雌雄同体と雌雄異体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/18 07:50 UTC 版)
雌雄同体生物のうち、同時に雌雄の配偶子を作るものを同時的雌雄同体と呼び、性転換を行う生物を隣接的雌雄同体(異時的雌雄同体)と呼び区別する。隣接的雌雄同体生物は生殖に携わるときには雌雄別の行動をとるので、ここでは同時的雌雄同体と雌雄異体(隣接的雌雄同体を含む)の関係について述べる。 結論を端的に述べれば、雌雄同体性と雌雄異体性の進化についての仮説は、適応度の数理モデルを用いた検証はほとんどなされていない。しかしながら、一般的には以下のように理解されている。 移動能力が低い生物や生息密度が低い生物では、ある個体が別の個体と生殖可能な距離に位置する機会が低くなる。そういう生物で2個体が生殖可能な距離にいたときに同じ性別に属すると、希少な生殖機会が無駄になってしまう。したがって、そのような生物、被子植物の大部分や深海魚の一部・寄生生物の一部・カタツムリなどは同時的雌雄同体となっている。また、個体密度が高いときは雌雄異体であり、個体密度が低くなると同時的雌雄同体になる生物として、北アフリカからヨーロッパに生息するカブトエビの例が知られている。 一方、移動性が高く感覚器官が発達した動物では、両性の生殖器官を作るコストと繁殖相手を探すコストの比較で前者がより負担になることから、同時的雌雄同体ではなく雌雄異体となる。 植物の雌雄同体(雌雄同株)と雌雄異体(雌雄異株)についての議論はより複雑になる。被子植物の多くを占める動物媒花の多くは雌雄同株である。動物の訪花の際に受粉が効率的に行われるためには、雌雄異株または単性花雌雄同株よりも、雌雄双方の機能を持つ両性花を着ける両性花雌雄同株の方が有利に働く。この場合、自家受粉・自家受精(自殖)による近交弱勢が起きる不利益もあるので、雌蕊と雄蕊の異熟・異形花柱花・自家不和合性など自殖を防ぐ機構を発達させた植物もある。また、動物媒である単性花雌雄同株では、効率的に他家受粉を行えるように雄花と雌花が配置されている例もある。植物の雌雄異体性については、大量の花粉を作る雄株の適応度が高くなる風媒植物や、動物が好んで食べる果実などへの物質投資を多くすることで動物をひきつけると雌株の適応度が高くなる動物散布種子を持つ植物で、発達すると考えられている。
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