隕石衝突時の状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/08/18 04:06 UTC 版)
宇宙から落下してくる隕石は、大気圏で表面温度が1万度近くまで熱せられる。高速の隕石は高度11000mより下の対流圏を1秒以下で通り過ぎるので、非常に大きな衝撃波を伴う。地上に衝突した直径10kmの隕石は地殻に数十kmもぐりこみながら運動エネルギーを解放して爆発する。 隕石爆発のエネルギーで衝突地点周辺の石灰岩を含む地殻が蒸発や飛散によって消失し、深さ40km、半径70-80kmのおわん型のクレーター(トランジェントクレーター)ができる。このときクレーター部分とその周辺の海水も同時に蒸発・飛散して無くなっている。爆発の衝撃による爆風が北アメリカ大陸を襲い、マグニチュード10程度の大地震が起こる。トランジェントクレーターの底には溶解したが蒸発・飛散せずに残った岩石が溜まっており、やがて再凝結する。大きく開いたクレーター中心部は地下深部の高温の岩石が凸状に盛り上がってきて中央部が高くなる。中心部の盛り上がりに対応して地下の岩盤の周辺部は低下し、地表ではトランジェントクレーターのおわん型の壁が崩落して外側に広がってゆく。これらの地殻変動によってトランジェントクレーター周辺の地殻は波うち同心円状の構造が形成され(トランジェントクレーターの形状は消えてしまう)、更に大きなクレーター構造となって残る。 浅海に空いた巨大なクレーターに向かって海水が押し寄せるため、周辺海域では巨大な引き波が起こる。勢いよく押し寄せる海水はクレーターが一杯になっても止まらず、巨大な海水の盛り上がりを作った後、押し波となって周辺へ流れ出し全世界へ広がる。衝突地点に近い北アメリカ沿岸では300mの高さの津波となって押し寄せた。 地面に衝突して爆発した隕石は全量が飛散し、衝突地点の岩石も衝撃のエネルギーで蒸発・溶解・粉砕される。トランジェントクレーターでは、隕石質量の約2倍に相当する岩石が蒸発(ガス化)し、隕石質量の約15倍の融解した岩石と、隕石質量の約300倍に達する粉砕された岩石が飛び散る。蒸発した岩石には石灰岩 (CaCO3) や石膏 (CaSO4) が含まれており、これが大気中で分解して大量の二酸化炭素 (CO2) と二酸化硫黄 (SO2) が発生したと考えられる。融解した岩石は空中で冷えて凝固しガラス状のマイクロテクタイトになる。衝突地点から吹き上がった高温の噴出物は、クレーター周辺に落下して森林に火事を起こさせ、大量の煤を発生させる。衝突地点から放出された大量の塵や大規模火災による煤は空中に舞い上がり、太陽光が地上へ到達するのを妨げた。
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