雑誌連載版と単行本版との差異
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「人間ども集まれ!」の記事における「雑誌連載版と単行本版との差異」の解説
単行本では上記の場面で物語が終わっているが、連載時にはこの後、次のような物語が続いていた。 未来の前に、整形外科医の八崎教授によって起性手術を受け、女性として生まれ変わった元無性人間の九九九五四五二号が現れる。起性手術によって男性になった未来は、九九九五四五二号と結婚し、太平と和解した。そして、太平の命令によって去勢手術は中止され、無性人間たちは手術によって有性に生まれ変わり、人間は滅亡をまぬがれたのだった。 単行本化に際して連載最後の約2回半分と、それ以外で八崎教授の登場するシーンなどがカットされ、全体にわたって大幅な修正が施された。結末変更の理由について、手塚治虫自身は、『手塚治虫漫画全集』版の「あとがき」で、「このようなつきはなすような結末にしたのは、カレル・チャペックの「山椒魚戦争」のラストに感銘をうけた影響があると思っています」「ぼくはこういう終わり方のほうがすきです」と記している。また、手塚プロダクション資料室長であった森晴路は、「のちに聞いたところによると、「結局ハッピーエンドですか」という担当編集者の感想に手塚治虫が反発して、アンハッピーエンドになったという」と記している。 漫画評論家の村上知彦は、連載中の1967年12月にクリスチャン・バーナードによる世界初の心臓移植手術が行われ、臓器移植に世界的な関心が集まったことが、起性手術という形でのハッピーエンドにつながったが、連載終了後に起こった和田心臓移植事件(1968年8月 - 10月)などを経て、「生命を手術で操作する恐ろしさに無感覚になってゆく人間への疑問」が生じ、そのことが結末の変更につながったのではないか、と指摘している。いっぽう、漫画家のみなもと太郎は、連載時には「SF慣れしていない当時の読者には、未来世界がワカラナクなってしまう物語はついてこれない、という判断が働いた」が、それでは「「夢オチ」と結局同じ水準になるので、後世に残す単行本版は、人類の敗北のまま終らせたのかな」と推測している。
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