隕石衝突後の状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/08/18 04:06 UTC 版)
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤は、比較的大きなサイズのものは対流圏(高度約11000mまで)まで上昇し数か月後には地上に落下するが、1000分の1mm以下の小さなサイズのものはその上の成層圏や中間圏まで上昇し、数年から10年間とどまる。これらは太陽光線に対して不透明であり、隕石落下の直後には地上に届く太陽光の量を通常の100万分の一以下に減少させる。この極端な暗闇は対流圏に大量に噴き上げられた煤や塵が地上に落下するまで数か月続くが、その期間気温が著しく低下し、光不足で植物は光合成ができなくなった。北アメリカのK-T境界に相当する地層のハスやスイレンの化石から、隕石は6月頃に落下したこと(ジューン・インパクト)、落下直後には植物が凍結したことが分かった。またK-T境界直後の海洋においても植物プランクトンの光合成が一時停止したことが判明している。 大気中に放出された二酸化硫黄は空中で酸化し硫酸となって酸性雨として地表に落下したり、一部は硫酸エアロゾルとなって空中にとどまった。さらに高温の隕石や飛散物質が空気中の窒素を酸化させて窒素酸化物を生成し酸性雨を更に悪化させたことも想定されている。先に述べた煤や塵と同様に、硫酸エアロゾルも地表に届く太陽光線を減少させる物質であり、これらの微粒子の影響による寒冷化は約10年間続いたと推定される。これらの隕石衝突による地上の暗黒化・寒冷化を「衝突の冬」と呼ぶ。 寒冷化の影響がなくなった後、蒸発した石灰岩から放出された大量の二酸化炭素による温暖化が数十万年続いた可能性が指摘されている。 以上のように巨大隕石の衝突は衝突地点での破滅的な状況のみならず、数ヶ月から数ヶ年におよぶ地球全体における光合成の停止や低温、その後も続いた環境の激変を生起させた結果、多くの生物種が滅びる原因となった。
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