日高衝突帯の褶曲-衝上断層帯の西縁部に位置している。この衝突に伴い、日高山脈の西側には数多くの褶曲と衝上断層が形成され、その最西端に地形的に表れているのが馬追丘陵である[6]
馬追丘陵の東側においては、上から汐見層、下安平層、美里層、ニタッポロ層が順に重なっている。これらの層は、支笏カルデラ樽前山風不死岳恵庭岳等からの噴出物で出来た地層である。この内、汐見層とは角閃石紫蘇輝石火山灰層がピート層・粘土層に挟まっていう地層である。また、下安平層と美里層は白色軽石有色鉱物層、砂礫層、シルト層中に点在する地層であり、その含有率のみに差がある。最下層のニタッポロ層は青灰色粘土層が紫蘇輝石軽石層を挟んだものである[7]
馬追丘陵北部にあっては、道央石狩平野南部地域の地下に厚く発達している南長沼層が露出しており、地質学関係者の間ではその模式地として知られている。南長沼層とは、浅海成や非海成の上部漸新統であり、道央地方における後期新生代堆積盆の発達により形成された局地的な堆積盆の埋積物が生み出した地層のこととされている。南長沼層が露出している、長沼町内の馬追丘陵北部の地点の泥質岩試料からは有孔虫珪藻渦鞭毛藻花粉等の微化石が数多く出土している。このような形で様々な種類の微化石を大量に産出するような浅海成相を示す上部漸新統が北日本とその周辺で分布している事は大変珍しく、南長沼層の微化石相は、北西太平洋地域の中緯度域での古第三紀末の浅海の古生物相の一端を示す例として貴重であるとされている[8]

早来丘陵

前述のとおり、馬追丘陵南部、安平町厚真町にまたがるエリアは早来丘陵と呼ばれており、その長さは南北約10kmである[5]。この丘陵は北部の馬追丘陵の中軸となる山域とは、安平町の市街地付近に存在する安平川周辺の氾濫平野に分断されており、この部分をJR室蘭線国道234号線は通過している[5]。また、安平川の周辺やその南側の丘陵地には、小規模な段丘が多く存在している[5]

馬追丘陵の山

自然

野鳥や、昆虫樹木や野花の種類が大変豊富で、馬追丘陵全体では、例えば、25種類の、202種類の野鳥の生息が確認されている。長官山に限っていえば、針葉樹トドマツ広葉樹ミズナラホオノキキタコブシオオカメノキ等が群生しているが、このうち、冬季でも葉をつけているのは、トドマツのみである[9]。そして、これらの樹木は、その種類を問わず、の重みの影響などで根上り現象が起きていることが多い[9]。この美しい自然は遊歩道が整備されているため、簡単に観察し愛でることができるが[10]ヒグマの確認例も僅かながらあり、登山に際しては注意が必要である[9]

観光、登山

観光

札幌を中心とした大都市圏の郊外にあたり、見晴らしの良い高台と豊かな森林など自然に恵まれた馬追丘陵北部は、立地特性を生かした長沼町、由仁町の観光拠点となっている。
長沼町側には、スキー場[11](夏季はキャンプ場[12]としても運用)、オートキャンプ場[13]、温泉施設[14]、観光牧場[15]などが整備されており、また農家レストランが近隣に多数存在する。
由仁町側にも、温泉施設[16]、フラワーガーデン[17]、展望公園[18]、オートキャンプ場[19]、ゴルフ場[20]などがある。

登山

馬追丘陵の北部、馬追山ならびに長官山を有するエリアは、国有林内に設置された林道の一部区間ならびに登山道について、遊歩道としての管理を長沼町が委託されている[21]
遊歩道には、長官山北麓の北長沼スキー場の脇からマオイ文学台を経て長官山に至るコース(通称:スキー場コース)、長官山西麓の伏古斎苑、伏古墓地の奥から長官山山頂に至るコース(通称:火葬場コース)、長官山南麓の旧馬追温泉脇から沢沿いを経て尾根から長官山山頂に至るコース(通称:温泉コース)、旧馬追温泉の道道札夕線を挟んだ南側にある林道脇から瀞台および馬追山山頂に至るコース、瀞台西麓にある湧水の水汲み場、「馬追の名水」から瀞台および馬追山山頂に至るコース(通称:名水コース、瀞台にまっすぐに向かうコースと馬追山山頂に至る通称:大回りコースに中途で分岐する)、馬追山南麓の道道夕張長沼線沿い、長沼町と由仁町古山地区の町境付近から瀞台および馬追山山頂に至るコース(通称:古山口コース)がある。
各コースは地元山岳会有志による笹刈り、倒木処理、標識設置等の整備管理がなされており、老若男女を問わず安全かつ気軽に登山を楽しめるコースとして夏山、冬山を問わず親しまれている。小ピークを多数有するためにアップダウンに富み、なおかつ整備が行き届いたコースであることから、トレイルランニングの練習コースとしても紹介される場合があり[22]、一般登山者は注意が必要である。

脚注

  1. ^ a b 『地理院地図』(国土交通省)における北緯42度59分21.94秒、東経141度44分48.87秒の地点でのDEM5C測定による表示値
  2. ^ a b c d 世界大百科事典(電子辞書版)』 日立ソリューションズ制作 1998年10月編集収録
  3. ^ a b c 『日本の地名がわかる事典』講談社
  4. ^ 山田秀三著『北海道の地名』北海道新聞社1984年
  5. ^ a b c d e {{{1}}} (PDF)  2013年2月7日閲覧
  6. ^ 論文『北海道 馬追丘陵における褶曲・衝上断層帯の地殻構造』河村知徳(石油資源開発株式会社)(2013 日本地質学会学術大会講演要旨)
  7. ^ 論文『中央北海道南部・馬追丘陵地域、上部漸新統 南長沼層模式地(浅海~河川成)における微化石相と堆積相』栗田裕司・一ノ関鉄郎・小布施明子・三輪美智子・秋葉文雄(石油資源開発株式会社 技術研究所)
  8. ^ 論文『馬追丘陵に分布する 支笏 プレ支笏 火山灰』 会田信行 
  9. ^ a b c 冬に耐える植物 (著者:望田武司 配信元:NPO法人ネットジャーナリスト協会 配信日:2009年2月24日 閲覧日:2013年2月7日閲覧)
  10. ^ 馬追丘陵の環境と保全について 長沼町議会一般質問 町議会だより 2013年2月7日閲覧
  11. ^ 北長沼スキー場 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  12. ^ キャンプ場検索・予約サイト「なっぷ」紹介ページ 2022年12月1日閲覧
  13. ^ マオイオートランド 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  14. ^ ながぬま温泉 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  15. ^ ハイジ牧場 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  16. ^ ユンニの湯 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  17. ^ ゆにガーデン 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  18. ^ 由仁町ホームページ 伏見台(北海道百景~伏見台公園~) 2022年12月1日閲覧
  19. ^ 古山貯水池自然公園オートキャンプ場 公式ホームページ 2022年12月1日閲覧
  20. ^ 札幌ゴルフクラブ由仁コースホームページ 2022年12月1日閲覧
  21. ^ 長沼町ホームページ 馬追自然の森遊歩道 2022年12月1日閲覧
  22. ^ RUY UEDA official site 2022年12月1日閲覧

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